初心
人は、慣れると忘れてしまう生き物だ。
大切だったことも心が踊るあの感覚も
何に惹かれていたのかということも。
気づけば、
何となく聴き流すようになっていた。
大切でたまらなかった
こんなに救ってくれる音楽があるんだと
あのとき感じた感覚。
私は、離れるべきだと思った。
だからなのかもしれない。
大切だったあの音楽も
泣いてしまうほど惹かれたあの曲も
心做しか、響かなくなってしまったような
そんな気がした。
泣くことが全てではないし
それだけで価値なんて計れないけど
曲をライブを見て泣かなくなった。
なんだか、聞き分けのいい顔をして
聴いているような気がした。
それは、誰かが悪いとかではなくて
私の"慣れ"みたいなものがあるのかと思った。
私は、ライブに行くときに
何か必ずひとつ持ち帰りたいと思って
いつも救われに行っていた。
最近は、悩むことも少なくなったから
そういう感情で見なくなったのかもしれないけど
今まで、一つ一つ覚えていたMCも
聴き逃さなかった新曲のメロディーも
覚えられなくなっていた。
ただ、楽しいみたいな
まるで聞き分けのいいような大人のふりをした
そんなライブばっかりだった。
ライブは、色んな捉え方があるし
バカ騒ぎするのもライブ
静かにひとりで聴き浸るのもライブ
誰かと寄り添って聴くのもライブ
色んな形があっていい。
でも、最近のわたしは
ライブに行く意味がわからなくなってしまった。
楽しい、居場所がそこにあるから。
そんな感情だけでライブに行っているような気がした。
きっと、別に悪いことじゃない。
でも、みんなが大きくなるたびに
私は何をしているんだなんて思ってしまう。
焦燥感に駆られる。
何のために、ここに来たのか。
何のために、全てを捨ててきたのか。
何もかも、
忘れてしまっていたような気がした。
そんな気持ちになって
ふと、また彼らの曲を聴いている。
あの頃と変わらないメロディーと歌詞は
すっかり、響かなくなっていた。
わたしが成長できた証だ。
もう、離れるべきなのかもしれない。
もう、卒業するべきなのかもしれない。
わたしは、人生の章をまたひとつ
跨ごうとしている。
ここを進んだ先に何があるのかわからない。
何もないかもしれない。
それでも、ここにいては行けない気がした。
もう、進まないといけない気がした。
3月いっぱいで、彼らを卒業する。
彼らには彼らの、
私にはわたしの未来があって
もう交わることはないのかもしれないけれど
それでも、彼らと過ごしたこの1年を
わたしは力にして、また前に進む。
今までありがとう。
たくさんの思い出をくれて。
たくさんの想いを届けてくれて。
この気持ちを忘れないで
綺麗な記憶のまま、サヨナラをしよう。
ありがとう。
遠くに行っても、離れた場所でも
同じ空の下で
それぞれの人生を歩んでいこうね。
ありがとう。
また、いつか。
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