JRAが競りで馬を買う理由


はじめに

日本各地で行われているサラブレッドの市場において、上場された1歳馬を年間に約70頭ほど購買するのがJRA(日本中央競馬会)だ。
中央競馬の主催者でもあり、国が全額出資している特殊法人でもある日本中央競馬会がなぜサラブレッドを購買するのか?
その理由は公開されているけれど、まだ知られていないことが多い。その事について触れていくと共に、僕なりの目線で感じることを書いていく。

購買する理由

JRAが各市場で購買した馬は、JRA育成馬として育成が行われる。最終的にはその馬たちを2歳の春に中山競馬場で行われるブリーズアップセールに上場し、中央競馬の馬主に買って貰うことを目標にしている。
これだけ聞くと、意味が分からないと思うので補足する。
ブリーズアップセールに上場される「JRA育成馬」を使って、JRAは育成段階で研究を行っている。ちなみにブリーズアップセールには、JRAホームブレッドとして扱われる生産を行いつつ研究も行っている馬を上場する。
簡単に言えばJRAが市場で馬を買うのは「研究をするため」という大義名分がある。
もしかしたらこの裏には、生産農家の方へ支援のつもりとか何かしらがあるのかもしれないけれど、大義名分としては「研究のため」である。

JRAは転売ヤーなのか?

1歳市場で仕入れて2歳の競りで売る。となったら、世間にいる転売ヤーではないか?と思う人もいるだろう。だが、安心して欲しい。そんなことはない。その理由を解説していく。

売却総額

日本各地で行われているサラブレッドの市場にJRAは参加している。6月の九州市場から始まり、7月の八戸市場・セレクトセール・セレクションセール、8月のサマーセール、9月のセプテンバーセールに参加して馬を購買する。
今年の4月23日に中山競馬場で行われたブリーズアップセールでは、76頭が上場されて売却率100%を達成した。これだけを見れば「スゴい!」となるのだけれど、実はカラクリがある。
ブリーズアップセールでは、5頭の欠場馬が出てその後に1頭購買キャンセルがあった。
その後、5月29日にオンラインで行われたJRAコンソレーションセールにおいてブリーズアップセールを欠場になった5頭と購買キャンセルとなった1頭、計6頭の競りが行われる予定だったがブリーズアップセールを欠場となった内の3頭はコンソレーションセールも欠場となっており、購買キャンセルとなった1頭とブリーズアップセールを欠場した2頭、計3頭が税込1617万円で購買された。
その為、ブリーズアップセールとコンソレーションセールをトータルで見れば、売却総額は税込8億5558万円になる。そして税抜価格は7億7002万2000円。これはブリーズアップセール・コンソレーションセールに育成馬を出品して売却したことで得られた売却金だ。
これを仕入れ価格と経費が上回ってなければ黒字。売却金よりも仕入れ価格と経費が高ければ赤字になる。計算していこう。

仕入れ価格

まず、ブリーズアップセールに上場した7頭のJRA生産馬について。
父エスケンデレヤが3頭、父アニマルキングダムが3頭、父デクラレーションオブウォーが1頭で計7頭。種付け料はエスケンデレヤが50万円・アニマルキングダムが120万円・デクラレーションオブウォーが230万円。
トータルで740万円ほどかかる計算になる。
そこに、生まれてくるまでの11か月にかかる費用を月5万と仮定して、7頭分で月に35万円の11か月だから385万円がかかる。この時点で1125万円。そして子馬の費用が離乳時から月に5万円ほど発生するとして1年経てば60万円。これが7頭分で発生するから420万円。1545万円というのが、順致までにかかる費用として計算できる。競りで買ってくる馬にはこの費用が必要ない。
そして、各地の競りで買ってきた馬の総額は税込6億8310万円。合わせて6億9855万円というのが、順致を行う前の価格。いわゆる頭数を仕入れるためにかかった価格と捉えることが出来る。

順致費用

10月から4月までの6か月間、順致を行うのに掛かる費用を毎月25万円と仮定して6か月で1頭あたり150万円。それが81頭いるので、1億2150万円かかる計算になる。
本来は、日高と宮崎に分かれて育成を行っているから北海道から新潟競馬場で1泊して宮崎県まで馬運車で輸送を行うための費用を計算したいが、面倒なのでここでは省略する。
同様の理由で、中山競馬場を貸し切りでやる費用はタダにしても日高・宮崎から輸送を行うための費用も計算したいが省略。

仕入価格+経費>売却総額

仕入れ価格と経費を合わせると8億2005万円となる。税抜の売却総額は7億7000万円台なので単純に赤字だ。
よって、JRAが転売ヤーだとする意見は的外れのように思う。確かに転売を行っているようにみえるが、研究をして赤字で売却するのだから、その意見は成立しないと考える。

結論

ブリーズアップセールはJRAの出血大サービスである

競馬で負けている人はよく、JRA銀行に預金をしている。と言うけれど引き出す手段はある。それが、ブリーズアップセールだ。
ただ、ブリーズアップセールで馬を買うために必要な条件は中央競馬の馬主であること。JRAからカネを引き出せるかもしれないが、それ以上に馬を競馬に使うことで財布からカネが出ていくことになる。
これが、競馬沼か…と知る今日この頃。


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