![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/166598614/rectangle_large_type_2_59e03089b3a9c81dcc7a137694d238c8.jpeg?width=1200)
思い立ったが吉日~舞台『モンスター』を見たよ~
風間君って実在するんだぁ
テレビスターを生で見ると、生で見ているはずなのに画面が挟まれているように感じるのはなぜでしょうか。なんかこの現象に名前とかあるんでしょうか。
というわけで舞台『モンスター』を見てきました。
毎度のこと演技のこととか演出のこととか色々言いますけど、私は素人です。言ってるだけなんで、「言ってんなぁ」と思ってください。あくまでも、わたくしタコライス定食の考えです。
ネタバレとかもあるので、各自の判断でお願いいたします。
まず一言。
ぜってぇ、あの音と光は殺りに来てんだろ。
思い立ったが吉日
ある日、X(Twitter)のおすすめ欄に風間俊介さんがご出演する舞台のチケット販売開始の投稿が流れてきました。
「へぇ、風間くん舞台やるんだ」
私の母が風間君のファンでして、以前から風間さんの作品は拝見していましたが、私自身がファンというわけでもなく、私の中では他の方よりも好感度が高めな芸能人という立ち位置でした。(何様だよ)
ですので、舞台の投稿を見ても「ふーん」って感じだったのですが……
「え、原口沙輔さん音楽なの? 人マニアの世界観めっちゃ好きなんよなぁ」
「人生で一回くらい生でテレビスターの演技見てみたいよなぁ」
「え、見に行くか」
そして、チケット抽選画面に移動し、10分後には申し込みをしていました。
思い立ったが吉日。いい言葉ですよね。
ソレができる都会。素晴らしいです。
舞台『モンスター』
座席は一階?の真ん中より少し後ろ下手側。
着席すると全然電波入らなかったので、早々にスマホの電源を落とし、目を閉じて舞台が始まるのを待ってたんですね。
んで、そろそろかなぁと瞼をあげた。
舞台に真っ赤なパーカーの男が立ってました。
あっ、なんかぬるっと始りよった!
普通に焦りました。
ストーリーとしては、教育実習生のトム(演:風間俊介さん)は、ADHDの疑いがある男の子ダリル(演:松岡広大さん)を受け持つことになったのだが、彼の『モンスター』ぶりに苦悩する。仕事がうまくいかないから家庭もうまくいかない。せめてダリルの人生をベストに導こうとするが、彼を養う祖母も中々に曲者で……って感じで、社会的な内容だしだいぶ重めです。
内容は最初から最後まで重めでストレスフルだったんですけど、ソレに反するように演技は軽やかさがあった気がします。あるいは、翻訳劇だったからこそ日本ぽさが消え失せておりリアルと混同しづらかったからか。まぁ、そのおかげで必要以上にグロッキーにならずに済みました。
冒頭から演技バトル。というか、基本タイマンの演技バトルでストーリーは進んでいきます。
少人数での舞台を観劇したのはコレが初めてなのですが、だからこそ「よく絵が持つなぁ」と驚きました。
豪華なセットも人数もいない分、舞台上にぎゅっとして演技をするシーンが何回もあります。そうすると物足りなさの一つや二つ感じそうな気もしますが、全然そんなことなかったです。演者と演出のpower強し。
そして、突然の暴力慣れした風間俊介様。
風間様は、普通の人に見えてどこか歪んでしまった人間を演じさせたらピカイチなんてもう言われすぎていて、もはやチープとさえ感じてしまうかもしれませんが、それにしても歪みの滲ませ方がお上手。ピースピースでしか語られない「一回失敗してしまった男」である説得力がえげつない。
見るからにヤバいダリルを演じた松岡さんもすげぇ俳優さんだなと感動したのですが、動のヤバさに静のヤバさで渡り合えてるのシンプルに怖いです。言うなれば、HIPHOP VS クラッシック。サンプリングとかなら調和が取れるのに、完全にマイクと弦楽器で殴り合いしてました。
静のヤバさがしっかりしてるからこそ、突然の動のシーンが更に映えますしね。
また、YouTubeに上がっている本読みのダイジェストを見たのですが、素人の私には既に風間様の演技が仕上がっているように見えて震え上がりました。そのせいか、見るからに試行錯誤している様子の松岡さんへの好感度が上がりました。普通はそうだよなぁーって。
ただ、本番(私が観劇した回)では当たり前かもしれませんが、松岡さんはガチガチに底が見えない少年を完璧に演じられていたので、普通にこの人も怖い人です。
トムの妻であるジュディは友達いないのかなぁってなりました。まぁ、コレは他の3キャラにも言えることなんですけどね。早急に夫の悪口言える友達作った方がいいと思います。
でも、案外こういう方って多いんですかね。結婚すると結婚していない友人と疎遠になるとか子供が生まれるとそっちのコミュニティでしか友人関係が続かないとか、そういった言説はよく聞きます。
劇中でも度々『モンスター』という言葉が出てきますが、その要素の一つの中に「孤独」は入ってくるんじゃないかなぁと思います。
ダリルも同じだと思ったからトムに懐いたし、唯一の家族だったからばあちゃんの話をよくした。実際の関係性がどうであったとしても、ダリルにはソレが全てだった。けれど、その2人と離れることになってしまい、プツーンといってしまった。的な。
リタのばあちゃん良かったですね。実家の周辺にいそうなばあちゃんでした。1番実在してそう。
リタのばあちゃんは薬を毛嫌いし天使を信仰してますが、私的にはあんまり信仰への執着は無いんだろうなと思いました。慰めではあるけど、それだけって感じ。信仰への執着がある人ならもっとダリルを管理するイメージがあります。
ジュディと同じになりますけど、ばあちゃんもカレピにもっと相談した方がいい。ソレができたら苦労しなぇと言われたら、それまでなんですけどね。
一つに思ったのは、ダリルとリタのシーンなかったなぁって。最初はトムが絡むとこしか描写しないのかなぁと思ったんですけど、クライマックスはダリルとジュディの直接対決ですし、その後大人3人でのエピローグだってある。ダリルとリタのシーンだけない。
私はリタ⇨ダリルはもちろん、ダリル⇨リタへの恐怖心も舞台から感じ取りました。家では好き勝手振る舞ってるようなのでダリルの方が優位な気もしますけど、結局会話シーン出てこないんでわかんないんですよね。互いの話の中でしか味わえない。どういう意図があるか気になります。
あとさぁ、俺バカだからヨォ、最後の展開わかんなかったわ……
ダリル、結局何がしたかったんや。
穏やかな感じの別れだったのに、ダリルはトムのどの辺を裏切りだと思ったの???ジュディになんで抱きしめてもらった??? え、むしろわかんない方が正解???
いや、なんとなーくの当たりをつけることは可能です。上にも書いてますけど、同類だと思ってたトムに別のところに追いやられたことに悲観してーーみたいな。
でもさぁ、全てを語れとは言わないけどさぁ、モヤモヤするっていうか。とはいえ、わかんないからこそ『モンスター』なのかもしれないし。しかし、コレまで終わりを知らずに積み上げてきたものが急に「あ、もう出来てますね」って言われてもさぁ……
パンフレットに「難しい戯曲」って書かれまくってましたけど、見る側も充分その難しさを浴びせられます。
とにかく余白が多い。
こちらに見せないだけで色々と記入されてる余白じゃなくて、多分ガチの余白。コレは別にダンカン氏が何も考えていないとか言いたいわけじゃなくて、「要らないでしょ? 君の好きなように想像して」って突き放されたようなイメージ。
俺を突き放すな!!!!!
んで音楽ですね。目当ての一つでもあります。
マジで演者が輝いてる時はただのBGMなんですよ。でもストーリー上で伏線的な不穏さが生まれると、音楽の主張も強くなる。気づいたら「あ、めっちゃ心音みたいな音なってる」ってなる。
そして1番原口さんの味を感じたのは、一幕終わり。色んな意味でこっちを殺りにきていました。ビックリしすぎてそこのストーリー飛んだんですけど、そんな不穏な音楽流すとこだったですか?
はい。つまり、いい意味でも悪い意味でも心臓の弱い方は観劇しない方がいいです。光と音で軽率に死にます。注意書きはありましたが、想定の5倍はびっくりした。
でもまぁ、音で殺されかけるなんて経験あまり出来ないと思うので、ある意味おもろい体験でした。
この戯曲テーマで一曲作ってくんねーかなぁ。
あと、どうしても言いたいんですけど、穴空いて食器ぶち込むところシュールで最高でした。シリアスな物語なので何かを示唆していておかしくないですが、普通に笑います。
こんな真面目な作品には相応しくない不真面目な感想を綴ってきましたが、最後に少しだけ真面目な感じで。
ダリルは「俺は俺のこと、結構大丈夫だと思う」と度々言うけれど、それは強がりじゃないのかなと思います。普通のクラスに戻りたいのに、全寮制の“ヤベェ奴ら”がいる所に行きたくはないのは、結構社会の局面が見えてる感じがしますよね。社会には“ヤベェ奴ら”が少なからずいて、自分はそれにまだ当てはめられていない。まだ、ってわかってる。
ダリルのソレが演技ではないと思いますけど、戻れなくなっただけな可能性はあると思います。
ダリルだけじゃなくて、誰も彼も、自分のことも相手のことも信じきれてない。それは孤独になって、モンスターになっていく。
トムとジュディを引き留めているのは赤子で、リタにとってはダリルなのだと思います。彼らとダリルの違いはそこだけ。
パンフレットも購入しましたけど、松岡さんの考えるダリルとの付き合い方?みたいな話が自分は好きでした。好きと言うか、共感できた。
以上になります。
ここまで私の拙い文章を読んでくださりありがとうございました。
色んな意味で身体に刺さる一作でした。この作品は楽しいとは少し違いますが、「どういう意味なんだろう」と考える時間はとても楽しかったです。ありがとうございました!