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コアントローは、もう買えない! 安価な酒に代えることで生まれた新たな楽しみ方

ホワイトレディ、バラライカ、XYZにマルガリータ。さらには、サイドカーまで。
レシピにコアントローを必要とするカクテルは多い。

カクテルの必需品であるこの銘酒も、度重なる値上げによって、ついに、ここまで来た。
税込で、1本ぼぼ3000円。

僕が初めてこの酒を購入したのは、20歳の時。たぶん、1000円を少し超える程度だったと思う。それから、一人暮らし、実家暮らし、結婚して現在に至るまで、一度もこの酒を切らすことなく過ごして来た。四半世紀以上にわたって、僕の酒のラインナップからもれたことのない銘柄だ。

20歳の大学生の時に比べて、当然現在の収入は何倍も多い。しかし、バイト代を何も考えずに全て酒に投入できたあの頃と違い、現在はしがない小遣い制の中でコソコソやり繰りしている現状だ。しかも値上がりしているのは、もちろんコアントローだけではない。僕が好きな安蒸留酒であるジンやテキーラ、スコッチもどんどん高くなる。特にシングルモルトウィスキーに関しては、ここ数年1本も買っていない(買うことができない)。
しかしながら、バーテンダー経験のある小さなプライドから、ジンのビーフィーターもゴードンも、安価な低アルコールラインではなく、度数の高い(値段も高い)オリジナルラインにこだわり続けて来た。元々が強い酒だ。2杯目からは味覚も麻痺してたいして違いなどわからないのに、である。1杯目のパンチ力にこだわり続けてきたのだ。

そんな誰も得することのない美学を、ついに捨てねばならぬ時がやって来たのだと思う。
もちろん、継続維持するための努力は試みた。しかし、小遣いの値上げは妻に一笑に付され、早々に詰んだ。

このまま好きな酒も飲めなくなってしまうのか。
否。
僕は考え、ある一つの暫定解を導き出した。
今までこだわり続けて来た、無駄なプライドの根源となっている知識を逆利用してやろう、というものだ。

今まで飲んでいた酒の代替を、探すのだ。今より安いものに置き換えるのだ。それも、可能な限りクオリティを落とさずに。
それこそ、酒の知識を最大限発揮できるチャンスではないか。

トリプルセック=3倍からい

コアントローは、本来「ホワイトキュラソー」に分類される。このホワイトキュラソー、実はコアントロー以外にも多くの銘柄が発売されている。
リキュールで有名なボルス社のホワイトキュラソー「トリプルセック」もそのひとつ。今回はこれを購入してみる。カリブ海に浮かぶキュラソー島産のオレンジを使った、透明なオレンジリキュールであることに変わりはないが、コアントローに比べ、1000円以上も安い。

早速味見をしてみる。
ホワイトキュラソーであることは間違いないが、香りがコアントローに比べて、弱い。
さらには、甘い。ベタついた甘さ。

作るのは基本のホワイトレディ

早速、ホワイトレディを作ってみる。
いつものレシピ、いつものシェイクで作る。

ジン 40cc
トリプルセック 10cc
レモンジュース 10cc

ご覧の通り、僕はいつも、サイドカーレシピのカクテルを作る際、ベースとなる酒の比率を、通常レシピの1/2から2/3まで引き上げる。この方が、甘さ(リキュール)と酸味(レモンやライム)のバランスがいいと感じるからだ。
そして、シェイクは基本的にハードシェイクで振る。柔らかいシェイクで作ったものに比べ、比較にならないほど口当たりが優しくなる。ジンの様に40度を超える強い酒の場合、口当たりが優しいことは、美味と同義だ。

ハードシェイクによって細かい気泡がカクテルを白く見せる

飲んでみる。
正直、イマイチだ。
全体にパンチ力がなく、インパクトに欠ける。間違いなくコアントローからトリプルセックに変えた弊害だ。
原因は、香りが弱いことだと分析する。もう少し、トリプルセックの比率を上げてみることを考えたが、頭の中ですぐに否定した。きっと甘くなりすぎてしまう。

そこで、ハードシェイクをやめ、柔らかいシェイクで作ってみることにした。

ビンゴ!
いつもよりジンの角が残るが、かえってそれがトリプルセックの無駄な甘みを相殺するのに一役買っている。強くシェイクしないことで、香りが残り、十分合格点を出せるホワイトレディが完成した。

コアントローだけでなく、多くの酒の値上がりが止まらない。
今まで使っていたのに、代えざるを得ない銘柄も出てくると思う。

でもそれも、今回の様に、新しいレシピ考案の如く、試行錯誤する時間もまた楽しいのである。
バーテンダーの経験があって、本当に良かった。一生楽しめるな。

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