君は、伝説の紳士MMD投稿者「kuro@vov」を知っているかね?
突然だが、「kuro@vov」という人物を知っているだろうか。
彼は、紳士MMD動画投稿サイトの最大手である「Iwara」にて、伝説と言われている投稿者である。
彼のすごさを理解してもらうには、「Iwara」とは何か、「紳士MMD」とは何か、いや「MMD」とは何かから説明しなければならないだろう。少々面倒かもしれないが、以下の説明を読んでいただけるとありがたい。大体知っているという人は、読み飛ばしていただいてOKである。
まず「MMD」とは何か。
正しくは制作ソフトの名前なのだが、MMDは主に「3Dモデル」のことを指す。バーチャルYoutuberの「キズナアイ」などが、イメージとしては近い。
彼女の動きには「モーションキャプチャ」という、動きをダイレクトにモデルへと反映させる技術が使われているが、MMDはもっと古典的な方法で、モデルを動かしている。具体的には、ソフト内で実際にモデルを動かし、一つ一つの動作を指定することでモーションを作成する。また自分で作るだけでなく、他者が作ったモーションを使うこともできる。モーションの作成が大変な分、こちらの方がメジャーなやり方だ。こうしたやり方は、「流し込み」と呼ばれたりもする。
MMDで使われているモデルそのものを作ろうとすると、さらに大変なため、これも配布されているものを使うのが一般的だ。そのほかにも、ステージ背景やアクセサリ、エフェクトなども配布されている。
これらの要素(モデル、モーション、背景、アクセサリ、エフェクト等)を組み合わせて一本の動画にするのが、MMD投稿者の仕事だ。動画の内容は、曲に合わせてモデルを踊らせる「MMDダンス動画」が最も多いが、その他にもストーリー仕立ての「MMD茶番劇」などもある。今回紹介する「kuro@vov」氏は、主にMMDダンス動画を投稿していた。
MMD動画は、「Youtube」や「ニコニコ動画」といったサイトに投稿されるのが一般的だ。しかし次の「紳士MMD」というジャンルでは、少し事情が違ってくる。
次に「紳士MMD」および「Iwara」について。
紳士MMDというのは、MMD動画のうち成人向けの作品を指す。こうした作品はYoutubeやニコニコ動画にも投稿されているが、あまりに露骨なものは投稿できないため、そうした動画は別のサイトに投稿されている。その代表例となるのが、「kuro@vov」氏が動画を投稿していた「Iwara」というサイトだ。
このサイトは、R18のいわゆる「紳士MMD動画」専門の投稿サイトである。こう聞くと、なんとなくマイナーなサイトのような気がするが、投稿されている動画の中には100万PVを超えるものもあり、その人気はかなりのものだ。
以前は「ボーカロイド」「東方」「艦これ」などのジャンルが中心だったが、最近では新たに「Vtuber」の動画が増え、更なる進化を遂げている。このサイトは日本人だけでなく、外国人からの人気も高い。投稿される動画のジャンルは、ほとんど(というか全て)が日本のものであるため、実質的に「Hentai Japan」の発信地ともなっている。
投稿される動画の内容は、先ほどのMMD動画と基本的には同じだが、ダンス中に服が脱げたり、そもそも裸で踊っていたり、動画中にs◯xをするなど、少しアレンジが加えられている。
使うモデルの種類や動画の内容によって、かなり細かくジャンル分けがされているのだが、長くなるので今回は割愛する。
以上のことを踏まえて、「kuro@vov」氏の解説へと入ろう。
彼は主に、「艦これ」のモデルを使った「MMDダンス動画」を投稿していた。一応説明しておくと、「艦これ」は艦隊コレクションの略称で、歴代の戦艦を美少女化したキャラクターが特徴のスマホゲームである。
「Kuro@vov」氏の説明をする際、私が何度も過去形を使っているのは、彼がもう動画の投稿をおこなっておらず、チャンネル自体も削除しているからだ。そのため現在では、残念ながら彼の動画を見ることはできない(彼の動画の一部は別サイトに転載されている)。
クリエイターの方には本当に申し訳ないのだが、「Iwara」で質の高い動画を見つけることは、砂漠の中でコンタクトレンズを見つけるぐらい難しい。
考えられる理由としては、「R18作品への使用を許可しているモデルが少ないため、使えるモデルの種類が限られている」「3Dモデルでの性描写にそもそも限界がある(どうしても無機質さや粗さが出てしまう)」「表情や服を脱がせたりする動作の表現が難しい(モーションを自作する必要がある)」といったものが挙げられる。
「Iwara」に投稿されている動画の多くは、単に裸で踊らせているものであったり、男性のモデルとs◯xをさせているだけのものだ。これらの動画は、正直単調であまり見どころがない。
そうした動画が数多く投稿されている中、「kuro@vov」氏の動画の完成度は頭ひとつ、いやそれ以上に抜けている。
まず、彼が使っているモデルのクオリティが非常に高い。「つみだんご」様や、「ぽんぷ長」様などが配布しているモデルを使用しているのだが、身体の質感や表情などが素晴らしく、MMDにありがちな無機質さを感じさせにくくなっている。
そうしたモデルに、彼の巧みな照明の技術が加わることで、さらにリアリティのある表現になっている。試しにYoutubeで、「MMD」と検索してみてほしい。明暗がしっかりとある動画と、そうでない動画の違いはひと目でわかる。照明をつけることで、動画全体になんとなく「高級感」が出ている感じはしないだろうか。紳士MMD動画も同じで、照明のあるなしは動画のクオリティに大きく直結する。全く照明を使っていない動画も数多くある中、ここまで照明にこだわっているのは注目に値する部分だ。
彼の大きな特徴として、「ストーリー性」というものが挙げられる。単に裸で踊るだけであったり、s◯xをするだけでは、どうしてもその世界に没入することができない。「ただ3Dモデルを動かしてるだけだな」と思った瞬間に、その動画を楽しむことはできなくなってしまう。
それを回避するのが、「ストーリー性」という要素である。表情や演出などを効果的に用いることで、モデルに人間らしさを持たせることができる。服を脱ぐという行為ひとつをとっても、ただ服が消えるだけなのか、トラブルで脱げてしまうのか、恥ずかしがりながら脱ぐのかでは、受ける印象は大きく変わる。そのために必要なのが、表情や演出といった要素だ。
彼はこうした要素を効果的に使っているので、彼の動画を見ると、まるでモデルが生きているのではないかと錯覚することもある。それほどまでに、彼の表現力は傑出しているのだ。特に表情においては、今まで見てきた誰よりもクオリティが高い。
カメラワークの上手さも、彼を語る上では欠かせないものである。先に述べたとおり、モデルやモーションは既存のものを使うことが多いので、動画投稿者はカメラワークに時間を割くことが多い。言い換えれば、カメラワークの技術が投稿者の腕の見せ所となる。
カメラワークの重要性を理解してもらうためには、アイドルやバンドのライブ映像を想像してもらうと良いだろう。引きのカメラでメンバー全体を写したり、一人一人のメンバーに注目するなど、多彩なカメラワークを使っている映像が浮かぶはずだ。なぜこうしたことをするのかというと、映像に動きを出したり、映像への没入感を高めるためである。視聴者は引きのカメラで全体の雰囲気を、アップの映像で個々のメンバーの様子を知ることができる。
カメラワークを効果的に使うことで、単調さを回避したり、没入感を高めたりすることができるのだ。激しく動くカメラワークは、MMD動画における一つの風物詩となるほど多くの動画で見ることができる。カメラワークは、動画投稿者がここぞとばかりにこだわる部分なのだ。
紳士MMDの場合であれば、見えるか見えないかぎりぎりのラインを追求したり、普通では見えないところを見るといった使い方もできる。カメラワークをうまく使いこなせば、演出の幅も広げることができるのだ。
彼はこうした技術に非常に長けており、音やキャラの動きに合わせてカメラを振動させたり、下からや上からのカメラワークを使うことで、キャラの魅力を引き立てるといった技も使っている。
また、安易に挿入シーンへ逃げないというのも、個人的にはポイントが高い。紳士MMD動画を大まかに分けると、ダンスのみの動画、s◯xのみの動画、それらを組み合わせた動画の3つとなる。
組み合わせの動画ではよく、ダンスからs◯xシーンへの移行が突然行われるのだが、彼の場合はそれが自然な形で行われることが多い。MMDで前戯を表現することは難しいのだが、彼はいくつかの動画でそれをおこなっている。こうした細かい部分に対する配慮があるのも、彼の動画が魅力的な理由だ。
まあ色々語ってきたわけだが、実際に「Iwara」にアクセスし、紳士MMDがどんなものか知ってから、彼の動画を見てもらうのが一番良いだろう。ぜひ、GoogleやSafariで「Iwara」「kuro@vov」と検索してみてほしい。きっと新しい世界が開ける?はずだ。
もし有識者の方がいれば、おすすめのクリエイターを教えていただけると大変助かる。
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