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【オンライン立ち飲み】マリンバ奏者の野木青依さん・写真家あおにさい酒店の工藤葵さんと「ポップとサバイブ」の話

4月18日(土)、prochiroutでは「TACHINOMI余市ととなりの席の○○さん」のインスタライブを行いました。第5回目は、ゲストが2名。野木青依さんと工藤葵さん、どちらもあおいさんです。
いつもより明らかにでれでれしているTORUとの3人の対談の模様をレポートします。

君がいた夏

有名人たちのインスタライブが濫立する土曜日。案の定、サカナクションやSIRUPなど、感度が高そうなイメージのアーティストたちが裏番組でライブをする中、ついに、超大物がポップが現れた。そのバンドの名は、Mr.Children。2017年に行われた25周年のドーム・スタジアムツアーのライブ映像を、20時にYouTubeで無料配信を始めた。もちろん筆者もそれを見ていた。オンライン立ち飲みが始まる21時直前には、デビューシングル「君がいた夏」を演奏する桜井さんの歌声に聞き入っていたから、「今日はレポートめんどくせえなあ」と思い始めていた。しかし、YouTubeなんだから、別に後からでも見れるじゃないか、Instagramのストーリーのライブ配信は、いま聞かないと消えてしまうのだ。と自らを説得し、しぶしぶ「立ち飲み余市」のアイコンをタップしてみた。

TORUが、いつものキッチンで待機していた。「今回は、初の女性ゲストで、また、2名での参加。3名で立ち飲むことになります。」と言う。そして、ほどなく、ゲスト側の画面が出てきたのだが、「ちょっと待ってまだ映さないで!」「カメラ位置ここでいいのかな!」と、何やら大騒ぎしている女性たちの声が聞こえてきた。画面上には人影はなくて、270度ほど傾いた画角で部屋の一部の何かが写っているだけだ。そして、突然ぐるんぐるんと大暴れしたカメラワークが続き、天井なのか壁なのか、部屋のあちこちが、現れては消え、消えては現れ、ものすごい臨場感だ。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出した。
試行錯誤した結果、安定した撮影環境が整い、2人がProshiroutのインスタライブ画面に現れた。「野木の自宅のスタジオからお送りしていまーす」ということ。歩いて10分くらいの距離に住む2人は、普段からほぼ半同棲に近くて、この時局でも物理的に会うことができている。

対談開始

画面上では左側、ベージュのキャップをかぶっているのが、工藤葵さんだ。「あおにさい酒店」を主催し、さまざまなイベントの企画から、撮影からメディア制作、仕入れまで、何でもかんでもをエネルギッシュに担っている。ビール会社の広報のお手伝いをしたりもしている。
もう一人、右側の、黒髪ロングヘアの方が、野木青依さん。鍵盤打楽器であるマリンバの奏者。小さな頃から始めたマリンバを、音楽大学でも専攻し、今はプロとして活躍している。クラシック楽器のイメージが強い楽器、まだまだ生で音を聞いたことがない人のために、ポップスの楽曲に参加したり、普段は演奏会をしないような特殊な場所でライブをしたりと、啓蒙活動をしている。
一方のTORUはなぜか、これまでの男性ゲストのときにはなかったような、へらへらとした笑顔をしている。

この葵さんと青依さんの2人が出会ったのは昨年。
前職が看護師だった工藤さんは、「自分を表現する仕事がしたい」という思いから、2年前に、ビールと遊ぶきっかけを作る架空の酒屋、というコンセプトの「あおにさい酒店」をスタートさせた。もともと大好きだったビールに関わりながら、生活を楽しくするような価値を創出し、いろんなイベント企画を行ってきた。そして、2019年の5月、高円寺にある銭湯「小杉湯」を舞台にしたビールイベントを企画中に、ビジュアル作製のため、モデルとして写真を撮らせてほしい、とお願いをしたのが、当時、番頭のアルバイトをしていた野木さんだった。
「いままでは、容姿について何かを言われるのは、ちょっと苦手だったんです。」と野木さん。それまで演奏の仕事しかしたことはなくて、モデルなんてやったことはない。「でも、葵さんに『いい』『いい』と言われながら写真を撮られると、表層的な可愛さがどうこうではなくて、存在自体を応援してくれているように聞こえたんですよね
そこからすっかり意気投合し、良きパートナーとなった。

ポップとサバイブ

それにしても、今回の「ポップとサバイブ」って?
工藤さんは、「去年、わたしがやってきたイベントは、単発のイベントでしかないかもと思って」と語る。「そこからどうやって仕事になるのかな、ということを考えていて。あおにさいを立ち上げた当初は、自分がたのしいたのしい、だけだったんだけれど、これからは、第三者に幸せを感じてほしいと思ってもらわないといけないなあ、と思っています。
「葵さんは、もともと何もなかったところに新しいものを開拓してきました。それって、想像できないくらいのエネルギーがいると感じます。でも、それを乗り越えていくのが『サバイブ』なんだな、と思ってます。」というのは野木さんだ。
「いまは、いろいろと暗くなりがちだけど、わたしたちは、そんなことたちをポップにやりたいんです。『ポップにサバイブ』ですね」

いろんなコンサートが延期・中止になったり、ライブハウスに営業の自粛要請が出たり、音楽業界は今回の局面で、早くから自粛を求められてきた。特に、楽団の人数が多く、吹奏楽器もあるクラシック業界は、敬遠されやすかった。野木さんもその例に漏れず、予定していた演奏会がことごとく無くなっている。今年は音楽活動は諦めないといけないんだろうな、と思っていた。そんな中、工藤さんといっしょに、あることを思いついた。
「マリンバの演奏会はできないけれど、でもだからといって、ただの配信をすればいいわけじゃないんですよね。自分たちがポップにできることはなんだろう、と考えていました。ということで、4月26日に、朝の7時から24時まで、2人で丸1日、インスタレーションをやります!
「Celebration at home」というこの企画は、時報のように1時間ごとに、音楽を通して生活を祝福する、というコンセプト。インターネット上で作品を発表する予定だ。

「僕らが余市の活動をしているのは、まさにあおにさい酒店がきっかけです。」と、TORUはでれでれとした笑顔のまま語る。この2人と初めて会ったのは、新宿ゴールデン街で開催された、あおにさい酒店主催のビールイベントに参加して、朝まで一緒に飲んだときだ。それが縁となり、その後の「立ち飲み余市」としての最初のイベントに、主催側で参加してもらう。「あのイベントは、お酒のセレクトがよかったですよね」と言う工藤さん。(そのセッティングをしてくれたのが、まさに彼女なんだけどな。)「表現者として尊敬しているんです」とTORUはめろめろとした顔で語る。「あおにさい酒店が、僕らの活動の源流なんです。『架空』というワードは強いですよね、完全にパクってますからね」と盗人猛々しい。

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二次会

今、日々の生活では、何をしているのか?という質問に、「本気で野菜スープを作るようになった」という野木さん。先日「暮しの手帖」を読んで、絶対に美味しくなるスープ、という記事があったそうで、それを実践しているということ。しかし、野木さんがスープの話をすればするほど、工藤さんがどうも「別の話にしましょう」という空気を強いてくるようだ、芸能人のマネージャのように。ははーん、さては野木さん、料理に難ありなんじゃないか?

「余市さんは、イベント当日でも絶対にイライラしないですよね」という話に。TORUが言うには、「一緒にやる人のことを信頼しているからですかね。音楽のことは任せました、ビジュアルのことはまかせました、というやり方なので、自分がイライラしてもしょうがないんです。へんなアイデアだな、というものもあるんですよ。でも、『この人だから』と思うから、とりあえず、じゃそれでやりましょう、ということになるんです。で、だめだったらげらげら笑えばいいだけなんですよね。

客観的には、控えめに言ってもいわゆる美人、な2人なのだけれど、本人たちは、そういったものを武器することを考えていない。野木さんは、「わたしは音楽とか芸術が好きで、それが生活にもたらす享受を大事にしているんです。でもそういうものって、エンタメのように、大衆にうまく伝わらない。芸術とエンタメの違いって、体験した効能、みたいなものの持続性が違う、と思っているんです。いい音楽を聴いたときに、その後の人生観が変わる経験があるんです」と語る。

2人はインスタライブは初めてだったということだが、もともとパフォーマーの野木さんは、カメラの前でもいっさい臆さずに、率直に自らを表現する。一方、プロデューサーである工藤さんは、冷静な熱意を持ち、真っ直ぐな目でじっと前を見すえる。決して感情がまとまっているわけではないし、正しい言葉が見つかっていないところがある。けれど、そこには、安易な道へなびかないんだ、という、実直な意志の強さがある。
対談中、何度も口を揃えて、「わたしたち本気なんで」と言った2人。このコンビであれば、この時世をサバイブできるのであろう。あくまでもポップに。

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ナタリーちゃんのグラレコ。

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文責:TSUYOSHI HIRATSUKA
proshiroutの幽霊部員。何もなければ基本的に20時に就寝する。



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