【オンライン立ち飲み】音作りの中野目さんと「音」の話
5月13日(水)、proshiroutでは「TACHINOMI余市ととなりの席の○○さん」のインスタライブを行いました。第13回は、中野目 崇真さんをゲストに迎えました。その模様をレポートします。
乾杯
実は5月13日は、中野目さんの20歳の誕生日。そこで、ハイボールで乾杯しようと、TORUからブラックニッカのプレゼントを事前に送っておいた。そして、おいしいハイボールの作り方をレクチャーするTORU。
①グラスにいっぱい氷を入れる
②しばらくマドラーでくるくるとかき回して、グラスを均一に冷やす
③氷が溶けて底に溜まった水は捨てる
④ウィスキーをグラスの端から静かに注ぐ
⑤もう一度マドラーでくるくるとかき回して、ウィスキーも冷やす
⑥冷たい炭酸水をグラスの端から静かに注ぐ
⑦氷を少し持ち上げる(炭酸水を入れた後はむやみにかき混ぜない)
無事に出来上がったハイボールで乾杯して、対談がスタートした。
中野目 崇真さんは、2000年生まれ。3歳の頃からタップダンスを始めた。4歳で銀座の博品館劇場にてデビューし、12歳で渡米しシカゴでスキルを磨く。中学生ですでにワークショップを開く立場にあったが、高校に上がったあと、もう一度ロサンゼルスに渡って修行をした。
東京国立博物館で阿修羅展があり、仏像に興味を持ったことがきっかけで、古墳や寺社仏閣が好きになった中野目さんは、10歳の頃から、伎芸天という芸能の女神の像が安置されている、奈良の秋篠寺に通い詰めていた。境内でパフォーマンスをしたい、という熱意を伝え続け、なんと国宝である本堂をバックにタップダンスを奉納することになった。そしてそれが縁となり、若干18歳で奈良市の観光大使に就任することになった。18歳で観光大使になるのは最年少記録ということ。
「そもそもタップを始めたのは、ディズニーシーがきっかけなんです」と中野目さんは話す。3歳のとき、「アンコール!」というダンスショーケースを見た。ミッキーやミニーは出てこない大人向けのショーで、キャストたちがウェストサイドストーリーなどの有名なミュージカルのメドレーを歌って踊る。これにすっかり感銘を受けた彼は、その後、普段の生活でも自然と足を動かすことがくせになり、ついにはタップダンススタジオに通い始めることになった。
音作り
また、ダンサーの活動の枠にとらわれず、いまでは音楽制作も手掛けているのが、中野目さんの興味深いところだ。彼の作品はApple MusicやSpotifyでも聴くことができる。「タップって、身体性と音楽性が同居する分野で、つまりは打楽器の一種とも言えるんですよね。そんなビートを再現したり、再編集して新たなジャンルに変換したり、ということをしています」主にPCで制作をしているが、エレクトロに寄りすぎず、環境音、自然音にも聞こえるようなスタイルにしている。思い出や哀愁を想起させられたらいいな、と思っているとのこと。「カラスの声とか、踏切とか、パトカーの音とか、夕方のチャイムとか、そういう日常の中の音と一緒にタップをやってきた、というイメージが僕にはあるんです」
そんな自然音にこだわる中野目さんは、フィールドレコーディングもしている。「音って、生きているからこそ聞こえるわけで、それが人々に彩りを与えると思うんです。今、家にこもっている状況で、他者の存在を感じるのは、音ですよね。他者って、生物も非生物も含まれていて、例えばiPhoneの通知音なんかもそうです。今度出すアルバムには、京都の南禅寺の小河の音を入れていますよ」
失敗
二次会では、「音」というテーマはどこかにいってしまい、話が止まらない2人が、我々をさらに深淵へと引きずり込んでいく。これはいやな予感がしてきた。うつわ作家の石川さんとの対談のような混沌とした沼にはまってしまいそうだ・・。
成人してからの酒の失敗という話から派生して、「僕は失敗は好きです」という中野目さんに対し、TORUが語る。「失敗したことはいっぱいあるけれど、あとから『あのとき失敗したなあ』と笑ったときに、それは失敗じゃなくていい思い出になりますよね」
そして自分の失敗から、他人への関わり方の話へ。「人に相談されたときに、それに結論を出してあげたり、あえて厳しいアドバイスをしたり、っていうことはせず、その人が決めたことを肯定してあげるんです。やりたければやればいいし、やりたくなければやらなくていいし、そういう関係性を作りたいんです」というTORU。
これには中野目さんも共感する「この分野なら、これがモデルケースだ、と断定してしまうのでは、その人自身の主観ではなくなってしまい、余白を消してしまいますよね」
「僕は優柔不断で何も決めないし、曖昧なんです。proshiroutなんて、曖昧の極みなんですけどね」
「でもそれって、長期的に見れば、大きな成長に繋がるんだと思うんですよね。その覚悟がないと、自分を正当化してレッテルを貼ってしまう。論理的でもあり感情的でもあり、そういうところが曖昧なまま行き来できるのがいいコミュニティですね」
信念
中野目さんはさらにずいぶんと深いところに触れ始める。「いま、SNSが氾濫している時代って、それぞれの世代が揃っています。高度経済成長を経験した人、バブル崩壊の時代を経た人から、ゆとり世代まで。これを『ダイバーシティ』とネーミングしてしまうんだけど、でも多様性はもともとあるものなので、特定のものに定義してしまうんじゃなくて、混ざり合っている状態がいいと思います。右派、左派、って決めてしまいがちだけど、お互いが交渉するのが怖いんですよね、自分に自信がないから揚げ足を取られたくないというか。それぞれが同じものを信じるという総意がなくたって、お互いに信じているというものがある、ということを認め合えばいいのに」
TORUもこのモードになってしまった。「今って、同調圧力があるから、なんていうんだろう、みんなと同じじゃないといけないですよね。『理想論』って悪い意味に使われがちで、青臭いとかよく言われるんだけど、何がだめなの、って思う。変わらなかった生物は化石になっちゃうけど、人間は変化を受け入れてきたから今も生き延びてきたわけ。30代で老害もいるし、80代でもインスタライブを見ている、うちのばあちゃんもいる。この前、ばあちゃんがFacebookライブを始めました、っていう通知がきて、さすがにそれは怖くて見れなかったけど」
「外部が作り出した言葉を咀嚼もせずに使うのは無責任だと思うんです。自分の音じゃない、ってことなんですよ、自然音をそのまま頭を通さずに横流しをしただけ」と話す中野目さん。
これが、今夜いちばん、ひしひしと伝わってきたメッセージだ。彼自身が対談中に、どこかから借りてきたような言葉を、ぜんぜん使わない。
おそらく、それが一流の表現者の責任なのだ。あどけない笑顔の目の奥に、信念と意思の強さが感じられた。
リンク
▼中野目さんのHP
https://instabio.cc/soumanakanome
▼proshirout
https://www.instagram.com/proshirout/
https://www.facebook.com/proshirout/
▼ナタリーちゃんのグラレコ
文責:TSUYOSHI HIRATSUKA
proshiroutの幽霊部員。20歳の頃、大学の2回目の留年が決まった。
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