分子動力学法におけるpHの扱い

この記事では分子動力学計算においてpHをどのように設定するかについて書きます。

H3O+、OH-を直接表現することは不可

まずpHということでH3O+、OH-を系内に入れたいという方もいると思いますが、これは不可です。
まず少なくともH3O+については力場がありません。
仮に力場があったとしても、非常に希薄な濃度であるため、セル内に1分子も入らないというオチが待っています。

アミノ酸のプロトン化状態の指定は必要

pHによりアミノ酸のプロトン化状態は変化します。
したがって、pHによってアミノ酸のプロトン化状態を変化させる必要があります。
逆に言うと、プロトン化状態を指定してpHを表現します。

ヒスチジンのプロトン化状態

ヒスチジンはpH=6以下でプロトン化(側鎖のN原子両方に水素原子が結合)します。
中性条件下では側鎖のN原子のどちらか片方に水素が結合した形となり、δ窒素なのかε窒素なのかでAmberではHID、HIEと区別されます。

ただし、面倒なことにpHのみで決まるわけではなく、周辺環境によって左右されます。たとえば溶媒に露出しているかどうかです。つまり同じ系であっても表面に露出した残基はプロトン化しているのに内側に入っている残基はプロトン化していないということも起こりえるわけです。

PROPKAやH++などのWebサーバーを使うと、残基ごとのpKaを推定して出力してくれるため、この問題を解決することができます。

また、HIDなのかHIEなのかは非常に難しい問題です。

システイン

SHのHが塩基性条件下で脱プロトン化してSH→S-になります。

アスパラギン酸、グルタミン酸

強酸性条件でプロトン化してCOO-→COOHになります。


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