あらしの思い出

足はなんとか”前に進む”ようになったが、腕の所在をどうすればいいかわからない。腕だけではなく、肩もだ。そびやかして歩いてみるが、しっくりこない。
(人が見たら笑うのかな。彼らが水の中にいる時も、おかしな動きしてるから。)肩をすくめ、そう思った。
前に、親切な人間にあったときに細説されたものの、生まれた時からその足先を受け止める大地があったものと、なかったものの間を埋めることは出来なかった。ふらふら、ドコドコ、ズズズと、およそ歩いているとは思えないようなリズムで前へ進んでゆく。
(あぁ、あの人はシンセツだった。確か、チョウカクさん。)
(あのあと友達に会うって行ってたけど、ちゃんと会えたのかな?)
と、想念していると、風がごうごうと唸りだし、空が鈍く重い色そまりだしていた。
(あれ。ノワキが来る。)
足を止め、橋の上で足を投げ出して座る。ウミネコが騒がしい。

(そういえば。あの人の友達も、
ノワキと一緒にどこかへ行ってしまったけど、
やっと帰ってきてくれたんだって言ってたな。)

水平線の先に、暗い影と雨が見えた。

(嬉しそうな顔だった。)






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