川井監督『ランニング!ランニング!』横谷選手『前に行け!』リモートマッチだからこそ可視化された、大志選手へのコーチング(愛媛FC2020シーズン第2節ホームでの徳島戦)

愛媛FC奇跡の逆転劇

約4ヶ月のコロナ休止期間明け、最初の試合は徳島ヴォルティスが相手、40回目の四国ダービーでした。結果は皆さん、ご存知の通り、歴史に残る大逆転劇で、愛媛FCの勝利。こういう試合は、ある意味、奇跡に近いと思います。調べてくれた人がいて、Twitterのタイムラインで流れてきたのを見ました。

0-3からの逆転で、4-3で勝つ試合は、数年に一度しか起こらないらしいです。Jリーグだけで、年間約1000試合もあるんだから、“奇跡”と言い切っていいでしょう、うん。これから、サッカー好きが奇跡を語るときは『マイアミの奇跡』か『ニンスタの奇跡』どっちかです、宜しくお願いします。その奇跡をニンスタで目撃出来なかったことは、愛媛FCサポとしては痛恨の極みです。だけど、インターネットとDAZNのおかげで、今、4回目を観ることができている。そして、大輝選手の同点ゴールで、また涙目になっている。ネット最高。来週の山口戦までにあと2回は見ると思う。ダゾーン最高。


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アディショナルタイム、大志選手、川村選手、丹羽選手の頑張り

サッカーにおける奇跡というのは、コツコツと小さな頑張りを積み重ねたり、苦しいときが続いても諦めなかったりしたときに、たまーにサッカーの神様が、そのときのノリで、はいよー、とポロッと与えてくれるものだと思っています。

あと、PKが決まるかどうかもほぼ運で、キッカーとキーパーの間での駆け引きや、過去のデータ分析などがあることは認めるけど、それでも神様のノリで決まるものだと私は思っています。決めたらすごいし、止めたらすごい。だけど、ハズしても悪くないし、止めれなくても悪くない。PKの結果は神様のノリなんで。もちろん異論を認めまくります。ちなみに尊敬するイビチャオシム先生も、PKは運なので見ないそうです。

話がそれてすみません。今回、奇跡の決勝ゴールを決めたのは大志選手でした。スタメン起用なのに、最後まで鬼のように上下動を繰り返し、後半ロスタイムのあの瞬間に敵陣ゴール前まで走り切っていた。疲労もあったはずで、集中力を欠いていても不思議はないのに、ふかさず、シュートブロックに来た相手DFの股を抜く、冷静にコントロールされた最高のシュートをぶち込んでくれた。大志選手マジすごい。

だけど、だけども。川村選手がインターセプトを狙いに行く瞬間の超ダッシュとか鳥肌が立ったし、丹羽選手がキーパーの前に体を入れて必死の足先ちょこんパスで意地でもボールを仲間に繋ごうとした(結局、足先ちょこんパスにはならなかったけど)とか何回見てもグッときちゃいます。大志選手だけじゃなく、小さな頑張りの積み重ねがやっぱりあったんですよ。あぁ、目をつぶって逆転ゴールのシーンを想像するだけで泣けてきた。4回目。

あえて今回は触れないけど、もちろん1点目の横谷選手、2点目の有田選手、3点目の大輝選手、どのゴールも奇跡を手繰り寄せるために必要なファインゴールだったし、岡本選手はこの試合も神セーブを見せてくれた。それぞれについて書きたいけど30,000字くらいになりそうで、そうなったら、誰も読まないだろうから書かない。てか、読まれるのか、このノートは…、いや読まれないだろう…、読まれなくてもいい、私の心に充満する勝利の喜び熱を放出するためだけに書くんだ…w ちなみに今エアコン22度設定で書いてます。


奇跡を呼び込むために、必要だった条件

とにかく、それでも、まだ、奇跡が起きるには、伏線(小さな頑張りの積み重ね)が足りないのではないかと思います。私、個人的には、この奇跡には『リモートマッチで無観客試合』という要素も欠かせなかったように思うんです。それを裏付けるように、大輝選手は試合後のインタビューで『(無観客で)指示が通る』ことを挙げていました。


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さて、ゲームを振り返ります。愛媛FCはスタートは、この形でした。



その後、序盤にCKから2失点したところで、ベンチとの選手交代はせずに、4バックから3バックに変え、選手のポジションを調整します。



そのあと、前半33分くらいで山瀬選手を前に、横谷選手を後ろに、ポジションを入れ替えます。



後半からは3人入れ替えて、FWを2トップに。


この試合、かなり頻繁にフォーメーション、ポジションの入れ替え、選手交代を行ないました。Jリーグが過密日程になり、選手の疲労蓄積軽減のため、1試合での選手交代が3人までだったのが、5人になりました。そうした事情をうまく生かしたんですね。でも、実際は、ゲーム中に、フォーメーションを変えたり、戦い方を変えたりするのは、うまくいかないこともあります。なぜなら、フォーメーションを変えようと指示を出しているその間も、プレーが続いているから。プレーを続けながら、フォーメーション変更を指示する監督の言葉を聞きとり、フィールドプレーヤー全員に適切に行き渡らせるまでには、数分かかったりすることもあるし、監督に気を取られていたら、マークする相手を見失います。それを何回も繰り返すのは選手が混乱する可能性もあります。

でもこの日はリモートマッチ、つまり無観客。選手同士のコーチングがとてもよく聞こえて、ダゾーン観戦なのに臨場感が逆にヤバかった。特に徳島GKの上福元選手のコーチングは際立っていましたよね。ひとりだけ声のデカさが違っていたので、ダゾーンの音響さんが間違えて、上福元選手のそばにある集音マイクだけ音量マックスにしてるんじゃないかと思ったぐらいです。そんなわけで、川井監督の指示がよく聞こえたんです。

川井監督のコーチングで印象的だったのは2つ。

前半3分頃の『逃げるな!裕人!』。左からビルドアップしようと、田中選手から高い位置にポジションを取ろうとしている前野選手へ縦パスを入れる。しかし相手選手の寄せが早かったため、ダイレクトで田中選手にリターンパス。そのボールを田中選手は再び前野選手へパスを戻したプレーについてのコーチングだ。大きなミスをしたようには見えないプレーだったけど、試合開始からすぐ、何気ないパス交換に対して、かなり強い言葉でのコーチングだったので、実況の古谷アナも食いついていた。今振り返ると、この試合を象徴しているように思えてきます。

このシーン、田中選手に対して右前方から相手のプレスが来ていたが、やや遅れ気味だったので、体を開いてパスを受ければ、右サイドへ大きく展開する選択肢が作れたかもしれないし、ボールに寄るようにパスを受ければ、フォワードの位置にいる横谷選手へくさびのパスを入れる選択肢も作れたかもしれない。元々のゲームプランとして、攻撃に繋がるプレーを意識させる狙いがあったと感じさせる川井監督のコーチングだった。

そして、もうひとつは、前半34分頃の『(大志選手&茂木選手への)ランニング!ランニング!』。前半15分ほどで2失点して、直後から、センターフォワードの位置に張っていた横谷選手を少し下げてシャドーのポジションに入れたところ、ある程度自由にピッチを動きながら、ボールを受けては、ダイレクトパスではたいたり、スルーを使ってみたりと、テンポよく捌いて、森谷選手と横谷選手が攻撃のリズムを作って、攻撃のON・OFFスイッチをポチッ、ポチッと押し始めた。ONになると周りも、裏に抜けようとする動きを見せ始めています。いわゆる『起点になる』というやつですね。

そこで川井監督は、横谷選手をさらにもう一つ下げて、ボランチにポジションを変えさせた直後に、茂木選手と大志選手の2人に、『ランニング!ランニング!』とコーチングした。解説の大西さんが、オフザボールでの動きで、相手守備陣に揺さぶりをかけることを、川井監督は求めているとおっしゃっていたが、その通りだと思う。もう一つの狙いとしては、おそらく、長沼選手がいる左サイドは1対1でチャンスメイクできる(実際にすでにできていた)という判断をして、その分、右サイドに人数を2人、3人かけて攻めよう、そういう算盤勘定があったんじゃないかと思う。

川井監督からの指示を受けてすぐ、低い位置で横谷選手がボールを持った瞬間に大志選手がボックスへ向かって走り込んで、そこにロングパスを入れるプレーがありました。その直後にも、横谷選手から、右サイドに流れた藤本選手に縦にロングパスを入れて、似たような感じで仕掛けている。前半35分くらいからは、横谷選手が3バックの右の位置に入ってボールを受けるところから攻撃が始まる感じになっていて、同時に茂木選手がウイングのように縦に動いて、大志選手がゴールに向かっていく動きが増え、右サイド中心でチャンスメイクが増えている。川井監督の指示を横谷選手がうまくピッチの上で表現し、ゲームの中で愛媛が攻撃するリズムを生み出した時間帯になりました。今、思えば、この辺りから、愛媛のペースになっていたように思います。

そして、メンバーを3人入れ替えての後半開始早々、横谷選手から大志選手への強烈なコーチングも目に留まりました。徳島は自陣の深い位置からビルドアップしようと、キーパーの上福元選手からセンターバックの石井選手にパス。石井選手はすぐにボランチの梶川選手にパスするのですが、これを横谷選手が狙いすまして、強烈なプレスで潰しにかかったシーン。うまくいけば相手ボックスの目の前でボールを奪い、すぐさまシュートを狙う、そんなシーンだった。しかし、愛媛は前線にプレスにいった人数が足りなかったため、結果として、徳島からボールを奪いきれなかった。そのときのコーチングが『(大志)前に行け!』。大志選手に高い位置でプレーすることを強く要求したコーチング。53分にも、徳島がスローインするときの守備でも、横谷選手から『大志!もっと行け!』というコーチングが飛んでいました。

この流れから、チーム全体として相手陣地でハイプレスでボールを奪い、素早く攻撃に移る展開が格段に増え、押し込む状況が続き、相手ボックス付近でのプレー時間が目に見えて増え、その結果として、FK、PKを得られたし、枠内シュートが増え、CKを得られたのだと思います。試合終盤になっても茂木選手が『下がるな!』と声をかけ続けていたから、おそらく、この試合、前半の終わりぐらいから、ずーっと、『前に行け!』という声をお互いに常に掛け合っていて、最後の最後まで、チーム全体で、その気持ちを切らさなかったんじゃないでしょうか?

やっとここまで来ました。

リモートマッチだからこそ大志選手へのコーチングが、私たちにもわかりやすい形で可視化されたわけですが、もし、この試合が有観客で川井監督のコーチングがスムーズにチームに伝わらなかったとしたら…、横谷選手から大志選手へのコーチングが、サポたちの歓声でかき消され、大志選手が前線へアタッキングする回数が減っていたら…、この奇跡の逆転劇は生まれなかったかも知れませんね。

なんか、愛媛FCが勝つ条件ってのは、無観客であることなんじゃね?みたいな結論になって、心が急に苦しくなってきました…。そんなの嫌です、スタジアムでサッカーみたいです…。

そして、もうひとつ。

愛媛FCをずっとゴール裏から支え続けた先輩サポーター伊藤さんが、天国でサッカーの神様に『今日は愛媛を勝たせなさい』なんて説得してくれたのかもしれません。



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語り継がれる奇跡の四国ダービー

とにかく、大逆転の試合と言えば、2016-2017シーズンのCLパリサンジェルマン対バルサとか、2018-2019シーズンのCLバルサ対リバプールとかあるけど、あれは2試合での逆転でしょ?この試合は1試合で2試合分のドキドキを味わえたってことで、世紀の大逆転劇試合と言えば、2020シーズンの40回目の四国ダービーを、私は語り続けていく所存でございます。最後までお読みいただきありがとうございました。


PS.

80分の大輝選手、イエロー覚悟でカウンターを防いだシーンがファインプレーで震えた、と一言書き添えさせていただきます。かなり前がかりになっていたから、あれは本当にやられると思った。大輝選手、冷静だなと思った。

それと、試合後にダービーフラッグを掲げるとき、横谷選手が、今日ベンチ入りしたフィールドプレーヤーで唯一出場しなかった、アカデミー出身の忽那選手に対して『遠慮すんなや』みたいな感じで、真ん中にゴリゴリ押し込んでいき、その結果、アカデミー出身でルーキーの忽那選手、決勝ゴールの大志選手、アカデミー出身で主将の前野選手がセンターに陣取って、みんなで写真撮影するシーン、一連の流れ含めて最高オブ最高でした。次の四国ダービーで、このシーンおかわりしたいです。


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