子供を大きく伸ばすための「スポーツ界のその道一筋からの脱却」②
前回は、子供の身体の成長についてお話しさせて頂きましたが、今回は、その中でも子供のどのような体力要素が成長するのかをお伝えしたいと思います。
体力とは、まず防衛体力と行動体力の2つに分けられます。
そのうち、直接スポーツと関係するのが行動体力になります。
そしてこの行動体力とは、筋力、持久力、神経系、瞬発力、柔軟性から成り立ちます。この中でも3大体力要素は、筋力、持久力、神経系とされています。
この3大体力から見て、子供の成長とはどういうことかをご説明します。
前回、子供には年齢計画が必要であることをお伝えしました。
子供達の成長時期に応じて伸びる体力要素は違います。
つまりその時期に伸びる体力要素を出来るだけ伸ばすことが重要になります。
その時期を逸してしまうと、特定の要素はあまり大きく伸びてくれません。
これをざっくり言いますと、まず小学生時代には神経系が伸び、中学生時代には持久力が伸び、そして高校生時代は筋力が著しく伸びるということです。
したがって年齢計画では、小学生の頃は神経系を伸ばすことをメインに考え、中学生の頃は持久力をメインに、神経系をサブとして考え、高校生になれば筋力をメインとし、高2高3あたりから大人と同じ年間計画で考えます。
ここで特に重要になってくるのが、小学生時代の神経系を伸ばす事です。
神経系とは、反応や敏捷性、平衡感覚、そして巧緻性の事を指します。
「巧緻性をしっかり伸ばすことが最大に重要」
この中でも特に「巧緻性」が重要となります。
巧緻性とは、簡単に言うと器用さの事です。
自分の身体を自由に操る能力のことでもあります。
この自分の身体を自由自在に動かす能力こそ、子供が大きく伸びるために一番重要なことと言えます。
小学生から中学生へ、そして高校生、人によっては大学生とレベルが上がるごとに、選手はより高度な身体の使い方を求められます。
その、より高度な動きを求められた時に、この巧緻性が十分には伸ばされた選手は、そうでない選手より出来る確率が非常に高いのです。
しかしながら、日本ではその巧緻性を高める上で、重大な問題が存在します。
競技の専門化率が高すぎるのです。
つまり日本では1つの競技のみを行うことがほとんどなのです。
他のスポーツ先進国では、子供の頃から多種多様なスポーツを経験させます。
例えば、アメリカですと、意外と思われるかもしれませんが、初めての球技はサッカーから入ることが多いようです。
アメリカで球技といえば、野球、バスケ、アメフトが絶大な人気を誇っていますが、どうやら、幼い時に投げるという動作が多くなることを防ぐためにサッカーから入らせるようです。
ちなみにこの時期にサッカーをやらせても、ヘディングは幼い子供の脳と首には危険ということで禁止されています。
アメリカでは、完全に(1年を何シーズンかに分ける)シーズン制を敷いていて、小学生時代にはだいたい3〜4種類のスポーツを行います。
主に野球、サッカー、タッチアメフト、バスケット、寒い地域ではアイスホッケーなどが含まれます。
こうすることにより前回お話ししたように、同一箇所に過多な負荷はかかりません。
そして、年齢が上がるごとに行う競技を絞っていきます。
4種類あったものが、高校では2つの競技に、大学でようやく1つの競技に絞る人もいますが、そこでも多くの人は2つの競技をこなしています。
そして今回子供を大きく伸ばすために重要とお話ししている「巧緻性」は、様々な動きを、つまり多種の競技を経験することで、大きく伸ばすことができるのです。
一方、何度も言うように日本では小学生から野球なら野球のみを一年中行います。
同一箇所に多くの負荷をかけ、また多様な動きをしないので巧緻性があまり伸びません。
しかしながら、例えば一年中野球のみを行なっているチームと、日本ではほぼありえませんが、一年を季節に応じて、野球、サッカー、バスケットと複数の競技を行なっているチームがあるとし、この2チームが野球の試合をするとすれば、恐らく圧倒的に野球のみを行なっているチームが勝つでしょう。
つまりこの時期に勝ち負けを求めるならば、一種類に絞った方が成果は出ます。
しかし、複数のスポーツを経験したチームは「巧緻性」が伸び、後々必要になるより高度なテクニックを習得する可能性が高くなるのです。
なので、今は野球だけをしている子供には負けても、いずれは追い越す可能性が高くなるのです。
実際、少年野球の世界大会では圧倒的に日本は強いですね。
しかし、成人以降では話は変わってきます。他のスポーツ先進国は、子供に勝つことを重要視させません。
目先の一勝よりも、いかに子供を大きく伸ばすかを優先します。
日本ではまだ目先の一勝を優先しているチームが沢山あります。
前回お話ししたように、成人した選手は年間計画でとにかく「勝つ」という事を目指し試合にピークに持っていくように計画します。
しかし、子供は成人以降大きく伸びるように年齢計画を立てることが重要だと言いました。
そしてそのためには「目先の一勝」は邪魔なことなのです。
次回は、もう少し掘り下げて考えていきたいと思います。
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