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【オンライン立ち飲み】小杉湯の平松さんと「日常」の話

4月25日(土)、proshiroutでは「TACHINOMI余市ととなりの席の○○さん」のインスタライブを行いました。第9回目は、銭湯「小杉湯」の3代目、平松さんとの対談です。その様子を、今日は真面目にレポートします。

乾杯

21時、平松さんがインスタライブに登場。優しそうな笑顔。「高円寺で、『小杉湯』という昔ながらの銭湯をしています」落ち着いた話し方だ。
「小杉湯」は、昭和8年に創業の、杉並区・高円寺北にある、伝統のある公衆浴場。瓦屋根のレトロで荘厳な建物は、今年は登録有形文化財に指定された。平松さんはその3代目である。2016年から経営に携わり、戦略的に事業拡大をしている。今年の3月には、銭湯の隣に「小杉湯となり」という、飲食もできる居心地のよいスペースをオープンした。

TORUは、平松さんにすっかり敬服している。「今回、なんで出てくれたんですか。平松さんと出会って、社会にはこんな面白い大人がいるんだな、と思ったんです」と恐縮しきりだ。

proshiroutでは、昨年、「立ち飲み余市」のイベントを、小杉湯で行わせて頂いた。待合室を立ち飲みスペースに見立て、湯上りの人にハイボールを飲んでもらおう、という企画だ。結果として、500杯近くハイボールが出て、その日の銭湯利用のお客さんは、1000人を超えた。12月の凍える寒空の中、小杉湯ののれんをくぐると、お風呂とウィスキーの熱気が充満する待合室で、知らない人同士が親密におしゃべりする、という不思議な光景ができた。「自分たちがやりたいことができで、すごく楽しかったです」と話す。

小杉湯

小杉湯は、まだ何にも実績のない、いったい何者かも分からないproshiroutが持ってきた企画にも「いいね面白いね」と快く賛同をしてくれた。というのも、日替わりで「○○の湯」を企画するのみならず、営業前の浴室で音楽ライブをしたり、待合室がギャラリーになったり、以前から、既成概念にとらわれない、いろいろなイベントを行ってきたのだ。
でも、コトを起こしているから人が集まるんじゃなくて、人が集まっているからコトが起きている、という順番なのね」と平松さん。小杉湯は、変化が激しい現代において、年季の入ったその不変の存在感に価値がある。「神社仏閣みたいな感じ。『環境』って大事だな、と思います

平松さんが大事にしているのが、もう一つ、「ケの日のハレ」という言葉だ。高円寺には、まだまだ風呂なしの物件もあり、生活の一部として銭湯を利用する人がいる。また、家に風呂がある人は、ちょっとだけほっとしたくて小杉湯に来てくれる。決して、劇的な体験ではないけれど、日常の中のちょっとした「ハレ」が、そこにはある。
「でも、この『ケの日のハレ』って言葉、造語なんだけど、俺が考えたんじゃなくて、スタッフの子が言ったのをぱくってるだけなんだけどね」平松さんは、そんなことを言っちゃう飾らない人だ。

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現状

3月にオープンした「小杉湯となり」だが、「すげえ投資して開いて、2週間で自粛、という状態です」と苦笑いする。「現在は、店内の利用は休止。食事はテイクアウトで、デリバリーもちょこちょこ初めて、立て直しつつあるところ」
一方、銭湯は変わらずに営業を続けている。「対策を徹底した上での営業は大変なんですけど、風呂はインフラなので、いつも通りにやろうと決めました」。時間を短縮すると密になってしまうので、営業時間はそのまま。幸い、小杉湯という建物は、屋根が高くて換気が良い。従業員もお客さんも、皆で共助して日常を守っている。

「すごいな、と思ったのは、小杉湯をいつも利用している人のリテラシーの高さですね。そういうところがすごく勉強になります」というTORU。Twitterを見ていると「小杉湯に行きたいけどいまは我慢」とか「今はいけないからオンライン銭湯で我慢」とか、そういうお客さんがいっぱいいる。(3月30日、小杉湯では、ゆらゆらした湯船の動画を投稿した。「#オンライン銭湯」はトレンドワードとなり、動画は100万回再生を突破、その取り組みは全国の銭湯に波及した。
「いや、そんなに褒めてもらっちゃって、ありがとうございます」と率直な平松さん。「でもね、実際、お客さんは4割減ったのね、6割は来ていただいている、とも言えるけど。これって経営としてはキツくて。ちょうどとなりに建物を建てたり、投資フェーズだったから。」

コトではなく、場所

平松さんは語る。「『コト消費』と言われてから久しくて、コトに紐付けた事業やコミュニティが次々に生まれているけれど、そいうのって、コンセプトやメッセージが、尖って閉じていってしまうんだよね。そうじゃなくて、『場所』に紐づく、というのが強いと思っているの。今も結局、『家』という場所に関連する事業が強いじゃないですか」

この状況で、共同体の範囲が小さくなってきているので、手を取り合って経済を回していくことが大切。小杉湯としても、地域の中で手を取り合って生活をしていこうとしている。「いまちょっと考えているのが、配達をしてあげよう、と思ってるのね。だってUBER EATSって35%取るんだよ、しかもそれがアメリカに行っちゃうってのもさ。最近そんなことを考えるようになってきた。リアルの情報量ってすごいじゃない。でも今って、家の中でできるコト体験が増える一方じゃん。こっちにふれすぎると、コロナが明けてからもそうなっちゃうよね」と、警鐘を鳴らす。

小杉湯では、Eコマースを始める。入浴剤とかタオルとか消臭剤など、アメニティを扱う。また、熊本の「ヤマチク」という会社で作る竹箸に「小杉湯となり」という刻印を入れてたものを販売、未来チケットになる。現在、毎日打ち合わせしていて、来週にはオープンできる予定だ。

考えが一貫していて、自らの言葉で語る平松さん。優しそうな雰囲気の奥には、商売への実直さが垣間見える。勉強になりました。

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ナタリーちゃんのグラレコ

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文責:TSUYOSHI HIRATSUKA
proshiroutの幽霊部員。朝シャワー派から夜湯船派になった。

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