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横浜市立大学ヘルスデータサイエンスでの研究指導

2022年から現在まで、横浜市立大学ヘルスデータサイエンス(HDS)専攻清水研究室の客員講師として研究指導を行っています。

横浜HDSで修士(博士前期)を卒業するとMaster of Health Data Science (MHDS)と呼ばれる資格が授与されます。学位的な立ち位置はMaster of Public Health(MPH)やMaster of Science(MSc)等と同様で、ヘルスデータサイエンスに特化しているという主張になるかと思います。そして現在は博士課程ができました。

私が一緒に研究を行ってきた先生や指導してきた先生の3名が横浜HDSの博士課程後期に進学しています。うち2名は修士M1から見ているので、それなりに長い付き合いになりました。

横浜HDSのいいところも悪いところも少人数制である、という点があります。東大や京大とは結構異なる印象ですね。一方で、先日のアンケートで生徒からの回答にあった「包括的にメンティーを支える制度に乏しい印象」という点は確かにあるかもしれません。ただこれも研究室によりけりで、それは東大でもハーバードでもあまり変わらないかも。

少なくとも僕がお世話になっている清水研究室は人も多く、清水先生の人柄もあって良い雰囲気で学べています。

実際の業務としては、Teamsでの交流並びに月に2回、90分枠で研究指導を行っています。参加当時はコロナ禍だったこともあり基本はオンラインですが、たまに
対面でも話をします。あとは「懇親会(飲み会)やろうぜ」って言う係です。僕は縦横の繋がりが院に入る大きなメリットだと思っているので、できるだけそういう場があった方が良いと考えています。とはいえ懇親会も最近は嫌がる人もいるので結構気を使うのですが。。

研究指導は生徒の発表を聞いて口頭での指導+デザイン・論文指導です。研究計画書作成・論文執筆・研究費申請の赤入れも行なっています。その際はできるだけ「なぜここを修正したか」を伝えるようにします。これらの指導は普通に時間外ですが、教育的責任としてやっています。

あとはいつも背中を蹴…押す係です。
研究のモチベーション維持するのは大変ですからね。

修士2年間で論文出すのは中々難しいですし、出せない人の方が多いです。それは横浜だけじゃなく、東大でも京大でも見ていて同じです。毎年4名ほどの生徒がいて、実質2年間で生徒の筆頭原著論文が4本、レターが1本、民間助成金が通ったのはまあまあ良い結果だったのではないでしょうか。本当はもう少し結果を出したいところでしたが。あと、大学院や研究室あるあるで、一部の書ける人が書いているだけという側面もあります。

各所で臨床研究の支援をしていますが、生成AIのおかげでだいぶ楽になったとはいえ、書けない人は書けません。僕が指導してきた中で予後が良いのは隣に座って指導してきた人か、元々熱意があって根気と体力がある人です。あとはテーマが明確な人。テーマこそ全てなので。

僕のメンターであった長谷川先生が「時間は限られているから、少人数に集中して教えたい」と言っていたのはその通りかもなと。集中して面倒を見てくれるメンターなしに研究はいまだに難しいですから。

ちょっと話変わって、そんな中、SAKANA AIが開発したこのAIシステムが登場し、ついにこの時代が来たかと思いました。

SRは自動化されるしDPCとかのデータ解析はほぼAIに置き換えられる日が来る、すなわちデータと解析フォームのパッケージ化の時代が来るとずっと言っていたのですが、割と早くそうなる気がして楽しみにしています。

で、データも手法もコモディティ化が凄まじく、観察研究で論文を書いても5年前と比べて良い雑誌に通すのが格段に難しくなったと思います。データサイエンスや疫学系の大学院の先生方はデータを扱ってどうするのか、その先の現状と先を見て課題を発見し、どうやって解決するのかがより問われるようになるでしょう。ただデータを分析できる人、のハードルは大きく下がり、そこにはドメイン知識などの付加要素が必要になります。

個人的にはまだ見ぬデータを作り出すのが面白いと思います。それがRCTであれ、新しい医療機器であれ。

自分でテーマを持って活動するというのは案外難しく、実は多くの場合ある程度人に決められる方が楽です。他人にレールを敷いてもらう人生は嫌かもしれませんが、王道であったり、楽であったり。いわば医局みたいなものですね。そうでないと外れた道で花を咲かすor人生の切り売りコンテンツになり、後者の場合はある程度歳を取ってから苦労するように思います。

横浜HDSで教えていても、地に足のついている人ついていない人がいますが、足のついている人は着実だなと思って見ています。これはある意味覚悟が決まっているかどうか、みたいなものかなと。


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