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「偽CB」とは

この記事では、イングランド一部・プレミアリーグで今年も優勝争いを続けているマンチェスター・シティが今季途中から採用している「偽CB」について解説する。

ペップ・グアルディオラ

まず、マンチェスター・シティの監督である
ペップ・グアルディオラについて少し触れようと思う。
マンチェスター・シティの監督就任後、ペップは毎年のように新たな戦術を採用してきた。
特にここ2.3シーズン、その様子は顕著にみられ、CFを置かない「偽9番」(このシステムはFCバルセロナの監督時にも採用しており、メッシを中央にコンバートさせ、中盤の選手と関わる機会を増やすことでティキ・タカを再び蘇らせた。)、SBの選手をボール保持時に中盤のDMFの横に移動させ、バックラインから左右のWGへのパスを通りやすくし、相手陣地で押し込むうえで効果的な形である「偽SB」を生み出した。
それぞれかなりの戦術理解度を必要とし、適した選手を本来のポジションから一時的、もしくは試合を通してコンバートさせてきた(「偽9番」ではメッシ(現PSG)、ガブリエウ・ジェズス(現アーセナル)、「偽SB」ではカンセロ(現バイエルン・ミュンヘン)、ジンチェンコ(現アーセナル)、カイル・ウォーカー)。

「偽CB」

そんなペップが今季新たに生み出した戦術が、「偽CB」である。
これは、ボール保持時に、4枚のDFラインのうち、1枚のCBがDMFの横に位置し、ビルドアップを行うというもので、これにより、4-3-3という基本の陣形から、3-2-4-1(もしくは3-2-5)に可変する。
この役割は、主にイングランド代表CBのジョン・ストーンズが担っており、彼のフィットによりペップ・シティのフットボールスタイルは大きく変化をした。


もとより、シティに所属しているCBは守備面はもちろん、ビルドアップも得意とする選手たちで、特にエメリク・ラポルテ、ルベン・ディアスはペップ・シティのCBの代表格とも言えるだろう。
しかし、なぜストーンズがこの「偽CB」の選手に選ばれたのだろうか。
それには昨季まで多く採用してきた「偽SB」が大きく関係している、と私は考える。
「偽SB」とは上記の通り、SBがボール保持時にDMFの横に位置取る戦術で、ポゼッションで相手を押し込むのに適していることは確かである。
しかし、「偽SB」には大きな弱点が存在する、と私は考える。
それは、ネガティブ・トランジションである。
ペップ・シティのSBはもとより攻撃時にはかなり高い位置をとり、相手陣地内での枚数を増やす働きを行っていた。
相手陣地奥深くでボールロストをするならまだしも、ミドルサードでボールロストをした時のショートカウンターに上がっていたSBが間に合わず、数的同数or数的不利でカウンターの処理を強いられるシーンが昨季~今季にかけてよく見られた。
そして昨季まで「偽SB」をこなしていたジンチェンコがアーセナルに、更にはカンセロが冬にバイエルンにローンで加入し、「偽SB」を本職としてプレー出来る選手が居なくなってしまった。
その後、しばらくは右SBのカイル・ウォーカーが「偽SB」としてプレーをするもペップの理想とまではいかなかった。
そんな中、突如として目を疑うようなビルドアップをペップは発明する。
それは本来最終ラインにいるはずのストーンズが、DMFロドリの横に位置を取り、ビルドアップに参加する、というものである。
この戦術により、高い位置で奪われた際の戻る距離が単純に短くなり、カウンターのリスクを減らすことが出来た。
更に、SBの選手でなくCBの選手が位置を上げることにより、ロドリが以前よりも高めの位置に顔を出せるようになった。
ロドリの武器であるロングレンジのミドルシュートも回数が増えたように思える。
この戦術におけるメリットはビルドアップ時のパスコースを効果的に生み出すことが出来る点にある。
特に冬の移籍以降、SBに本職CBである、ナタン・アケー、マヌエル・アカンジが起用されることが増え、可変後も本職CBが最終ラインに3枚揃うことで、DF陣の強度不足を感じさせない戦術となった。
更に、この戦術においてペップが重要視しているとされているのが、「左利きCB」の存在である。
ペップのWGの選手たち(グリーリッシュ、マフレズ、フォーデン)は大外に開いてボールを受け、その後、中に切り込んでいくor縦に突破するというスタイルを好む。
ナタン・アケ―、エメリク・ラポルテという二人の左利きCBがいるシティであるが、彼らが利き足の左で縦パスをすることで左WGのグリーリッシュ(フォーデン)が視野が広い状態で足元にパスを受けることが出来る。
右も同様にアカンジ、ウォーカーが速いパスを大外のWGに届けることが出来るため、受けた後の選択肢が多くなる。
そもそも、4バックでのビルドアップではSBとWGが直線的な位置に立つことが多いため、縦パスを狙われやすく、後ろ向きでボールを受けざるを得ないことが多かった。
この戦術は、そうしたボールを保持するチームの弱点を無くすためのものである。
一方、デメリットは、選手の替えが利かなくなる、ということである。
現状この「偽CB」を任されているのはストーンズのみで、彼の離脱時にはオーソドックスなバックライン4枚でのビルドアップに戻ってしまう。
更に、スペイン代表CBでビルドアップが得意なラポルテも現状ではバックアップに留まっており、「偽CB」に対応可能な新たなCBの獲得必要性が見えてきたようにも思う。

「偽CB」を確立するためには

ここで私が獲得を推したい選手がフレンキー・デ・ヨングである。


現在スペイン1部、FCバルセロナに所属する彼は、前所属のアヤックス時代に3CBの一角を担っており、彼自身の最大の魅力である「機動力」「推進力」を存分に生かすことが出来るのではないか、と考えている。
レジェンド・チャビ監督率いるバルセロナは左SB(ジョルディ・アルバ、バルデ)をほぼWGのように位置させ、可変的な3ー2ー4ー1のシステムを取り入れている。
バルセロナでのフレンキーは、この可変時に左SBが上がったことにより空いたポジションに顔を出してボールを受け取り、そのままするすると持ち上がって相手の設定した守備時のラインをいとも簡単に突破し、FWの選手に決定的なパスを出している。
かなりの上下動を繰り返す必要があるため、相当のスタミナが必要となるが、フレンキーはこの役割を90分間高いクオリティで行うことが出来る。
カウンター時に最終ラインで相手FWと対峙し、時にはクロスに合わせて三列目から一気にゴール前に飛び出す動きもすることが出来る。
バルセロナの選手の中でも特にクレバーであり、戦術理解度が高く、様々なポジションに適応することが出来るフレンキーはペップ・シティに必要な存在であるはずだ。
ただ、フレンキー自身はバルセロナに忠誠を誓っており、他クラブへの売却を徹底的に拒否し、バルセロナに尽くす覚悟を持っている。
今季は昨季よりもフレンキーがチームでより重要なポジションになっていることもあり、移籍の確率は低いであろうが、このような可変に柔軟に対応できる選手はペップの下で一度、見てみたいのは確かである。

まとめ

今回は今季よりペップ・シティが採用する「偽CB」について解説した。
おそらく最終盤までもつれるであろうプレミア・リーグの優勝争い、
更にはペップ悲願のシティでのCL優勝は実現するのか。
7年目の成熟したペップ・シティには最後まで目が離せない。

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