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最優秀賞受賞「塚田智」のもう一つの顔

釣り雑誌のライターでドラムの記事?


「ありがとうございました。嬉しいです」
120名を超える受講者の中から選ばれた、映えある最優秀賞受賞のコメントがこれだ。
講師の品田さんから、すかさず「つまんねー!他に言うことないの?」と突っ込まれる。この無口で朴訥な印象を受ける青年が、ドラムテックの記事を見事にまとめ上げ、講師たちから最も多くの「へえ」を獲得した塚田智(つかださとる)さんだ。
品田さん「音楽やってるんだ?」
塚田さん「はい」
品田さん「音楽が本業?」
塚田さん「釣り雑誌のライターしてます」
会場内にたくさんの「?」と笑いが飛び交う。
音楽やってて、釣り雑誌のライター?
全く繋がらない。彼はいったい何者なのか?

塚田さんとフジロック


私が彼と初めて接点を持ったのは、講座のSlackを通してだった。フジロック好きを記載した私の自己紹介文に、塚田さんが返信をくれたのがきっかけだ。
「僕も去年、フジロックに行ったんですよ」
話を聞くと好きなアーティストも同じだとわかり、私は嬉しくなった。
お、こんなところにもフジロックファンがいたとは。
来年フジロックの会場であったら話でもしてみたいなー、くらいに思ってました。
それから数ヶ月後、冒頭の受賞スピーチの後、私は衝撃を受けることになる。講評後、塚田さんにおめでとうを伝え、少し談笑した時のことだ。
「実は渡辺さん、僕、出演してたんです」と塚田さん。
「フジロックで去年、演奏したんです」って。
えっ?
えーっ!
うっそー!
客として行ってたんじゃなかったんです。
アーティストとして、フジロックのステージに立っていたんです、彼!
フジロックは、全世界から多くの一流アーティストを集めて開催される、日本最大規模のロックフェスティバル。そのルーキーステージに、彼のバンドが出演していたのだ。
いやいや、ガチのミュージシャンじゃん。

「Ajisai」を聞いてみた


さっそく、YouTubeで聞いてみる。
やられた!一瞬でやられた!
品田山口組が何度も押した「へえ」ボタンに代わって、イントロから私は「かっけー」ボタンを連打することになる。活き活きとしたギターリフが、聞くものを彼らの世界に一気に引きずり込む。途中、それぞれの楽器が暴走を始めても、安定したベースによって、要所要所で音がまとまる。計算とイレギュラーの狭間で、ギリギリの緊張感を生んでいる。
純粋な音楽。極限まで昇華させた思いを、楽器とマイクを通してステージ上で爆発させる。私の好きなスタイルだ。
確信した。本物だ。一曲だけで確信した。
独特な歌詞はその後2日間ほど、頭から離れることはなかった。
私は、slackを通して塚田さんに「かっけー」を連呼した。

塚田さんへのインタビュー


さっそく、塚田さんに、バンドのことを取材してみた。
彼は快く応じてくれた。
彼の所属するバンド「Glimpse Group」は神奈川県藤沢市出身の4人組。活動拠点を地元藤沢と東京の下北沢に置く。
「メンバーのギターとベースが小学校~高校の同級生、ボーカルが中学校の同級生です。ドラムは学校は違いましたが、地元の友人です。結成は2018年12月。月4~5本のペースでライヴをおこなっています」
呼ばれたらどこにでも行く精神で、日本全国のライヴハウスだけでなく、台湾でもライヴを敢行した。
そして、2022年、フジロックの新人ステージである「ROOKIE A GO GO」に出演が決まった。その時のことを塚田さんに聞いてみる。
「出番前は緊張しましたが、始まったらいつもどおり演奏に没頭できました。普段のライヴと変わらない30分でした」
あっさり。強心臓。
「出演料は多くはなかったですが、フジロック出演後は、ちょっと大き目のイベントに呼ばれることは多くなったかもしれません。メジャーアーティストも多く出演する大型サーキットイベントとか」
ひと夏の経験が、バンドをさらなる高みへ引き上げる。

FUJI ROCK出演時の塚田さん
中央下段にGlimpse Groupの名前がはっきりと記載されている
赤いアンダーラインの箇所


では、「Glimpse Group」はどんな音を出すのだろう。塚田さんに、自分の演奏も含めて、分析をお願いした。
「メンバーそれぞれルーツは違いますが、60~70年代のソウル、ブルース、フォークなどが「Glimpse Group」のルーツだと思います。それを現代風な日本語のロックミュージックにうまく落とし込めているところが特徴だと思います。ギターヴォーカルの藤本慎平が作詞作曲を担当しているのですが、この男の魅力がイコールうちのバンドの魅力だと思います。意味がわかりそうでわからない歌詞、けれど印象に残るフレーズやメロディーのセンスは唯一無二のものだと思います。僕自身は、担当するベースを弾く時、指の当て方を使い分けたり、音の強弱を意識しています。アルペジオやコード弾きなど、ギター的な奏法も多用しています。けれど、単にトリッキーなことをやるのではなく、あくまでもヴォーカルを引き立てることを心がけています」
ベ、ベース?
ドラムじゃないんかーい!とここで多くのツッコミが入りそうだが、そう、塚田さんはベーシストだ。
同級生バンドは、特に明確なゴールを定めておらず、自分たちが納得のできる音を作り続けることを目標にしている。

↑最近開設した塚田さんのnote。受賞時のことを振り返る記事が書かれている。

最後に、告知をどうぞ


2/9下北沢THREEというライヴハウスでレコード発売企画を予定しています。他にも、最新作『Her Waves』はApple MusicやSpotifyなどで聴くことができます。CDもいくつかのショップで取り扱ってもらっています。YouTubeもいろいろあがってます。最新情報はTwitter@glimpse_groupまで!よろしくお願いします」

おっと、忘れる前に、皆さんも気になっていると思われるあの質問を最後に聞いてみた。釣り雑誌ライターの件だ。もともと釣りが好きなのだろうか?
「父親の影響で、僕ももともと釣り好きです。で、釣りの雑誌や本を読むのも好きだったので、釣り雑誌の出版社に編集アシスタント(アルバイト)で入りました。とはいえ音楽で食っていくことが目標だったので、とりあえず興味のある仕事ができればな~くらいのかんじで、別に編集者を目指していたわけではなかったです。ライターになりたいというのもなかったです。ところがいろいろあって編集者(正社員)になり、そこからさらにいろいろあって会社を辞め、今はフリーのライターとして、その出版社からの仕事をもらっています。おもに、バスフィッシングの専門誌である月刊『Basser』、フライフィッシングの専門誌である季刊『FlyFisher』で記事を書いたり写真を撮っています」

釣り雑誌では、編集者としての経験も!

塚田さん、ありがとうございました!
フジロックのメインステージで見られる日を楽しみにしています!



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