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交響曲 2022.09.06

 ハヴァーガル・ブライアン 交響曲全32曲を聴いた。1番は世界最長といわれる120分の大作、4番までも50分近い曲が続くが、5番以降は15-30分程度となる。いくつかグループ分けできそうだが、全体的に断片を集めた自由で瞑想(迷走)的な印象で、いずれも形式的に交響曲とは言えそうもない。

交響曲1「ゴシック」 2022.08.31
オンドレイ・レナールト/スロバキアフィル、スロバキア放送響

ブライアン 交響曲1番「ゴシック」、オンドレイ・レナールト/スロバキアフィル、スロバキア放送響。世界最長120分、8管編成、合唱込み800人、2部6楽章の大作。規模の割にはすっきりした印象で飽きない。1部はオケのみでクリア、グロテスクな面もある。2部は合唱が入り力強く、清らか。32曲の中では一番面白かった。

交響曲2 2022.08.31
トニー・ロウ/モスクワ響 ブライアン 

交響曲2番、ロウ/モスクワ響。4楽章、15のセクションより成る。1番に比べ随分新古典主義派的で、無調で暗く硬質な印象の中に、時折柔らかく不安定な優しい旋律が混じる。2楽章も落ち着いた不安な感じ。3楽章は行進曲風のピアノ伴奏でHrnソロで始まるスケルッツオ、4楽章は激しさと落ち着きを繰り返し静かに終わる。

交響曲3 2022.08.31
スタンレー・ポープ/ニュー・フィルハーモニア管

ブライアン 交響曲3番、ポープ/ニュー・フィルハーモニア管。当初2台のピアノのための協奏曲として作曲された。ピアノとPercの鋭角的な旋律に調性不安定でロマンチックな弦が絡み盛り上がる。明るくゆったりした2楽章は力強く最後は静かに終わる。3楽章は輝かしいファンファーレとワルツ、4楽章はピアノも戻り、とりとめなく展開し盛大に終わる。

交響曲4「勝利の賛歌」 2022.08.31
エイドリアン・リーパー/スロバキア放送響

ブライアン 交響曲4番「勝利の賛歌」、リーパー/スロバキア放送響。3楽章14セクションで50分。イギリス的で明解・古典的な始まりが、合唱が入り調性が怪しくなり、セクション単位に場面転換が激しくなる。2楽章は途中盛り上がりもあるが独唱と合唱で静かに進行。3楽章はオルガンも入り合唱中心に進み輝かしく終わる。

交響曲5「夏のワイン」 2022.08.31
アルマンド・アイセル/フンボルト・レッドウッズ州立公園コミュニティ管

ブライアン 交響曲5番「夏のワイン」、アイセル/フンボルト・レッドウッズ州立公園コミュニティ管。バリトン独唱とオケのための交響曲で、同名の詩がベースとなった。4番までとは違い5番以降は20分程度の曲が続く。暗く調性不安定。終始バリトン独唱で大地の歌を思わせるところもある。終盤に激しく盛り上がり最後は劇的に終わる。

交響曲6「悲劇的交響曲」 2022.09.01
メイヤー・フレッドマン/ロンドン・フィル
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲6番「悲劇的交響曲」、フレッドマン/ロンドン・フィルとウォーカー/新ロシア国立響の2つの演奏。20分1楽章3部形式。所々、ショスタコーヴィチに似ている。曲想は暗く陰鬱で時に劇的、1部のTrpの叫び、2部の気だるい葬送、3部の激しいスネアとTimp、Hrnが印象的。断片的で一貫性はないまま終わる。

交響曲7 2022.09.01
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲7番、ウォーカー/新ロシア国立響。4楽章で40分弱、珍しく通常の交響曲の形式で調性がある。スネアを伴うTrpファンファーレで始まり、晴々としたイギリス的な雰囲気が全体を覆う。チャイムも入って曲想も明るく明快で聴きやすい。曲が進むにつれ断片的でまとまりが見えないまま静かに終わる。

交響曲8 2022.09.01
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲8番、ウォーカー/新ロシア国立響。1楽章3セクション、23分の曲。不穏なEup、Tubaで行進曲風に始まりピアノも入る。中間部からはおちついた静かな部分と金管の滑稽なやりとり、盛り上がりがあるが、最後は消化不良のような感じで静かに終わってしまう。

交響曲9 2022.09.01
チャールズ・グローブス/ロイヤル・リバプール・フィル

ブライアン 交響曲9番、グローブス/ロイヤル・リバプール・フィル。3楽章連続で演奏される27分の曲。重々しく輝かしい金管と、ちょっと滑稽で現代的な部分が交互に現れる対比が特徴的。調性も不安定で、部分的に面白いが断片的で、どちらに向かうのか見定めるのが難しい。

交響曲10 2022.09.01
ジェームス・ローラン/レスタシャー・スクール響

ブライアン 交響曲10番、ジェームス・ローラン/レスタシャー・スクール響。この曲もいくつかのセクションで構成された単一楽章形式で18分。ゆったり激しく始まる。調性は不安定で、金管の低音をベースにPercも入って派手な部分と、静かで穏やか、風雲急、滑稽な部分が織り交ざる。先行きが見通せないまま静かに終わってしまう。

交響曲11 2022.09.01
エイドリアン・リーパー/アイルランド国立響

ブライアン 交響曲11番、リーパー/アイルランド国立響。3楽章8セクションの24分。弦の穏やかでしっかりした旋律より抒情的に展開する。2楽章はHrnより始まり楽し気で、弦による密やかな部分、スケルッツオを経て静かに気だるく3楽章に移り、金管のファンファーレからイギリス的な爽やかさを感じつつ完結する。

交響曲12 2022.09.01
エイドリアン・リーパー/スロバキア放送響

ブライアン 交響曲12番、リーパー/スロバキア放送響。5楽章で11分と短い曲。チャイムの最弱音で始まり、すぐに2楽章へ。軽い感じの2楽章からBDの打ち込みが支配する3楽章はゆったり歩み、静かな4楽章から活発で鋭角的な5楽章になる。最後はTimpが静かに引き取って終わる。

交響曲13,14 2022.09.02
スタンレー・ホープ/ロイヤル・フィル
エドワード・ダウンズ/ロンドン響

ブライアン 交響曲13番、ホープ/ロイヤル・フィル。単一楽章で18分。スネア、Timpに導かれ暗く緊張感をもって始まる。調性は不安定で小さなセクションの寄せ集め的なところは変わらず。14番、ダウンズ/ロンドン響も同様、単一楽章で22分。重く断片的で移り気、どちらも曲全体として聴く方向性が見えない。

交響曲15 2022.09.02
トニー・ロウ/アイルランド国立響

ブライアン 交響曲15番、ロウ/アイルランド国立響。単一楽章で3パート、23分。祝典的に堂々とした出だしに続き、静かで瞑想的で抒情的な部分が交互に現れる。最後は威勢良い3拍子で華麗に終わる。一連の曲の中では、調性の不安感は少ない。一貫してしっかりした足取りで、緩急はさほどない。

交響曲16 2022.09.02
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響
メイヤー・フレッドマン/ロンドン・フィル

ブライアン 交響曲16番、ウォーカー/新ロシア国立響とフレッドマン/ロンドン・フィルの2つの演奏。単一楽章で18分。管楽器の木霊の掛け合いが、不協和音で緊張感を持ちながら勢いよく膨らんでいく。やはり中間部は静かに瞑想的、終盤は細かな早い動きもあり、最後はオルガンの不協和音で盛大に終わる。

交響曲17 2022.09.02
エイドリアン・リーパー/アイルランド国立響

ブライアン 交響曲17番、リーパー/アイルランド国立響。単一楽章3パートで14分。様々なPercを伴って各パートが対位法で絡み、分析的な印象。他の曲同様に途中に静かで瞑想的な部分を挟む。最後は3拍子からファンファーレを経て威勢よくあっという間に終わる。やはり方向性が見えず聴きづらい印象。

交響曲18 2022.09.03
ライオネル・フレンド/BBCスコティッシュ響

ブライアン 交響曲18番、フレンド/BBCスコティッシュ響。4楽章14分。イギリス的で神経質なぎくしゃくした感じ。全体的にすっきりした印象があり、新古典主義的。2楽章はゆったりした低音の打ち込みに管が掛け合う。3楽章になり調性は安定し明るく活動的、4楽章もイギリス的にTrpが盛り上げて終わる。

交響曲19 2022.09.03
ジョン・カナリナ/BBCスコティッシュ管
マーティン・ブラビンズ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管

ブライアン 交響曲19番、カナリナ/BBCスコティッシュ管とブラビンズ/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管の2つの演奏。3楽章18分。18番同様、新古典主義的、Percも盛大でイギリス的でクリアな印象。2楽章は穏やかで抒情的。3楽章は付点のリズムがコミカル。急激に盛り上がり完結する。

交響曲20 2022.09.03
アンドルー・ペニー/ウクライナ国立響

ブライアン 交響曲20番、ペニー/ウクライナ国立響。3楽章14セクション、27分。暗く神経質な印象は変わらず。1楽章後半より勇ましさと静けさが入り混じる。2楽章はVn、Fl、Hrnのソロを交え穏やかにゆったり進行、3楽章はTimpのリズムで躍動的に始まり、調性の曖昧な柔らかな部分と共存。どうも定まらぬ感じ。

交響曲21 2022.09.03
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲21番、ウォーカー/新ロシア国立響。4楽章29分。イギリス的、調性があやふやで神経質、新古典主義的な曲想。他の曲同様、勇ましさと瞑想的な静けさとの交互進行となる。2楽章の弦主体の抒情的な旋律と4楽章のイギリス的華やかさと最後の盛り上がりは印象的。18番からの新古典主義4部作というのはうなづける。

交響曲22「小交響曲」 2022.09.03
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲22番「小交響曲」、ウォーカー/新ロシア国立響。2楽章9分という短い曲。劇的な出だしは緊迫感がある。ただ、以降はこれまで同様、調性不安定、ちょっと風変わりな騒がしさと静けさの繰り返し、楽器の掛け合いが続く。リズムの刻みに金管が盛り上がるのもパターン。短いのが取柄?

交響曲23 2022.09.03
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲23番、ウォーカー/新ロシア国立響。2楽章14分。Timpのロールのcrescで派手に始まる。新古典主義的な緊張感がいい。静かなHarpとソロの掛け合いを挟んで、2楽章はゆったり3拍子で壮大に始まる。速度を維持しながら静かな部分と唐突な盛り上がりを繰り返すパターン。

交響曲24 2022.09.03
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲24番、ウォーカー/新ロシア国立響。1楽章3セクション、16分。こちらもTimpのロールのcrescで威勢よくイギリス的で祝祭的な雰囲気で始まり、いつもの強弱、緩急を交互に織り交ぜて進行する。後半に現れる静かでゆったりした弦の旋律が印象的。22番からの3部作の中では調性的で明るい雰囲気。

交響曲25 2022.09.05
アンドルー・ペニー/ウクライナ国立響

ブライアン 交響曲25番、ペニー/ウクライナ国立響。3楽章、24分。27番までの新古典主義3部作。低音から湧き上がるような不安・緊張感と静かで抒情的な部分が交差する。2楽章は弦のゆったりした透明な旋律の上に管楽器のソロが絡む。3楽章はおどけたリズムで始まりTimp、金管で盛り上がって終わる。

交響曲26 2022.09.05
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲26番、ウォーカー/新ロシア国立響。3楽章18分。派手にイギリス風に始まる。様々な楽器が折り重なり対位法で進行、盛大に終わる。静かな2楽章を挟んで、1楽章同様、イギリス的な快活さで始まる3楽章は、Vnや木管の短いフレーズを挟み、Percを伴って盛大に盛り上がって終わる。

交響曲27 2022.09.05
チャールズ・マッケラス/フィルハーモニア管

ブライアン 交響曲27番、マッケラス/フィルハーモニア管。3楽章21分で新古典3部作最後の曲。1楽章は、Flのソロを交えながら快活に重厚に展開する。2楽章は弦主体でゆったりと抒情的で瞑想的。3楽章はHrnから活発に始まり、緩急強弱をつけながらバタバタと取り留めなく進展、静かに終わる。

交響曲28 2022.09.05
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲28番、ウォーカー/新ロシア国立響。4楽章14分。作風は変わり、軽い断片の寄せ集めのような印象。同じ気分が途切れなく2、3楽章につながる。そのまま4楽章ではTimp、Trpで勇壮に始まり不協和音で盛り上がるが、最後は中途半端な終わり方となる。

交響曲29 2022.09.05
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲29番、ウォーカー/新ロシア国立響。4楽章23分。ゆっくりしたテンポで荘厳な雰囲気で始まるが、すぐに新古典主義的な分析的で神経質に着実な歩みで進行する。2楽章は弦と木管ソロが絡みうつろう。3楽章は木管のゆっくりしたスケルッツオ、4楽章もゆったり対位法でイギリス的に進行、静かに終わる。

交響曲30 2022.09.05
マーチン・ブラビンス/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管

ブライアン 交響曲29番、ブラビンス/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管。2楽章、15分。緩やかで落ち着いた弦より盛り上がる。ブライアンの特徴である断片的で唐突な印象は変わらない。2楽章は木管と弦が絡み合いPercと金管が合の手を入れ、最後は銅鑼で締めくくる。

交響曲31 2022.09.05
アレクサンダー・ウォーカー/新ロシア国立響

ブライアン 交響曲31番、ウォーカー/新ロシア国立響。単一楽章13分。かわいらしく始まるとすぐに盛り上がり、これを繰り返す。切れ目なく2楽章に進み、Vnソロから盛り上がる。リズムは一定で、静かな部分と騒がしい部分が交互し、最後は悲劇的な感じで終わるが、やはりどっちを向ているのかさっぱりわからない。

交響曲32 2022.09.05
エイドリアン・リーパー/アイルランド国立響

ブライアン 交響曲31番、リーパー/アイルランド国立響。ブライアン最後の交響曲で、4楽章21分。弦の調性不定な旋律が自由に展開しOb、Vnのソロが続く。2楽章もゆったりしたテンポで弦と木管に時折金管が重く響く。3楽章は目先が変わり軽快ですっきりしたスケルッツオ、4楽章は明るい軽いテンポ、最後はcrescで完結。

交響曲1-32 2022.09.11

 ブライアンの交響曲32曲を、この2週間ほどで2周半ほど聴いた。さすがに疲れた。時代的に新古典主義派で調性が不定、なじみのある旋律はほぼなく、小さなパートが強弱を伴って繰り返され断片的。抒情的な部分も瞑想的で、強い部分はPercを多彩に使いこなす。全体的に唐突な印象。

交響曲1-32 2022.09.11

 典型的な交響曲という枠組みに入るものは一つもなく、イギリス的な響きや気高さ、対位法による展開は楽しめる。ただ、最初に書いたように、4番まで、特に1番はお気に入りと言えなくもないが、全体的には、前述の印象しか残らず、また聴きたいとまでは言えない。32曲という大量の交響曲を作曲されたことは偉業である。

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