日本の未来を築く気候変動対策とエネルギー政策:環境省・経産省の令和7年度重点施策とは?
1. 重点施策とは?
みなさん重点とはご存じでしょうか。「重点施策」とは、政府が特に力を入れて取り組む分野やプロジェクトに割り当てられる予算やリソースのことです。各省庁は毎年、重要な課題に対応するための重点施策を策定し、それに基づいて予算要求を行います。
気候変動の影響が深刻化する中、日本政府はカーボンニュートラル達成に向けた取り組みをさらに加速しています。環境省と経済産業省における今年度の方針について気候変動対策とエネルギー政策に絞って予算から読み解いてみます。
2. 環境省の重点施策:GX推進と地域脱炭素
A. GX(グリーントランスフォーメーション)の推進
令和7年度の環境省の最大の焦点は、GX(グリーントランスフォーメーション)です。GXは、社会全体を脱炭素化し、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指しています。今年度は2,318億円のGX推進対策費が要求され、昨年度の204億円から大幅に増加しました。(ただ正確には補正予算でほぼ同額でした。今年度も補正で新たに要求される可能性もあります)
GXはアメとムチの政策で、GX予算では巨額の予算が確保されています。この数年は政府からアメが配られますが、同時に、カーボンプライシングが構想されています。これは、CO2排出にコストをかけることで、企業や産業に環境負荷削減を促す仕組みです。これまでに引き続き成長志向型カーボンプライシングの制度設計や整備が進められ、市場の力を活用して再生可能エネルギーの利用促進が期待されています。
B. 地域脱炭素の推進
もう一つの大きな柱は、地域での脱炭素化の推進です。地域脱炭素推進交付金には762億円が計上され、自治体や地域での再生可能エネルギー導入、防災拠点でのエネルギー設備の導入が進められます。この取り組みにより、地域ごとのエネルギー自給率の向上や、災害時のエネルギー供給の確保が期待されています。
C. 住宅建築物への対応
環境省予算において特に巨額なのが、住宅・業務用建築物です。断熱性能を上げ、健康にも資するGXの推進を目指し、家庭の断熱や、事業所のZEB化等に対して予算をつけています。
3. 経済産業省の重点施策:GX推進と技術革新
A. GX推進予算の拡充
経済産業省でも、令和7年度の予算ではGX推進が中心に据えられています。今年度のGX推進予算は、9,818億円と昨年度(6,429億円)から大幅に増加しています。この予算は、再生可能エネルギーの導入拡大や、企業の脱炭素化を進めるために使われます。
A. 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業(1,743億円)
この事業は、産業部門や商業施設などでの省エネルギー技術の導入を促進し、エネルギー需要構造の転換を支援するものです。今年度は、昨年よりも大幅に予算が拡充されており、脱炭素化に向けた産業界のエネルギー効率化が加速しています。この1,743億円という予算規模は、日本のエネルギー政策の中心に、省エネルギー化が据えられていることを示しています。
特に注目されるのは、産業界だけでなく、中小企業や自治体における省エネルギー技術の導入を支援することで、幅広い分野でのエネルギー使用効率の改善が期待される点です。また、デジタル技術の活用によるエネルギー管理の高度化や、エネルギー需要のピークシフトを図る取り組みも含まれており、日本全体での省エネルギー化の推進が図られています。
A. 蓄電池への対応
再エネ大量導入に向けて、再エネの変動性をカバーするために蓄電池は重要なセクターになります。この分野も全体の予算額と比較してもかなり目立ちます。本格的に再エネ+蓄電池の時代をつくるための予算をつくっているといってもよいでしょう。
4. 昨年との違いと注目ポイント
令和7年度の施策は、昨年度に比べて大幅に拡充されています。特にGX推進予算の増加が際立っており、昨年に比べて多くの予算が脱炭素化技術の開発や再エネルギーの導入に割り当てられています。これまで技術開発レベルだったもの(例えば建材一体型の太陽光等)が、社会実装段階に進みはじめ、今年度はその成果を社会に実装するための具体的な取り組みが進められていると思われます。
その他、次世代革新炉の予算が拡大されたり、石油天然ガス田の探鉱・資産買収等事業に対する出資金が減額されたりと、高度なエネルギーを使いつつ、本格的に脱炭素及びエネルギーの安定化に向けた取組に舵が切られているといっていいでしょう。
5. 今後の展望:脱炭素社会へ向けて
令和7年度の環境省と経済産業省の施策は、2050年のカーボンニュートラル達成を目指し、再生可能エネルギーの拡充や技術革新をさらに加速させています。GX推進や地域脱炭素の施策を通じて、産業界と地域社会全体での脱炭素化が進み、気候変動対策が一層強化されるでしょう。
これからの日本の気候変動対策は、国の方針を理解し、うまく利用しながら私たち一人ひとりが対策を進めていくことが重要です。
この記事がみなさんのご参考になっていましたら幸いです。
6. 参考
https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2025/index.html
NPO法人上田市民エネルギーでは、市民出資の太陽光を導入してきました。詳しくはこちらから