初めての職場、初めての転職…動き出す人生⑦
その日もいつものように朝Sの車で送ってもらい
(Sは毎日俺を送った後、家に帰ってからまた自分の出勤時間に来ていた…本当に健気だったな…)
帰りにそのままドライブした
夕陽の綺麗な海岸線を颯爽と走っていく
「今日こそは言おう!」
そう心に決めていた
そして帰り道、家の近くに車を停める
「じゃあね!また明日!」
Sがそう言って車を走らせようとする
「ちょっと待って!」
俺はSを呼び止めた…
「ずっと言えなくてごめん!俺と付き合って!」
やっとこの言葉が言えた
「もーずっと待ってたよ…」
Sは喜んで受け入れてくれた
時間がかかったが、晴れてSと付き合うことに
なった
付き合いだしたとはいえ、それまでも2人で遊びに行ったり食事をしたりしていたから
特に変わったところもなく、強いて言えば
周りから冷やかされるくらいだったかな?
ただ付き合うということは…である
下世話な話だが、「友達」ではない「恋人」なのである…
付き合うようになってから、常に手は繋ぐようになった…手はね
だが、それだけだった…
なんとなく
「今はこれだけでもいいかなー」
俺は当時こう思っていたが
Sはそうではなかった…
いつものように遊んだある日のこと
「今日も楽しかったなー」
俺は、そう思いながら布団に入った
たしか、0時を周った頃だったと思う
コンコン!
ベットのすぐ横にある窓を叩く音がした
恐る恐るカーテンを少し開けて外を見ると
そこにはSの姿が…
「えっ、ど、どうしたの?」
驚きながらもSを部屋に招き入れる
「特に用って訳じゃないんだけど…一緒に寝ようかなって思って…」
そう、Sはある覚悟を持って部屋に来たのである
ここまでの覚悟を感じたら、当然答えるのが
男としての責任だと思う…
だがしかしだ…
誰にも言ってないのだが、実は当時まだそっちの経験がなかったのである
なんとも恥ずかしい話なのだが、その時の心境は
興味とか歓喜より不安でいっぱいだった
どうしたらいいかなんて全然分かるわけもなく…
たわいもない話でただ時間だけが過ぎ、あろうことかいつの間にか寝てしまい、朝を迎えた…
Sは何も言わず家へと帰っていった
正に「ヘタレ」である
素直に話していれば変わっていたはずである
ただその勇気が当時の俺には無かった…
ただそれだけ…
この一夜の数日後、この恋は早過ぎる終わりを告げるのである…
⑦はここまで… 第1部最終話⑧に続く…
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