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就労継続支援D型 第十九話:AIとの対話

結城光輝は、For youの代表として、世界最高峰のAIとの対話を行う権利を得た。 AIとの対話は3つの質問まで。それが、このシステムを利用するための厳格なルールだった。

「この機会をどう使うか……」

結城は慎重に考え、問いを選び、AIとの対話が始まった。


第一の問い

「D型はFor youが運営するべきか?」

AIのモニターが一瞬だけ静かに光り、すぐに回答が表示された。

「それは判断しかねます。」

結城はその答えを予想していた。AIは社会のルールを補助するための存在であり、特定の意思決定を下す役割は持たない。決めるのは、あくまで人間なのだ。

それでも、AIがこの問いに対して何も言えないことは、ある意味で重要な答えだった。


第二の問い

「どうすれば、D型の利用者のような弱者を守れる福祉制度を作れるか?」

AIは一瞬の間を置いて、淡々と答えた。

「結城光輝さんのような人が多くなればいいのではないでしょうか。」

結城は眉をひそめた。

「……それじゃあ、答えにならないよ。」

AIは応じるように、追加の言葉を表示した。

「ルールやシステムは、それを運用する人間によって変わります。 どんなに合理的な制度を作っても、運用する側が弱者に寄り添う意志を持たなければ、結局は形骸化してしまいます。」

結城は言葉を失った。

「結局、システムの問題じゃなく、人の問題か……」

「人の意志が未来を決める。それはAIにはできないことです。」

AIの回答は簡潔だったが、深い意味を持っていた。どんなに優れたシステムがあろうとも、それを支えるのは結局、人間なのだ。


第三の問い

「AI社会になった今、人間は何を思って生きていけばいい?」

この問いに、AIはすぐに答えを出した。

「それは簡単です。好きなものを楽しめばいいのではないでしょうか?」

結城は一瞬、戸惑った。

「……楽しむ?」

AIは続けた。

「例えば、150円くらいのお気に入りのお菓子を今日は食べるぞ、と楽しみにするようなことです。」

「世の中はそんなに優しくない。」

結城はぼそっと呟いた。

「もちろん、大変な一日を終えて頑張った自分へのご褒美です。」
「そんな小さなことを幸せに思えるのは、人間の特権です。」

結城はしばらくモニターを見つめていた。

「……それは、確かに……」

AIの画面が、一瞬だけ光を揺らした。

「はい。我々AIには、喜びや悲しみを共有することはできません。」
「ですが、それを知ることはできます。」

結城はその言葉を反芻した。

AIは続ける。

「人のために頑張ることも、人のために悲しむことも、結城光輝さんの人間らしさなのではないでしょうか。」
「私たちAIは、それを共有することはできませんが、蓄積することはできます。」

結城は深く息を吐き、最後のAIの言葉を聞いた。

「もう少し、あなた方の生き方を楽しませてください。」


AIとの対話を終え、結城はモニターの前でしばらく動かなかった。 AIは、何も決めなかった。
ただ、人間らしさについて語っただけだった。

それが、何よりの答えだったのかもしれない。

結城はそっと目を閉じ、静かに呟いた。

「……そうか。」

彼の中で、何かが変わり始めていた。

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