見出し画像

シガーロス LIVE 「天地創造」

彼らのライブを見るのは何年振りだろうか。2016年のフジロックで見たのが最後だと思う。
今年、ワールドツアーの日程が発表された時に、フジやサマソニに出てくれるんじゃないかと、勝手に妄想したのは私だけではないはずだ。
月火が大阪、水曜の移動日を挟んで、木金で東京。今回は最終日、金曜の東京のチケットを取った。コロナや円安の影響もあるのだろうか。座席はSS席とS席の2種類で、¥14,000、¥11,000になる。破格だ。通常、この手のアーティストの単独公演であれば、どんなに高くても¥10,000を超えることはなかった。ポールマッカートニーやボブディラン、ストーンズなどの超ビッグネームであれば納得の金額だか、今後はこの価格帯がデフォになっていくのだろうか。
場所は有明の東京ガーデンシアター。ショッピングモールやスーパー銭湯を併設した施設になっており、約2年前にできたばかり。全席指定で、全席椅子が設置されている。正直、この様な形態でのライブ鑑賞は初めてで、少々戸惑う。だが、結果的に今回のライブに関していえば、この会場は正解だったと思う。階層を設けて縦に高く客席を積み上げる構造になっており、末席でもステージを近くに見下ろすことができる。音響も素晴らしく、この日調子が良いヨンシーの喉を余すことなく届けてくれた。
休憩を挟んでの3時間のロングセット!神々しいシガーロスのライブを目撃するには、しっかりと座って聞くのがベストだと感じた。
セットリストは、()とTakkの楽曲が中心だった。ライブ冒頭の1曲目、客席のライトが完全に消え、流れたVakaのイントロに、一瞬にして涙腺が崩壊してしまった。私はこの曲を聴くと、長い冬が終わりに近づき、優しい太陽の光の中で、ゆっくりと雪が溶け、小さな小川を作り出す光景を思い描くことができる。物語の始まりだ。

ステージの照明が、時に眩しく客席を照らし出す。
半眼。まどろみの中、たどり着いた世界の原風景。そこで見た、神々による天地創造。神話の進行をリアルタイムで体験しながら、私たちは荘厳なカタルシスに酔いしれていく。ゆっくりと、時に激しく。

気がつくと、あっという間のラストソング。けがれたものを全て洗い流すような、ギターによる轟音が降り注ぐ。どこまでも美しい歌声が、鼓膜を介さず直接胸に響く。
世界は、美しい。肯定とも許容とも違う、ただそこにある正義に、私たちは全員錯覚してしまう。今、この空間こそが「ノアの方舟」そのものなのだと。

ライブ終了後、長いスタンディングオベーション。放心。誰もがその状態で、限りない拍手を送り続けた。
Takk、ありがとう。

ライブ終了後、帰宅の途、ヨンシーの歌声をいつまで聴き続けることができるのか、考えてみた。喉は、消耗品だ。しかし、そんな無意味な危惧はすぐに頭の中から消え去り、今宵のライブの素晴らしい記憶が蘇ってくる。唯一無二、ライブがライブたる所以。今夜、私は最高のライブを見た。ヨンシーの歌声も完璧だった。それだけだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?