好きなボカロPの良さを頑張って言語化するシリーズ 「Kai」編
不定期で続けている、「好きなボカロPの良さを頑張って言語化するシリーズ」。
ボカロPについて語るシリーズ↓
今回取り上げるのは、最高にポップ可愛いボカロPの、「Kai」です。
今まで取り上げた人とは違い、YouTubeに初めて挙げられた動画が2年前と、かなり最近のボカロPです(ニコニコはサーバーダウンで見れなかったので、正確な活動開始日はもうちょっと古いかも?)。
特徴的な音楽性
可愛いサウンドと疾走感の秘密
彼の魅力は、最初の1音目を聴けば「Kaiさんだ!」と分かるほどの、特徴的な音作りです。(性別分からないので、勝手に「彼」と呼んでいます。違ってたらごめんなさい)
いわゆる「Kawaii future bass」に近い音なのですが、一般的なKawaii future bassの音楽と比べて、かなりテンポが速いです。
Kawaii future bassの例↓
さらに、ベース音やビートより、上のピコピコとした音がよく聞こえる音作りとなっているので、それがより可愛らしさやポップさを演出しています。
そのため、「可愛いサウンド+疾走感」という、ありそうでなかった曲調となっています。だから、少し聴くだけで誰の曲か一発で分かるというわけです。
なぜ、どの曲も短いのか
もう1つの特徴は、「曲の長さが短い」ことです。
ほとんどの楽曲が、2分ちょいの長さです。
ただ、物足りないかというとそんなことはなく、曲に必要な要素が上手いことコンパクトに詰められています。
例えば、さっき紹介した「さよならプリンセス」という曲は、このような構成です。
「頭サビ→イントロ→〈Aメロ→Bメロ→サビ〉 → 〈Aメロ→Bメロ→サビ〉」
一般的な曲では、この後に「間奏→ラスサビ→アウトロ」などが含まれるのですが、この曲ではそれらがカットされています。
それより少し長い「キューピット」という曲では、
「頭サビ→イントロ→〈Aメロ→Bメロ→サビ〉→ 間奏→〈Aメロ→Bメロ→落ちサビ→ラスサビ〉」
という構成になっています。太字にした部分が、新たに追加されたパートですね。
彼の曲は、一番長いものでも「ぴったり3分」しかありません。
ではなぜ、ここまで曲を短くすることにこだわるのでしょうか?
私の推測ですが、やはり「最近のトレンドを意識している」のでしょう。
現代人は飽きっぽいので、長くてゆったりとした曲だと、途中で離れてしまうことがあります。
それを避けるために、わざと曲の長さを短くし、「美味しいところだけを詰め込んだ」楽曲にしたのではないでしょうか。
曲調のわりにテンポが速いというのも、こうしたことを意識しているのだと思います。
「印象的なワンフレーズで引き込んで、そのまま最後まで聴いてもらう」
そうした意図を、彼の楽曲からは感じます。
ボーカル部分の多さ
それに加えて、「曲に占めるボーカルの割合が多い」というのも、特徴的な部分です。
やはりこれも、間奏が長いと離れてしまう人がいるからでしょう。
ボーカルを多めに入れることで、曲のキャラクター性が伝わりやすくなります。それによって、飽きさせないようにしているのだと思います。
「キャラクターソング」という戦略
曲ごとに、オリジナルのキャラクターがいる
曲のキャラクター性つながりでいうと、1つの楽曲ごとにオリジナルのキャラクターを作り、あたかも「キャラクターソングのようにしている」ところも、彼の楽曲の注目するべき部分です。
これは、前に紹介した「DECO*27」の「マネキン」シリーズと似ています。
「マネキン」は、初音ミクの見た目をベースにして、楽曲ごとに異なるキャラクターを登場させるという、DECO*27が作った一連の動画シリーズを指す言葉です。
全ての楽曲に初音ミクを使っているところも、共通していますね。
ただ、DECO*27とは違い、彼の楽曲は完全なオリジナルキャラクターです。そうした大事な部分は、しっかりと差別化されています。
Kawaii future bassを意識したMV
彼の楽曲のMVは、「印象的な一枚絵+テキストのアニメーション(+少しのフィルター、カメラワーク)」です。
「Kawaii future bass」の楽曲の多くも、同じようなMVの構成となっているので、それを意識しているのでしょう。
「こだわったアニメーションがある方が良い」という意見もあると思いますが、「動きが少ない分印象に残りやすい」という利点があるので、個人的には良いと思います。
初音ミクの歌声
幼さを意識した調声
そして、彼の楽曲で最も特徴的なのは、「初音ミクの調声」です。
ボーカルに注目して聴いてみてください↓
一度聴いただけでは、この声が「初音ミク」だとは分からないのではないでしょうか。
それぐらい、独特な調声というか、かなり高周波に設定されています。
あえて言語化するなら、「幼めの初音ミク」といった感じでしょうか。
こうした初音ミクの声も、彼の楽曲を独特でかわいらしくさせる要素の1つとなっています。
ちなみに、彼に近い調声や楽曲を作っている人に、「picco」がいます。
彼の楽曲は、Kaiに比べるとかなり「Kawaii future bass」の要素が強めですが、同じようにポップで可愛い楽曲が多いので、ぜひ聴いてみてください。
Kaiの世界観について
なぜ難しめのモチーフが登場するのか
最後に、Kaiの楽曲の世界観について、少しだけ話させてください。
彼の楽曲のタイトルと元ネタ?を、一部紹介します。
「さよならプリンセス」 → シンデレラが元ネタ
「カグヤ」 → かぐや姫が元ネタ
「ラプラスショコラ」 → ラプラスの悪魔が元ネタ
このように、多くの楽曲で童話や科学といった、少しお堅めのテーマが登場します。
こうしたテーマを全て、「可愛い女の子の内面や恋の歌」に翻訳してしまうところが、彼のすごさです。
あえて少し難しめのモチーフを入れることで、文学性やポップさ(難しいモチーフを、内面や恋に当てはめる)を演出しているのでしょう。
書下ろし楽曲の紹介
ちなみに、彼のチャンネルに投稿されている曲は現在10曲しかありませんが、他のチャンネルに書き下ろした楽曲がいくつかあります。
どちらも素晴らしいので、こちらもぜひ聴いてみてください。
以上です!