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多様化するハラスメントとその対策方について

はじめに


現代社会において、ハラスメントは深刻な問題として認識されています。ハラスメントとは、言葉や態度、行動によって、相手を傷つけたり、不快にさせたり、精神的に追い詰めたりする行為を指します。

近年では、SNSの普及や職場環境の変化によって、ハラスメントはより複雑化し、見えにくい形で蔓延しています。職場でのパワハラ、セクハラ、ネット上での誹謗中傷、学校におけるいじめなど、その種類は多岐に渡ります。

本記事では、ハラスメントの種類やその背景について詳しく解説し、具体的な対策や対処法を紹介します。ハラスメントの現状を理解し、自分自身を守るための知識を身につけることで、より健康により健全に人生を送ることができるようになるでしょう。

最近のハラスメントの傾向


近年、ハラスメントは従来のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントに加え、その形態がより複雑化し、多様化している傾向が見られます。従来型のハラスメントは、職場における上下関係や性差に基づくものが多かったですが、近年では、SNSやネット上での誹謗中傷、個人の思想や信条、性的指向、ジェンダーアイデンティティ、容姿、出身地、年齢などに対する差別的な言動、さらには、個人のプライベートな情報や画像の無断公開などが問題視されています。

特に、インターネットの普及により、匿名性を盾に、誹謗中傷や嫌がらせが容易に行えるようになり、被害者は精神的な苦痛だけでなく、社会的な信用失墜や経済的な損失を被るケースも増えています。また、職場環境においても、従来型のハラスメントに加え、パワハラやセクハラに加担するような言動や、個人の価値観やライフスタイルを否定するような発言なども、ハラスメントとして認識されるようになってきました。

このようなハラスメントの多様化は、社会全体の意識改革と、個人の主体的な行動が求められる課題となっています。ハラスメントは、決して許されるものではなく、被害者だけでなく、加害者にとっても大きな傷跡を残す可能性があります。誰もが安心して過ごせる社会を実現するためには、ハラスメントの現状を正しく理解し、予防策を講じることが重要です。

ハラスメントの種類と具体例

(これらはあくまでも例であり、ハラスメントは様々な形態で起こりえます)

①パワーハラスメント

職場において上司や同僚が、業務上の地位や権限を利用して、精神的・身体的な苦痛を与える行為を指します。社会人にとって、一番頻度が高く、多岐にわたるのがパワーハラスメントではないかと考えます。

【身体的な攻撃】
業務に関係なく、暴力を振るう行為。
例:
• 部下を殴る、蹴る、突き飛ばす。
• 物を投げつける、机を叩くなど威圧的な行動を取る。

【精神的な攻撃(人格否定・暴言)】
相手の人格を否定したり、精神的な苦痛を与える発言をする。
例:
• 「お前は仕事ができない」「存在価値がない」と繰り返し罵倒する。
• 会議の場で、部下の意見を必要以上に批判し、恥をかかせる。

【過大な要求】
遂行不可能な業務を押し付け、意図的に失敗させるように仕向ける。
例:
• 明らかに一人ではこなせない業務量を与え、残業を強要する。
• 経験やスキルが不足しているのに、指導なしで高度な仕事を任せる。

【過小な要求】
本来の能力や経験に見合わない、簡単すぎる業務しか与えない。
例:
• 重要な仕事を一切任せず、雑務や単純作業ばかりさせる。
• 役職や職務権限を一方的に縮小し、形だけの仕事を与える。

【人間関係の切り離し(孤立させる)】
意図的にコミュニケーションを遮断し、孤立させる。
例:
• 部下にだけ業務連絡をせず、重要な情報を伝えない。
• 「こいつには話しかけるな」と指示を出し、職場内で孤立させる。

【プライベートへの過度な干渉】
業務と関係ないプライベートな領域に過剰に口出しする。
例:
• 休日の予定や恋人の有無を執拗に聞き出す。
• 「結婚しないのか?」「子どもはまだか?」など、プライベートなことをしつこく尋ねる。

【退職強要・キャリア妨害】
不当な理由で退職を迫ったり、キャリアを妨げる行為をする。
例:
• 「辞めたほうがいいんじゃないか?」と繰り返し退職を迫る。
• 昇進や異動の機会を意図的に妨害し、キャリアアップを阻止する。

②セクシュアルハラスメント

同僚が、性的いやがらせをする。

わいせつな言葉や行為で、相手を困らせる。
性的ないやがらせを含むメールやメッセージを送信する。
性的目的で、身体に触れる。

③マタニティハラスメント

妊娠した女性に対して、差別的な言動をする。

妊娠を理由に、仕事を与えなかったり、休ませたりする。
妊娠を理由に、昇進や昇給を妨げる。
妊娠中の体調不良を理由に、冷たくあたる。

④ジェンダーハラスメント

性別を理由に、差別的な言動をする。

女性だから、事務仕事しかできないと決めつける。
男性だから、育児には参加できないと決めつける。
性別の偏見に基づいて、仕事を与えなかったり、昇進させなかったりする。

⑤年齢ハラスメント

年齢を理由に、差別的な言動をする。

若いから経験がないと決めつける。
年だから体力がないと決めつける。
年齢を理由に仕事を与えなかったり、昇進させなかったりする。

⑥外見ハラスメント

外見を理由に、差別的な言動をする。

容姿について、悪口を言う。
服装について、不適切なコメントをする。
外見を理由に、仕事を与えなかったり、昇進させなかったりする。

⑦障害者ハラスメント

障害を理由に、差別的な言動をする。

障害者に対して、憐憫の情を示したり、差別的な言葉を浴びせたりする。
障害を理由に、仕事を与えなかったり、昇進させなかったりする。
障害者に対して、特別な配慮をしない。

⑧民族ハラスメント(部落差別)

民族や出身地を理由に、差別的な言動をする。

出身地や民族について、偏見に基づいた発言をする。
民族を理由に、仕事を与えなかったり、昇進させなかったりする。
民族を理由に、差別的な扱いをする。

⑨宗教ハラスメント

宗教を理由に、差別的な扱いをする。

宗教を理由に、差別的な言動をする。
宗教について、偏見に基づいた発言をする。
宗教を理由に、仕事を与えなかったり、昇進させなかったりする。

⑩サイバーハラスメント

インターネットや携帯電話などを利用して、嫌がらせをする。

誹謗中傷の書き込みをする。
わいせつな画像や動画を送信する。
ストーキング行為を行う。
個人のプライベートな情報や画像の無断公開

⑪カスタマーハラスメント(カスハラ)

顧客が立場を利用して、理不尽な要求や暴言を浴びせる。

店員に対して、必要以上に大声で叱責する。
商品やサービスに問題がないのに、土下座や過剰な謝罪を要求する。
クレーム対応時に、人格を否定するような暴言を吐く。

⑫テクノロジーハラスメント(テクハラ)

ITやテクノロジーに関する知識の格差を利用して、相手を貶めたり、不利益を与えたりする。

ITに詳しくない同僚や部下に対し、わざと専門用語を使って見下す。
リモートワーク中に、相手の通信環境が悪いことを理由に嫌がらせをする(意図的にミュートする、通信エラーを装って会話を避ける)。
技術的な問題を抱えている人に対して、サポートを拒否したり冷たくあたる。

⑬モラルハラスメント(モラハラ)

精神的な嫌がらせや人格否定などを行い、相手に精神的ダメージを与える。

相手を無視し続け、孤立させる。
皮肉や嫌味を繰り返し言い、精神的に追い詰める。
「お前はダメな人間だ」「誰もお前を評価していない」など、人格を否定する発言をする。

ハラスメント対策と予防策

ハラスメントは、職場環境を悪化させ、個人の尊厳を傷つける深刻な問題です。企業と個人がそれぞれ対策を講じることで、より安全で健全な環境を築くことが重要です。

企業側の対策

ハラスメント防止のための明確な規程・研修の導入: 具体的な定義や相談窓口を明記し、全社員への周知徹底を図る。

相談窓口の設置: 従業員が安心して相談できる体制を構築し、専門部署や外部機関との連携を強化する。

ハラスメント防止に関する意識啓蒙: 定期的な研修や社内イベントを通して、ハラスメントの理解を深め、予防意識を高める。

公平公正な調査と対応: 発生したハラスメントに対しては、迅速かつ適切な調査を行い、加害者への厳正な処分と被害者へのサポートを実施する。

個人ができる対策

ハラスメントに関する知識・理解を深める: 自分の言動がハラスメントに該当しないか、常に意識し、周囲への配慮を心がける。

不快な言動は「ハラスメント」だと認識する: 曖昧な状況でも、自分の感覚を大切にし、相手に伝える勇気を持つ。

相談できる相手を見つける: 会社の相談窓口だけでなく、信頼できる友人や家族、専門機関などに相談する。

自分の権利を守る: ハラスメントを受けた場合は、映像や音声で証拠を残し、適切な対応を求める。

企業と個人がそれぞれ責任を果たすことで、ハラスメントのない、誰もが働きやすい環境を実現できるでしょう。

終わりに

ハラスメントは、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、職場や社会全体の健全な関係性を損なう深刻な問題です。近年ではその形態が多様化し、職場だけでなく、SNSや日常生活のあらゆる場面で発生するようになっています。そのため、一人ひとりがハラスメントの実態を正しく理解し、適切に対処することが求められます。

企業はハラスメント防止のための対策を講じ、個人は自らを守る知識を身につけることで、より安全で快適な環境を作ることができます。また、ハラスメントの加害者にならないためにも、日頃の言動に注意を払い、相手の気持ちを尊重する意識を持つことが大切です。誰もが安心して過ごせる社会を実現するために、私たち一人ひとりが意識を高め、行動を起こしていきましょう。

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