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小田急線新松田駅前の大松園が、51年の歴史に幕!

大松園の新松田駅前店の創業は、昭和47年。今から半世紀以上前のことだ。
家族の誕生日に、子供の運動会の後に、両親が訪ねて来た時に、そして今日は、子供達の夏休み最後の日に。
焼き肉は、家族の思い出を彩る絵日記だ。
その大松園が、今月(2023年8月)閉店する。

昭和テイストの入り口

新松田駅から、まさしく、徒歩1分。
2階へと続く急な階段。ゴテゴテとした入口にも、その歴史全てが凝縮されている。
焼き肉屋は、庶民の生活を写す写真館でもある。そこでは皆、特別な笑顔を見せる。もちろん、大松園も例外ではない。

店舗2階から見下ろす新松田駅も見納め
昔ながらのガスロースター

8月最後の日曜日、夕方17時に店に滑り込んだ。別れを惜しむ客で、店内、ほぼ満席。
私自身、この町の出身でもないし、この店との付き合いは、せいぜい10年程度。それでも、一抹の寂しさは当然あって、それが「焼き肉」が本来持つノスタルジックな情景と重なって、ガブガブと酒が進んだ。

キムチ3種盛り

肉はもちろんのこと、ここのキムチは絶品で、白菜の甘みを残しながら、発酵による酸味と、口に含んだ時に感じる僅かな発泡が食欲を刺激する。このキムチをもう食べられないのは、松田町民の大いなる損失だ。

子供達は牛タン、その周りにミノ

子供達は、この店の牛タンが大好きだ。下の子に限っては、ほぼそれしか食べない。和牛A4ランク以上の肉しか仕入れないというこの店、その肉を、庶民価格で提供してくれる。私は、他の焼肉店よりも厚く切られたミノが好みだった。火の通し方さえ間違えなければ、心地よい食感を楽しむことができる。噛みきれないガムの様なミノとは、雲泥の差だ。

私は、徹夜勤務明けのランチに、ここに訪れることが多かった。そこで食べたのは、マトンランチ。瓶ビールと一緒に飲る。不眠のおかしなハイテンションと相まって、とんでもなく美味しかったことだけは覚えている。
この店は、羊も、本当にうまい。

半世紀。信長の時代だったら、それは人の寿命を指す。長い年月だ。その間の多くの苦労や喜び、そんなかけがいのないドラマを想って、しみじみと食べて、飲んだ。
数年前にやはり閉店してしまった元祥苑とともに、松田町の庶民の特別な食事を支えた焼肉屋が、閉店する。駅前から、焼肉屋が、なくなってしまった。

新松田駅は、これから、再開発が始まるという。小さいながらも、昔ながらの商店街が残る町。きっと、数年のうちに、その姿は大きく変わってしまうことだろう。
子供達の思い出にも、今夜のささやかな焼き肉の食卓が、楽しいものとして残ってくれることを、祈っている。
大松園の名前は、一応、小田原に移転という形で残るらしい。ただ、新松田店を51年間切り盛りして来た大将と女将さんは、完全に引退するらしい。
51年間、大松園、お疲れ様でした。
本当に美味しかったです。ご馳走様でした。
ありがとう。

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