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念願叶ってバースデープレート。

「誕生日プレゼント何がいい?」

私はこの質問が少し苦手である。

なんでもいいのだ。物欲が無いというわけでは無い。自分が欲しいものを、例えば鞄が欲しい!と思って肩掛けの鞄が欲しいとリクエストしたとしよう。
私がイメージしていたのは合皮の鞄だったのに、実際に選んでくれたのはキャンバス地の鞄だと、嬉しいのに喜びきれないから。
初めからリクエストしないで、選んでくれたものなら素直に喜べるのに。だから人間は面倒臭い。

あとは、私は人にプレゼントを選ぶ時間が好きだからというのもある。

本とか、アクセサリーとか雑貨とか。その人のことを考えて選ぶ時間が好きだから。
貰ったときにどういうふうに考えてこれを選んだのか思う時間が好きだから。

といったわけでここ2、3年は何が欲しい?と聞かれても、「お菓子!」とか「あなたが好きな本」とか答えてきた。

そんな私が密かに欲しいと思っていたが、欲しいと言えなかったものが2つある。
それがバースデープレートと東京會舘での食事である。

あまり友達の多い方では無い私は、SNSでバースデープレートを使って祝われている知り合いを見るたびに、羨ましくなり、憧れていた。
しかし、困ったことにバースデープレートを自分で頼むのは少しばかり、いやかなりしんどいものがある。

そして、東京會舘。
高校生の時、その頃のTwitterのフォロワーさんに教えてもらった辻村深月さんの『東京會舘とわたし』という小説を読んでから、私はこの場所に行ってみたくて堪らなかった。
文庫版の表紙にもなってるシャンデリアも見てみたかったし、マロンシャンテリーも、舌平目の洋酒蒸 ボンファムも、ダブルコンソメスープも、お土産のパピヨンも食べてみたかった。

日比谷周辺に行くことが多かった高校時代、いつも遠くからあれが東京會舘かぁ。と眺めているだけでワクワクしていたしときめいていた。

大人のみなさんはご存知かも知れないが、今私が上に挙げたものを全て食べようと思うとまぁまぁいいお値段がするのだ。
そしてまた、ここも1人で行くようなところではない。

大人になったら。そう思い続けていたが、気がついたら分類上大人になっていた。

はたちになった朝、父から「今年の誕生日は何が欲しいの?」と聞かれた時「東京會舘でご飯が食べたい」と答えてみた。
多分叶えてくれると思いながら、答えを待つと
「いいよ。レストランを決めておいて」と言われた。

ん?これはまさか私が予約する流れ、?

予想は的中。
結果的に私は自分で自分のバースデープレートを予約した。
ネット予約にしてよかった。
電話だったら恥ずかしすぎて、あんなに飲みたかったコンソメスープも諦めていたかもしれない。

こうして家族で出かけた東京會舘でのランチ。
ディナーくらいのお値段した。
びっくり。

そして、物凄く幸せな時間だった。

スパークリング飲みながら、大人になったことを噛み締めた。

また来たい。

また来れるように、大人を頑張ろう。

羞恥に耐えながら、文字を指定したバースデープレート

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