馬術はメジャースポーツになれない
オリンピックの馬術競技で、日本が92年振りにメダルを獲得したことが話題になった。
この事について、口を挟むつもりはない。
ただ、この結果を受けて「馬に乗ってみよう!」という人が、一時的に増えたとしても継続してくれるか?と言ったら、それはまた別の問題が浮上してくるはずだ。という内容の記事。
「トレンド」を見て感じたこと
馬術で日本が銅メダル、92年振りの快挙!
一部では愛称の「初老ジャパン」について、いろいろな捉え方があるようだが、今回の記事では関係ないのでスルーします。
メダルを獲得出来たからこそ、幅広い人たちから注目されたと思うけど、そのなかでも各々の呟きを見ていて思ったのは、まだまだ知られていないことだらけだということ。
例えば、「日本からどうやってパリまで馬を輸送したんだろう?」という呟きがあった。
これは、もし日本から輸送するならば飛行機輸送だが、馬術の場合は少し違う。
これは東京五輪に参加した馬の輸送。
これを見れば、海外から日本に来る馬は飛行機で移動するのが分かる。でも、馬術の日本代表を決める選考会は、日本で行われていないことを知っているだろうか。
今回、メダルを獲得した総合馬術の地域予選はアイルランドで予選があった(参加国はオーストラリア、中国、南アフリカ、ニュージーランド、モロッコ)。
もっと言えば、馬術競技の本場はヨーロッパで、その度に輸送していたのではコストがかかる。だから、基本的に馬はヨーロッパで滞在している形になる。
この予備知識があるか無いかで感じ方は大幅に違う。僕は、東京五輪の馬術日本代表選考会はオランダで行われていたことを知っていたから反応できるけど、普通の人は知らないはずだ。それは、マイナースポーツだから。
馬術は「マイナースポーツ」
毎週日曜日には、地上波のテレビで競馬の様子が実況中継され、毎日どこかの競馬場では競馬が行われている日本でありながら、馬術というのはマイナースポーツでしかない。
その理由は何故か?をこれから書いていくのだが、その前に思うこととして、世の中に競馬が好きだという人がどれだけいるかは分からないが、そのなかで定期的に乗馬クラブへ通って乗ってます。って人はなかなかいないのが現実だと思う。
それなりに競馬は見られていても、実際に自分が馬に乗ってみる。となったら話は別だろう。要するに、認知はされていても実際にやってみようとは思わないスポーツ、それが馬術・乗馬だと僕は思っている。
「マイナー」は悪じゃない
マイナースポーツだから悪だ、というつもりはない。例えば、日本で言うとフェンシングだったり、カバディなんかはマイナースポーツだと思う。それが悪だとするつもりはない。
ただ、そういう競技があるよね。とは知られていても、露出度が違う。毎週地上波で競馬の映像が流れる。それで馬に人が乗ることを知れるはずなのに、実際にやってみようとは思わない。
テレビでフェンシングやカバディの中継を週1ではやらない時点で、馬術の認知度は他のマイナースポーツに比べると高いはず。
それでも競技人口が増えることはなかなか無い。
要するに、この記事で僕が言いたいことは「馬術がメジャースポーツにはなれない」ということ。
メジャースポーツにはなれない
大前提として、メジャーになれないから悪だとするつもりはない。
だからこそ、今は注目が集まったかもしれないが、トレンドにもなっていたようにこれで乗馬クラブに通う人が増えて…というのは、一時的には増えたとしても、長いスパンで見た時に増えるか?と言ったら、正直そこまで変わらないと僕は思っている。
そして、会員が増えないなら馬房を新たに増設してまで馬を増やそうとは思わないはずで、一時的に乗馬人口が増えたとしても、引退競走馬のリクルートが上手くいくというのは、妄想・絵に描いた餅だと僕は思っている。
メジャースポーツになれない理由
この辺りの課題を上げれば、正直いくらでもあるのだが、僕は小型馬が少ないことを1つの理由としてあげたい。
こんな風に出来る子を育てられる場所が、少なくとも1県に1施設あれば、馬術の普及という意味で良いと思っている。
こういうのが、馬術の裾野を広げることになると思っている。
「サラブレッド」はハードルが高い
実際に乗ってみたら分かるが、ポニーの方が乗るのは難しい。だからといって、サラブレッドの方が優しいという訳ではないのだが、物理的な問題で、サラブレッドの背は高いから視点が高くなるのを怖いと感じてしまう。
怖いと感じてしまった時点で、体は固まってしまう。この時にもし落馬してしまったら。上手く受け身を取れず、怪我の可能性が高まる。そうなったら、乗馬は怖いと思ってしまう。
少しでもそのハードルを下げるために、視点が低いポニーから乗馬を始めるというのが、利に叶っていると僕個人は思っている。
でも、現実問題でポニーに乗れる乗馬クラブがそれほど多くもないし、ポニーに乗れるとなったらさほど大きくない人限定になってしまう。要するに、年を取ってから乗馬を始めようとして、ポンとサラブレッドに乗ったら視点が高いことに驚くはず。それが恐怖心に繋がらなければいいけれど…ということ。
ポニーの普及が大きな鍵
僕は、乗馬人口を増やすためにはポニーの普及が必要不可欠だと思っている。そして、ポニーが普及して、人口が増えてこそ乗馬としてのサラブレッド(引退競走馬)の需要が増えると思っている。
ただ、ポニーを増やそうとしても現実的には増えない。順致も手間がかかる。
そして、小型だからこそ気が強い。犬でもチワワは警戒心が強いのと同じで、ポニーでもそういうもの。だから、下手な人が乗るとすぐ舐められる現実がある。だからこそ、上手くなるための材料が揃っているとも言えるけど。
まとめ
「知らない人にどう伝えれば理解してもらえるか」
これは非常に難しい。
僕は、オリンピックで馬術を見たからといって、じゃあ乗馬やってみようか?っていうのを否定するつもりはさらさらない。
無いけど、そういう人たちが100人居たとして、会員になって月に何度も来てくれるお客さんになってくれるか?と言ったら別問題だと思っている。
いろんなマイナースポーツと比べて、馬術・乗馬は認知度が高いはず。それなのに流行っていない・メジャースポーツになりきれないのには理由がある。
そして、その理由は一朝一夕に解決できるものではなく、ブレイクスルーが無い限り緩やかに衰退していくと思っている。
それを解消するための手段として、ポニーを使っての普及に力を入れるのはどうか、というのがこの記事の内容。
また、最後になるが、馬術のメダル獲得で注目が集まったからこそ、「馬の扱いは酷いものだ」という呟きをするのは自由だが、それに騙される人もいるわけで、情報を正しく発信していかないと、これからの時代はダメなんだろうなと思った。
言い方は悪いが、1~10までちゃんと伝えなければ誤解される可能性があるし、ちゃんと伝えても誤解される可能性はある。
ただ、その時にちゃんと伝えましたよ。という説明責任は果たしましたよ、いわば取扱説明書は渡しましたよ、というようにしなければこれからの時代はダメなのかなぁと思った。
空気を読めや行間を読めが伝わらないようになってきている。