シルクロードday4 キルギスのホスピタリティはマリアナ海溝より深い
キルギス国境に18時に到着。
同乗していたカザフ人のお姉さんにイミグレを一緒に突入してもらう。カザフもキルギスも旧ソ連なので手続きはめちゃくちゃ遅い。
ようやくカザフを出国(手続きスピードは比較的マシだがブースが狭すぎる)して、国境の川を渡る。タイ-ミャンマー国境の川なみに小さい川だ。
すぐにキルギスのイミグレに到着。富士通製のパソコンを使うこの国のイミグレはカザフが神に見えるほど遅い。
待ってるうちに雨雲が襲来し、キルギスに入国した頃には完全に暴風雨状態。まさか中央アジアで雨が降るとは思ってなかったので雨具なんて持ってきてない。一気に濡れ鼠でとても寒いぞ。
途方にくれてると現地人がタクシーをシェアしてくれる。腹減ったーと言うと車内でバナナをくれた。彼の名前はイボ。イブラヒムだからイボらしい。
名前からトルコ系かと思いきや全くそんなことなく、見た目は我々日本人とあまり変わらず、藤原さんと言われても信じれる。
年齢を聞かれるも、実年齢を言うと童顔が悲しくなるので20歳とサバを読む。まるで中年熟女の気分だ。
対するイボさん、22歳。
セーフ!!
ビシュケク市内到着は20時。
ウルムチと違ってこちらはちゃんと夜。
イボさんが夕飯に誘ってくれたので同伴することに。
だが外に出ると寒いこと寒いことでみんなブーツにジャケットを羽織っている。
てっきり夜だろうが熱帯夜だと思っていた極東の猿こと僕、もちろんサンダル素足に長袖といえばフリース1枚のみ。
見かねたイボさん、途中の売店で靴下を買ってくれる。ついでにお土産も買ってくれる。(宿のオッチャンはジャケットを貸してくれた)
そのままイボさんお気に入りのファストフード店へ。ここでもデカいホットドッグとチャイをご馳走になる。肉がジューシーで美味い。
明日の予定は?と聞かれたのでホットドッグをハフハフさせながらイシククル行こうかなと言うとオッケー、地元その辺の奴呼ぶわ、とまさかの友人召喚。
うそやん。
来たのはメガネのこちらもアジア系のカピさん。恐る恐る年齢を聞く、、、18歳!
アウトー!
ここでイボさんは所用があるため解散。そさて残される初対面の外国人同士。
結論から書くと彼は本物の聖人だったのだが、会って初っ端から彼の善意のジャブが繰り出される。
市内案内してあげるよ!
いや夜やけど大丈夫なの?と尋ねる僕に彼は言う。
「問題ないさ!だってこの街はベリースモールからね!HAHAHA 」
(なおこの後もちょくちょくカピさんはビシュケクは全てがちっさいことを愚痴ってきた)
それでは弾丸夜のビシュケク観光、行ってみよう。
まずは大統領宮殿へ。宮殿というから豪華かと思いきや実質剛健の白い巨大な建造物が出現。政府機関だけ異様にデカいあたり共産圏の名残を感じる。別名ホワイトハウスらしい。
ホワイトハウスの前を通り数分でセンター広場へ。ここの見所マナス王の像。とはいえマナスを知らない身からすればチンプンカンプン。キルギスの英雄らしいが世界史では出てこなかったような…。
雰囲気はアルバニアのスカンデルベグ広場。もっともこちらの方が賑やかで楽しそうではある。
マナス像の裏にある国立博物館(もちろん閉館)の横を通り過ぎ、階段を降りるとでっかいレーニン像が登場。マナスの前は結構な数の人がいたのにこちらは誰もいない。
レーニン好き?と聞くと嫌いとのこと。帝国主義者だからとのこと。
レーニン像から左に回るとそこは中央公園。園内には途上国恒例の首都遊園地があるが、キルギスのそれは他の国と違ってなかなかに立派だ。観覧車を筆頭に、規模は小さいが一般的な遊園地にあるような遊具が結構揃っている。
イルミネーションも煌びやかに付いており、まるでちっちゃい豊島園だ。
なお観覧車乗りたい?と聞かれたが流石にノーだ。
帰路の途中、やっべ買物しなきゃと焦るカピさん。せっかくやので付き合う。
カートを押してあげる僕の姿はまさにできる女、新妻そのものだ。
肝心な買物だが、陳列されたトマトが傷みまくってて選別が大変そうだった。富士山が描いてあるヌードルも置かれており、SOBAとの記載。やっぱ他国で日本所縁の品を見ると嬉しくなる。レジのシステムは15年前のダイエーのような感じ。ちっちゃいコンベアで運ぶぞ。
ここで年齢の話に戻るが、学生じゃなくて社会人だと言うと、えっ20歳やのに?大学卒業よね?と言われる。
卒業したよ、と返す僕に大学四年制って聞いたのだけどと詰めてくるカピさん。
いかん、バレるぞこれは。
もしや成績悪すぎて早めに卒業させられたんか?と聞かれる。
失礼な。
咄嗟に日本の大学にはいろんなシステムがある。僕は早く卒業できるプランだ。スペシャルスチューデントなんだ、と言う。
オオッ!と驚くカピさん。そのキラキラの瞳の前に罪悪感が増える一方だ。
店を出ると外はまた大雨。キルギス雨多くね??
また傘もないのでカピさんと相合傘。
宿まで送ってくれたカピさん、ここまでも現人神っぷりを見せてくれた彼の善意はまだまだ終わらない。
「明日バスターミナルまで連れてくよ。」
本当にできた人だ。
翌朝6時。宿から出ようとするも肝心の扉が開かない。
なぜや。ガチャガチャしまくってると途中からセキュリティの感電システムが作動。ビリビリして痛い。バラエティ番組か。
20分程でようやく開錠。朝のビシュケクはめちゃくちゃ寒い。そして宿の前にはカピさん。
寒い中待たせたにも関わらず、僕の服装を見ジャケットを貸してくれる。そしてイシククルでトラブルなったらいかんでしょ?とSIMカードも買ってくれる。
SIMカード、ゲット !
もう胸どころか脳キュンである(?)
ここまで優しすぎると逆に怖い
改めてだが、本日はビシュケクから東に向かい中央アジアの真珠と呼ばれるイシククル湖へ。世界で最も古い湖の1つであり、あの三蔵法師もここに訪れたらしい。大きさは琵琶湖の9倍。
イシククル湖畔の街チョルポンアタへはビシュケクから260キロ離れており、片道4時間。今日はこの後飛行機を使うことを考えたら早く出たい。
だからこそ早起きしたのだが、ここはビシュケク。ミニバスに定時なんてものはなく、満員なり次第出発するシステム。結果8時にようやくバスターミナルを出発。
これでは実質1時間しかイシククルにいれない。ぶっちゃけビシュケク観光にシフトチェンジするべきかと思ったが、キルギスといえば自然らしいので我慢する。それに早起きしてバスターミナルまで案内してくれて、SIMカードも買ってくれたのに今更チェンジしますは流石に悪い。
12時前にチョルポンアタに到着。が、どうもバスターミナルから市街地まで数キロあるらしい。ここで完全に戦意を消失する僕。そもそも湖の反対側に見える山々を目当てに来たのに雲で見えないのだ。
市街地を諦め、近くの野外博物館へ。ここは数千年前に絵が描かれた大小様々な岩が転がっている。 吹きさらしなのによく風化しなかったなと思う。冬とかだいぶ気候ヤバイとのことだが。
岩絵を全部見ようと思ったら2時間のミニトレッキングになるらしいが、岩絵が思ったよりショボかったかので30分くらいで撤退。
どうも他の観光客にとっても微妙なのか、ドイツ?組なんか途中で諦めてピクニックを始めていた。
さて、ビシュケクへの帰還だが……。時間が間に合いそうにない。
乗合をギリギリまで粘るも人が乗る気配がなかったので泣く泣くタクシー課金。
空港までなんとまぁ50ドルである。
カピさんに今からビシュケク向かうよーと言うと、合流して空港まで見送るわ!の宣言。
貴方は本当に神さまなのか?
とは言ったものの走り出してすぐにガソリンスタンドで停車。早よ行けやと念じる僕に向かってドライバーが金を要求される。空港で払おうとするも今払えの一点張り。いやなんでやねん、と言うと
ガソリン代ないねん。
それは仕方ない。
それでは爆速キルギスドライブ開始だ。
ドライバーの名前はエルダ。ヒゲモジャの巨大なおっさんだがどうも同い年らしい(案の定僕は20歳とサバを読んだが)
エルダ、なんと時速160キロ出しながらビデオ通話するし、なんならハッパ( )をかまし出す。
ほんまにバイアスかけてやがる…
だが憎めない。途中でパンとかオレンジジュース買ってくれるし。トーキョードリフト流してくれるし。完全に餌付けされたペット状態。
タクシーは窓を下すことができるのでキルギスの風を思い切り味わうことができる。これは乗合ではできないことだ。
左右両側に万年雪を戴く4-5000級の山脈を眺めつつ爆速で谷間に敷かれた道路を突破。
ここまでスピードが出ると仮に事故っても一瞬であの世なので安心だ(違う)
それにしてもキルギスの人は日本人と似ている。中国や朝鮮系は何となく分かるがキルギスは区別が本当に付きにくい。
その見た目日本人の人々がロシア系の言語を駆り、他のスラブ系やトルコ系と談笑してる光景はなかなかに不思議なものがある。
仮に日本がソ連に占領されてたらこうなったのかも。
マッハドライブのおかげでビシュケクには4時過ぎに到着。ここでまたカピさんと合流。
50ドルも取られたわ高いわ、と愚痴るといや安いでそれ。シェアタク1人で貸し切った訳やし。
GODカピさんの言うことは全て正義。
なるほど、ごめんなさい。
だが思い出したら60ドル払ってた。これは結局相場に落ち着いたのか…?
ビシュケク市内からマナス国際空港はタクシーで1時間弱。30分と聞いていたので早めに出て良かった。空港の、出国審査まで付いてきてくれたカピさんとお別れ。
キルギス、たしかに観光地は目ぼしいがそれを補って余りあるほどの人々の優しさがある国だった。人が良い国ランキング、パレスチナと並んでトップである。
いつかまた来るよ!と言うと、次はもっと滞在しろよ!と言われる。
この交流こそ旅の醍醐味だ。
それではウズベキスタンに向かおう。