アルビオンオンライン ロイヤル大陸滞在記『タゲ取り物語』序文
はじめに
先日、Twitterのタイムラインを眺めていたら永田泰大(ほぼ日)さんのtweetに目が留まった。
僕は、ほぼ日手帳愛好家なので、Twitterのほぼ日手帳公式アカウントや代表の糸井さんをフォローして、日々最新情報を追っている。従って、僕のTwitterのタイムラインには、retweetされたほぼ日関連のtweetがよく流れてくる。
その永田泰大(ほぼ日)さんのtweetの内容は、しかしほぼ日手帳に関連したものではなかった。永田さんが20年前にご発表なさった『ファイナルファンタジーXIプレイ日記 ヴァナ・ディール滞在記(電子書籍版)』がKindleストアの売れ筋ランキングの5位にランクインした、という内容のものだった。「ああ、永田泰大(ほぼ日)さんとは、かつてのファミ通の永田さんと同一人物か」と合点がいった。僕は、過去に永田さんのヴァナ・ディール滞在記を読んだことがあるのだ。
FFXIでの永田さんは、紆余曲折の末に吟遊詩人としての道を歩まれた、と記憶している。僕は、同じFFXIの世界で侍としての道を歩んだ。当時を懐かしく思い出す。
前置きが長くなったが、僕がこの『タゲ取り物語 アルビオンオンライン ロイヤル大陸滞在記』を書こうと思いついたのは、永田さんのtweetを見かけたからだ、と一言説明しておきたかった。永田さんほど上手には書けないだろうけど、アルビオンオンラインの――広義においてはMMORPGの――魅力を誰かに伝えることができたら、と思う。
MMORPGとは、かつて世界中で一世を風靡したゲームジャンルだ。現在でいうところのバトロワのように、各ゲームメーカーがこぞって――それこそ猫も杓子も――リリースを競い合っていた時代があった。
Wikipediaによれば次のとおりだ。
MMORPGが衰退した理由は諸説あると思うが、パッと思いつくのは<廃人養成ゲーム化>したからではないかと思う。例えば、FFXIはその最たるものの一つだった。パーティメンバーを探すだけで毎晩2時間もかかって、集まったメンバーと一緒に狩場まで行くのに1時間(PM10時からゲームを開始したとすると、この時点で既にAM1時になっている)、そこから実際のレベリング作業が開始されるわけだが、「せっかく時間をかけて狩場まで来たのだから」と最低でも2時間、途中で誰かが死んだりすると蘇生に手間取って更に1時間、よそのパーティの敗走(モンスタートレイン)の煽りをくらって全滅の憂き目にあったりしようものなら、仕切り直しにプラス2時間となり、気づけば時刻はAM6時、やべえ、1時間後には出勤しなくちゃ……と、こんな調子でプレイヤーの睡眠時間がガシガシ削られていくという、恐るべきゲームだった。当時、世界各国でMMORPG中毒が社会問題となり、日本では<ネトゲ廃人>なる言葉が生まれた。
――と書くと、MMORPGってのは実にけしからん。とんでもないゲームジャンルだ! と思うかたもいらっしゃるかもしれない。いや、違うんです。そもそもは、そうじゃなかったんです。
そもそもとは何か?
Wikipediaによれば次のとおりだ。
元祖MMORPGのUOは、目標設定をプレイヤーに委ねるタイプのゲームだった。だからクエストもなければ、レベリングもなかった(そもそもスキル制だったので、その気になりさえすればあっという間にキャラクターの育成は完了した)。
プレイヤーたちは、日替わりで何かに成りきっていた。フィールドで調教した馬を町中で販売する行商人プレイに徹している人もいれば、金づち片手に鍛冶屋の前で待機して、武器防具の修理を快く引き受けてくれるベテラン鍛冶職人に徹している人もいた。
「君はナイト(タンク)なんだから、モンスターのヘイトを一手に引き受けるのが仕事だろう?」とか、「白魔導士(ヒーラー)のくせに攻撃参加するな!」、「連携ダメージしょぼ、イ寺(DPS)おつwww」などという、後続のMMORPGに散見されたプレイヤー間のやり取り――システム的な職業の定義に起因するストレス――は、UOには一切存在しなかった。
では、そのような、いわば神ゲーのUOから、なぜ人々が離れていったのか?
それは、時間の経過と共にUOの2Dグラフィックスがみすぼらしく感じられるようになったから、だと思う。後続のMMORPG群は、こぞって3Dグラフィックスの美麗な世界観を競い合っていた。
僕は、3年間プレイしたUOやめたその足でFFXIをプレイした。そして2年後、2004年にリリースされた『スター・ウォーズ ギャラクシーズ』に鞍替えした。SWGが、まさに3DグラフィックスのUOだったからだ。
しかしSWGは、開始から僅か一年足らずでサ終してしまった。原作ありきのMMORPGだったので、そもそもプレイヤーの数が少なかったということに加え、大規模アップデートがユーザーの不評を買い、ただでさえ少なかったプレイヤーがこぞって引退してしまったのだ。
僕の興味は、次第にMMORPGから遠ざかっていった。2013年に『ファイナルファンタジーXIV』がリリースされるまでの7年間は、別ジャンルのゲーム――主にFPSやTPS、ハンティングアクションゲーム――に興じていた(途中、UOライクな国産MMORPG『マスターオブエピック』や、言わずと知れた『ドラゴンクエストX』に手を出したものの、あまり長くは続かなかった)。
FFXIVは、半年ほどプレイしてやめた。団体行動が苦手な僕は、ソロでも楽しめるような――つまりUO的な――MMORPG以外は向いていない、ということがよく分かった。僕の人生において、MMORPGをプレイすることは二度とないだろうな、とも思った。もう沢山だ、と。
スマホの登場を機に、ゲーム市場がモバイルへと移行し始めた。僕もその流れに追随して、iPhoneやIPadでゲームをするようになった。ここでも僕は、主にFPSやTPS、MOBA、レースゲームを好んでプレイした。僕のゲーム人生において、MMORPGの総プレイ期間は7〜8年だが、FPS&TPSの総プレイ期間がそれを追い抜く9〜10年となり、今や僕はMMORPGプレイヤーというよりは、シューティングゲームプレイヤーになった。
そんなシューティングゲームプレイヤーの僕が、リリースを心待ちにしていた『バトルフィールド・モバイル』の開発中止のニュースが流れたのが、2023年3月だった(世間的には、『エーペックス・モバイル』のサ終の方が大々的に報じられた)。この二つのニュースが示しているものは、モバイルゲーム市場の頭打ちと、バトルロイヤルゲーム流行の終焉だと僕は感じた。「かつてMMORPGが辿った道と同じ道を、今度はバトルロイヤルゲームが辿ることになるんだ。モバイルに取って代わる新しいゲーム市場、新しく流行するゲームジャンルとは、一体どんなものになるのだろうか?」 そんなことを思いながら、何気なくゲームのニュースを眺めていた僕の目に飛び込んできたのが、あの懐かしいUOにインスパイアされて出来たという、ドイツ製MMORPG『アルビオンオンライン』のアジアサーバー開設の記事だった。
「ここで一旦、昔に戻るのも悪くないかもしれない」
僕は、久しく音信不通だったUO時代の仲間たちにメールを飛ばした。
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