子供を大きく伸ばすための「スポーツ界のその道一筋からの脱却」①
ひとつのことを突き詰めるということは、非常に大切なことだと思います。
しかし、ことスポーツとなると、少し事情が変わってきます。
日本のスポーツ文化では、若年層からの競技の専門化が非常に高い傾向にあります。
子供の時、野球なら野球、サッカーならサッカーと、一度決めてしまえば、他のスポーツをほとんど経験せず同じ種目だけを続ける子供がほとんどです。
そこに成長期だからこその弊害があります。
成人のアスリートのトレーニング計画を立てる時、一年間のスケジュールに合わせた「年間計画」を立てます。
そして、そこでの目標は「勝つ」ことです。
しかし、本来、子供の場合は、小学一年生くらいから、高校2~3年生くらいまでをひとつのスパンとし、「年齢計画」で考えなければなりません。
そして本来の目標は「大きく伸ばす」ことです。
当たり前のことですが、成人は成長が完了しているのに対して、子供は日々成長を続けます。
その違いは歴然なので、その成長に応じた計画を立てなくてはいけません。
成長期の子供というのは、精神的にと、肉体的に成長していきます。
まず、肉体面で、目に見えてわかることは背が伸びる、ということです。
この背が伸びるということは、骨が伸びるということです。
大人の骨を小さくしたのが、子供の骨ではありません。
子供の骨には「骨端線」という溝が骨の両端にあります。
その溝から成長軟骨という非常に柔らかい骨の成分が分泌され、それがやがて硬くなり骨化していきます。
この成長軟骨の分泌→骨化を繰り返し、骨は縦軸横軸へと大きくなっていくのです。
そして、いずれ骨端線は閉じてしまいます。
つまり、ここで成長軟骨が分泌されなくなり、身長の伸びは止まります。
これが大人の身体になった、と判断できるポイントです。
しかし、この骨端線が閉じる時期は、個人差があります。
だいたい男子なら髭が濃くなりだした頃、17~18歳くらいでしょうか。
個人差があると言いましたが、早い人は15歳で、遅い人で20歳くらいの人もいます。
また身体の部位によっても差が生じます。
指の骨端線が閉じているとほぼ全身の骨端線が閉じていると判断することが多いようです。
子供も大人も、筋肉や靭帯は骨についています。
人が身体を動かすことは、筋肉が骨を引っ張る事で成り立ちます。
また過度な動きから靭帯が関節を守っています。
前述しましたが、子供の骨は成長軟骨という非常に柔らかい骨の成分で覆われています。
その柔らかい骨に、靭帯や筋肉が付着しています。
皆さん想像してみてください。
グランドの草むしりをするとして、
1・カチカチに乾いた固い土に生えた草を抜く
2・雨上がりのぬかるんだ、柔らかい土に生えている草を抜く
どちらが簡単に抜くことができるでしょうか?
そうですね、ぬかるんだ柔らかい土に生えた草の方が簡単に抜けますね。
何を伝えたいかというと、子供の骨と筋肉の関係は、柔らかい土が骨で、草が筋肉として考えてください。
子供に骨端線の閉じた大人のように高重量な負荷をかけると、柔らかい骨を強く牽引することになるので骨はめくれる可能性が非常に高くなります。
いわゆる剥離骨折ですね。
また一回で出す力は弱くとも、反復回数が過多になると、何回も柔らかい骨を牽引することになるので、これもまた骨がめくれて来る可能性が高くなります。
では、子供がスポーツをしたり、身体を鍛えたりすること自体が良くないのかというと、そうではありません。
子供の骨は適度な刺激を与えると成長が著しくなり、骨密度も上がっていきます。
非常に難しいことですが、大きな負荷を与えない、同じ箇所を過度に反復させないことが適度な負荷となります。
トレーニンングの目安としては、20~30回くらいで疲労がくるような負荷で全身満遍なく行うことが大切です。
更に掘り下げて考えると、成長期中は、一つの種目だけ行うことは、大きな負荷をかけなくとも、同じ箇所に多くの回数負荷をかけることになります。
たとえば野球の場合、一年中野球だけを行うと、特に投球動作では肩肘がオーバーユースになり、怪我のリスクが高まります。
そうした観点からも日本の文化では難しいことですが、出来るだけ多くの種目を行い、偏りなく軽い負荷をかけることが強い身体を作ることになるのです。
そして、もう一つ子供の頃に多種目の競技を行うことの大きなメリットがあります。
子供を大きく伸ばす重要なことです。
次回は、そのことについてお話ししたいと思います。
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