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「デザイン議論に4時間」上流工程の経験がもたらした変化

tactoは「日本のデザインを変える」という創業者の考えから設立した、デザインファームです。

今回はデザイナーの2人にインタビュー。

大手企業の案件を中心に、デジタルの枠を超えたあらゆるデザインに上流工程から携われることからtactoへの転職を決めた2人は、「自分を成長させる場としてtactoは最適」と語ります。

「人数少ないからこその手厚さがあり、安心して新しいことに挑戦できる」
「上流から携わるからこそ、以前とは桁違いの情報量でデザインの説得力も上がった」

こう話す2人に、tactoの魅力や、得られる経験など、聞きました。

Kazuya Sakamoto(写真左)
Designer
博報堂アイ・スタジオに新卒入社後、約3年半デザイナーとしてアプリやWEBの情報設計/デザインを担当。2021年11月にtactoへ参画。
Visual Designer / UX Designerとしてデジタル領域のプロジェクトの情報設計からビジュアルデザインまで一貫して担当。Webやアプリのインタラクション設計から事業のコンセプトムービーといったモーションデザイン領域まで幅広く手掛けており、動きを用いたデザインでユーザーにとって本当に使いやすく、良い体験になるものを追求している。 

 

Ayaka Mita (写真右)
Art Director / Designer
博報堂アイ・スタジオに新卒入社後、アートディレクターとしてインターフェースの設計・デザイン、グラフィックデザイン、CI・VIデザインなどを手掛ける。大規模コーポレートサイト、ブランドサイト、キャンペーンサイト、サービス開発など、デジタル起点のブランディング案件を数多く担当。人の心を動かすデザインを目標としている。2022年1月よりtactoに参画。

 

板倉さんと仕事がしたかった

——お二人ともtacto共同創業者の板倉、中島とは前職が一緒でした。tactoに転職したのも板倉、中島がきっかけでしょうか?

坂本:僕の場合は板倉さんがきっかけです。前職が一緒で、直接の上司ではなかったのですが、板倉さんが社内で新しいチームを作る時に呼んでいただいたり、一緒にオンラインゲームをしたりと、仲良くしてもらっていました。

板倉さんが会社を辞めてからも時々メッセージのやり取りをしていて、その中でtactoの仕事の話を聞く機会があって。やっていることが面白そうだったんです。

デジタルメインではあるけれど、案件によっては紙面やプロダクト、パッケージなど、デジタルの枠を超えてあらゆるデザインに携われる。転職は全く考えていなかったけど、そこに惹かれて転職を決めました。

 

——創業間もない会社で、しかも初めての転職。不安も大きかったのでは?

坂本:
不安はありましたが、それに勝るぐらい、板倉さんと仕事がしたかったんです。僕にとって板倉さんは、デザイナーとして特に尊敬できる人でしたから。

——坂本さんから見て、デザイナーとしての板倉さんのすごさはどこにあるのでしょう?

坂本:妥協を一切しないことです。当たり前のことだと思うかもしれませんが、実際に仕事をしていれば「仕方ないよね」で進んでしまうことはあるもの。

そんな時、板倉さんは相手が上司だろうとクライアントだろうと、絶対に戦ってくれる。そういうデザインに対する熱さを感じていました。

——三田さんも前職が同じですが、板倉さんはどんな印象でしたか?


三田:
仕事での絡みはなく、顔見知り程度でしたが、「アメリカから来たすごい人」っていうイメージはありましたね。

板倉さんが前職に転職してきた時、部署に板倉さんのポートフォリオが回ってきたんですけど、それがあまりにかっこよくて。「うわ、すごい人だ!」って社内がざわざわしていました。しかもハット被ってるし(笑)

——tactoで一緒に働くようになって、今の板倉さんの印象はどうですか?

三田:
リーダーシップがあって、仕事がめちゃくちゃ早いです。お茶目で人を笑わせるような、ムードメーカーなところもあります。

あとは、意外に繊細なところもあるかな。虫がすごく苦手で、小さな虫だったとしてもオフィスに出たときに叫んでいたり(笑)

坂本:たしかに繊細さは感じますね。前職ではビシバシ鍛えてくれる先輩だったので、tactoに来て人間らしい側面が見えました(笑)

本質的なデザインをするには、上流を知る必要があるのでは?

——三田さんはどういうきっかけでtactoに転職したんですか?

三田:
中島さんから別の要件でメッセージをもらい、それをきっかけにtactoの話を聞かせてもらいました。

当時は新卒から働き始めて約6年が経っていて、転職を考えていたタイミングだったんです。「より本質的なデザインをつくるには、もっと上流から関わる必要があるのでは」とモヤモヤしていて。

というのも、前職は分業制で、私が関わるのは全体の工程のデザイン部分だけ。アイデア出しや企画に携わることはあっても、リサーチやユーザーインタビューはほぼ経験がなく、ワイヤーフレームを描いたこともほとんどなかったんです。

その点、tactoではユーザーインタビューや調査なども自分たちで行なっていて、大企業の案件の上流工程から携われる。そこに魅力を感じて転職を決めました。

また、私にとっては「誰と働くか」が大事で。前職の人たちのことが好きで、人への不満は一切なかったから、前職でのつながりも大事にしたいと思っていました。だから全く新しい環境に転職するイメージはあまりなかったんです。

そういう意味でも、tactoは最適でした。

 

——三田さんもtactoが2社目で、初めての転職ですよね。不安はなかったですか?

三田:未来がどうなるか想像できないところに飛び込みたいタイプなので、不安はなかったです。それにtactoの案件はビッグクライアントが多いので、その点では前職とそれほど変わりません。

会社規模の小ささについても、私は少数精鋭のコンパクトなチームで働く方が前職からやりやすさを感じていたので、むしろちょうどいいなと思いました。板倉さんと中島さんのことを知っていたからこそ、やりたいことを応援してくれるだろうとも思えましたね。

——中島さんとは前職時代、どういう関係性だったのでしょう?

三田:中島さんがストラテジストとして入っている案件で何回か一緒に仕事をしたことがありました。また一緒に働きたいなという思いはありましたね。

——三田さんから見て、中島さんはどういう印象ですか?

三田:「仕事を楽しくするのがうまい人」です。

自分の興味を掘り下げるのが得意で、それを仕事に昇華することもできる。周りを巻き込みながら、自分の好きなことと仕事をつなげられるところを尊敬しています。

坂本:新しいものへのアンテナの張り方はすごいなと思います。

僕は前職で中島さんとの関わりはなく、tactoで初めて一緒に仕事をしたんですけど、喋りも考え方も感心することばかりで。

人を納得させる力がすごいので、「高い壺とか買わされそう……」と思うこともあります(笑)

「やりたい」に肯定的。伸ばしたいスキルを実戦で磨ける

——他社と比べて、tactoの特徴は何だと思いますか?

三田:新しいことへの挑戦に対して肯定的なところです。しかも丸投げではなく、調整して私が入れそうなところから一緒にやらせてもらえる。

初めてのことは時間もかかるし、リスキーだし、大変だと思うんですよ。それでもどうしたらチャレンジできるかを考えてくれて、スキルアップのために協力してくれる。

安心して挑戦できるし、本当に面倒見がいいなと思います。

坂本:僕も「紙面やプロダクトをやってみたい」と入社前に板倉さんに伝えたところ、たまたまタイミングが良かったというのもありますが、入社していきなり日本酒のブランディングプロジェクトのパッケージデザインに携わらせてもらえました。

北村酒展
"酒蔵で眠る希少な熟成酒を、 アート作品と捉えて販売するオンラインギャラリー" 
細部まで「作品」として妥協しない ボトル&パッケージ 

——入社一発目の仕事が新しいチャレンジってすごいですね。

坂本:慣れていることから徐々にやっていくと思っていたので驚きましたが、板倉さんと一緒に考えながら形にしていったので、安心感もありましたね。

「この印刷会社が良さそうですけど、どうですか?」「いいじゃん」みたいな感じで自由度もあり、印刷会社や紙の業者へ直接足を運び素材を選ぶなど、いきなり新しいことから始まったのはすごい楽しかったです。

三田:アサインも基本的に挙手制です。できるだけそれぞれのやりたい案件を担当できるように調整してくれていますね。


坂本:個人の目標設定も、「どれだけ会社に貢献するか」ではなく、「どういうデザイナーになりたいか」から逆算して、自分の成長に対する目標を立てさせてくれる。

そして、それに合った仕事を任せてもらえます。

例えば、僕はアニメーションのスキルを伸ばすのが目標の一つなのですが、アプリのデザイン制作のプロジェクトで納品後に追加提案の機会をいただき、結果としてアプリのコンセプトムービー制作の受注に至り、制作を任せてもらったことがありました。

そうやって場数を踏ませてもらえるのはうれしいですし、機会を与えてくれることを本当に感謝しています。

おかげで最近ではだいぶ手を早く動かせるようになり、やりたい表現をスムーズに実現できるようにもなってきましたが、それは実践で経験を積ませてくれているからこそだと思います。

実は、転職する前は人数の少なさが一番不安で。人が少ない分、デザイン以外の仕事やあまり乗り気になれない案件もやらざるを得ないのではと思っていたのですが、そこは一切気にしなくてよかったなと思っています。

むしろ人数少ないからこその手厚さがあり、そっちのメリットの方が大きいですね。自分を成長させる場として、tactoは最適だと思います。

三田:実力ある先輩ばかりで、しかもみんな面倒見がいいので、そこは安心していただいていいかなと思います。暖かい環境で、ポカポカです(笑)

「どうしますか?」ではなく、「こうすべき」を提案する

——三田さんは「上流に携わりたい」が転職の大きな動機だったと思います。その点はいかがですか?

三田:希望通り、上流から入らせてもらっています。

ユーザーインタビューやリサーチから入ることで、俯瞰した視点を明確に持てるようになり、「だからこそ必要なデザインはこうである」と、全てに納得して進められるようになりました。

今まではデザインの要件が資料にまとまった状態で降りてくることが多く、その経緯は資料や担当者の会話から理解していくものの、そこで生じた疑問を全て解消するのは難しかったんです。

でも今はデザインに着手するまでに自分の納得いくまで調べられるし、クライアントやユーザーの生の声も聞ける。以前とは桁違いの情報量で、デザインの説得力が上がった。クライアントと自分の双方にとって納得度の高いデザインが作れているのを実感しています。

「もっと上流を知った方が良いものが作れるのではないか」という自分の仮説は本当だったなと思いますね。

——クライアントワークでは「どういうデザインがいいですか?」と相手に要望を聞き、それに沿ったデザインを作るケースも多いと思います。tactoの場合はどうでしょう?



三田:もちろんクライアントの意向も考慮しますが、基本的には相手の目的に対して、「こうすべきである」というあるべき姿を提案させていただいています。

これはtactoの特徴だと思いますが、クライアントには「一緒に良いものを作りたい」と思ってくれている方が多い気がしますね。

いい意味で一任してくださることも多く、だからこそリサーチなどによる裏付けと、クラフトとしての使い勝手や美しさの両立を責任を持って考え抜き、お伝えできるように努めています。

コンサル出身の板倉さんが入るからこそ、クライアントの目線に立ち、提案から入っていくアプローチができるのだと思います。

——板倉さんは「短所を補うよりも長所を伸ばした方がいい」と言っていました。三田さんの長所は何だと思いますか?

三田:私は平均的というか、バランサータイプだと思っていて、自分の強みがわからなかったんです。


でも、板倉さんからは「コンセプトを考えるのが得意なんじゃない?」って言われて。確かにコンセプトを考えるのはすごく好きだし、それを無意識に全てのデザインへ反映させていたなと。

そう気付いてから、自分が関わる案件のコンセプトワークは全て自分でやろうと意識するようになりました。コンセプトづくりでは、板倉さんと4時間話し込むこともあります。行き詰まった時に板倉さんにチャットをすると「今から話す?」と付き合ってくれて、ありがたいです。

 

——上流から入るようになって、デザインへの考え方に変化はありますか?

三田:コンセプトの重要性を実感しています。アートディレクションをする上で、コンセプトづくりは絶対にできた方がいい。

最後までコンセプトを死守するのはなかなか大変なことだと実感していますが、それができるとデザインの自由度は上がるなと思います。

反対に、コンセプトがないと考えることが小さくなってしまう気がしますね。前職ではサイト全体にまで及ぶコンセプトを自分で書くことはほぼなかったんですけど、どうやってデザインしていたのか、今となっては不思議です。

また、自分以外の人たちにとっても、コンセプトという指針ができることで動きやすくなるように感じています。「このコンセプトだったらこういう実装の方がいいのでは?」といった提案をいただく機会も増えました。

tactoに合うのは「アイデアをぶつけ合える」デザイナー

——tactoにはどのようなデザイナーが合うと思いますか?

坂本:話すのが好きな人ですね。

三田さんが板倉さんと4時間議論したと言っていましたが、板倉さんはいろいろな人の意見を取り入れて良いデザインを作るスタンスですし、クライアントへのプレゼンも基本的には担当デザイナーが行います。さまざまな意味で「喋れる」というのは大事だと思いますね。

三田:あとは、指示されたことをやるよりも、考えて動きたい人が向いているかなと思います。

自分で考え抜いたものをぶつける先はいっぱいありますし、そこで議論して、自分一人だったら到達できない高みを目指していける環境です。

——では、お二人が個人的に一緒に働きたいのはどういうデザイナーですか?

三田:自分の考えや信念を持っている人と働きたいなと思います。

私は自分の想像以上のものができたときにデザインの楽しさを感じるのですが、それはチームでそれぞれのアイデアを掛け合わせ、「こうしたらいいんじゃない?」という新しいアイデアに発展するからできること。

その基となるアイデアがなければ掛け合わせることができないので、自分の考えを持ち、発信してくれる人と仕事をしたいです。

坂本:僕もコミュニケーションを密に取れる人と仕事をしたいですね。いろいろな視点を得たいので、何かしら武器を持っている人だといいなと思います。

各自の武器が合わさってより良いものになっていくのが、チームで仕事をする一番の良さ。だから「これが得意」という強みを持った人と働きたいです。

 

——最後に、今後の目標を教えてください。

坂本:「UIのアニメーションといえば坂本」と思ってもらえる存在になりたいと思っています。

そのためにアニメーション制作の数をこなすのは大前提。一つ一つのフレームを緻密に設計し、根底にあるコンセプトを動きに反映できるようなデザイナーになりたいですね。


三田:死ぬまでにかなえたい大きな夢は、人の記憶に残り続けるデザインを作ること。「〇〇っぽいデザインがいいんじゃない?」みたいな、“らしさ”の一つになる作品を作りたいです。

そのためにも、デザインに関わることは何でもやりたいと思っています。tactoにはそれができる環境があるし、中心メンバーとして一緒に良いデザインを作っていける人が来てくれたらうれしいですね。

そうやってより良いデザインを作り続けることで、まずはtactoの名前を知ってもらうことを目指したいです。

Interview & Text by Natsumi Amano 
Photo by Kaname Suzuki(tacto)