2019/8/24『FLASH VOCALOID Vol.2』: DJデビューを終えて
サムネイルの画像はこにたん(@konitan_924)さんに撮っていただきました。素敵な写真、誠にありがとうございます。
はじめましての方ははじめまして。普段はボカロ曲を聴いたりお話(一次創作)を書いたりして過ごしている海鮮焼きそばと言います。
■緊張しっぱなしだったなという話
ボーカロイド楽曲がメインでかかるクラブイベント、略称『ボカクラ』に行き始めて2年と数か月。ボカクラに行く中でDJの方々の選曲や技術や楽しそうにプレイされる様子に憧れ、自分でもやりたいと思ってPC用のDJコントローラーを手にしてから1年半。ちょこちょこおうちでDJを楽しんだり、イベントの公募に5回くらい出して全部落ちたりはしていました。ですが、人前でDJをしたのはおととい、2019年8月24日に名古屋で開催された灯辻(@s1eeping_sheep)さん主催のボカクラ、『FLASH VOCALOID Vol.2』(#フラボカ)が初めてです。
ボカロ曲を聴いている中で、twitter上で交流を持つようになった方々。フラボカは、そういう人たちが同じ出演者の中に多くおられるイベントでした。
(本当はボカクラに行くようになったきっかけからこうして壇上に立つまでの経緯を書いていたのですが、めっさ長くなったので泣く泣く削りました。それだけで2500字使うわけにはいかないんじゃ)
そんな環境でも、どうしようもなく緊張して。演劇をやっているというのに、人前に立つことも知らない人が大勢いる空間も苦手です。知り合いの方もいるけど、お客さんにはそうじゃない人がいっぱいいる。パフォーマンス的にも不安でした。セットリストを作って練習してても、頻繁にミスが出る。流れに乗って音楽が止まらない空間では、ちょっとのミスでもお客さんの集中を途切れさせてしまうんじゃないか。
まずは自分が楽しむようにしよう。そう思っていても、不安で仕方ありませんでした。なにしろ初めての経験です。フラボカ前にあったカラオケ会でも、設営が終わってイベントが始まっても、心がぎゅっとなっている。まだお客さんの気持ちが抜けない。私は3番手。それより前の手番のDJさんお二人〈てむら(@temura_vit)さん、灯辻さん〉に聴き入ることで落ち着こうとしました。ふわっふわなソファにあったふわっふわなクッションも、リラックスするのに一役買ってくれました。
とはいえ、いざDJブースに入ると硬くなってしまって。足もがっくがくで。大丈夫かなって気持ちが残っている。でも、ちゃんとお客さんのほうを向いて、しっかり一礼して(したはず)、1曲目の再生ボタンを押しました。
だって、大切な曲だけを揃えてきたんだから。つなぎ方なんかも精一杯考えてやってきたんだから。そこだけは自信がありました。
デビュー戦とはいえイベントの中の一演者、何番手かとか他の方がやることとの兼ね合いとか、どういう曲で受け渡すかとかも考えなきゃ。そういうことをぐるぐる考えていた私に、「1度しかないデビュー戦なんだから好きにやっちゃっていいんですよ!」とおっしゃってくれた方は、おひとりだけではありませんでした。
その言葉に背中を押され、この曲をかけたいという気持ちに正直になって選んだ23曲が少し下の画像になります。私の愛と情熱のかたまりです。凝縮しまくった結果、休ませる気がみじんもない上に攻撃力高い感じになってました。私は、ロックとキャッチーな歌もののクラブミュージックを特に愛しています。
フラボカは「ボーカロイドこじらせオタク動物園」的なボカクラと謳っており、実際そういうイベントでございました。DJさん各々の個性と「こういうのやりたいんじゃ!」という方向性がとってもはっきりしていて。お客さんはそのすべてをしっかり受け止めて何らかの反応を返して。ただ私はこじらせるってどんな感じかなあと考えた結果、自分の大好きな楽曲をがっつり詰め込めば自然とそういうのが出てくるかなと思って、そこまで追及しなかったところがあります……
未だに「こじらせオタク」的なDJについてはなんとなく感覚はつかめたかな、程度なんですが、少なくとも無理してひねり出すものではない気がします。自分の内側からにじみ出てくるものかなって。そんなことも考えながら、自然体で選びました。
再現mixはこちらです。もしよければ、そちらを聞きながらこのnoteを読んでいただけると嬉しいです。
■セットリスト紹介と、DJ中の私のこと
1.ウミユリ海底譚/n-buna feat.初音ミク BPM240
1曲目は、今まで聴いてきた中で一番好きな曲(オールマイベスト)にしようと、最初から決めていました。自己紹介がしたかったんです。そう思うと、自然とこの曲が出てきました。
ボカロ曲を聴き始めてからしばらくはずっとyoutubeで聴いていて、ニコ動を使い始めてからもカテゴリランキングは見たことがなくて。初めてカテゴリランキング(この場合はVOCALOID)を見たときの日間1位がこの曲でした。1位の曲知らないから聴いてみよう、それくらいの気持ちで聴いたら……とっても好きになりました。
震え声だけど聴きやすくて語尾がかわいいミクさん。サビの1フレーズからつながって勢いよく入る、シンセサイザーの音が印象的な耳に残るイントロ、いろんな色彩の青が映えるMV……細かい点まで全部書き出してたらきりがないくらい、好きが詰まった曲です。
なおその時の私『ええーっ始まってるよ!いや始めたの私なんだけど!(動揺)』
2.アフターナイト ワンダーランド/ryt(糞田舎P) feat.初音ミク BPM240
おしゃれな曲が好きです。カッコいい曲が好きです。両方備わっている曲はが、好きじゃないわけがない。というわけでこの曲です。どこか怪しげな案内人然とした、ざらついた低音のミクさんが、サビで仮面を捨てて高らかに歌う様。あの解放感が好みど真ん中。
だからサビは特に盛り上げられたらいいなあと思ったんですが、たぶん序盤はほとんど前向けていなかったと思います。とにかく繋ぎ失敗したくないなあという気持ちでいっぱいでした。余裕がない。
3.レテノール/R sound design teat.初音ミク BPM120
ここでBPM半分にしてもっとおしゃれに寄りました。あと4つ打ちにしました。夜の都会っぽいおしゃれ曲といえばこの人、みたいなところある。と思っています。これ聴くと踊り出したくなりますね。激しい感じよりかはゆったりと大きな動きで、舞踏会みたいな。ちょっと高級な空間で聴きたい1曲です。
4.現世巡り/羽生まゐご feat.flower (アルバム「浮世巡り」収録曲、リンクはAmazonの購入ページです) BPM120
荘厳な和風フューチャーハウス。ドロップ(EDMとかハウスとかにおけるサビ的なの、説明が難しいなあ……とりあえず盛り上がるとこです)好きすぎる。1番の時点で盛り上がるのに、2番のドロップは途中でブレイク(?)が入った後にミクさんの「は、は、いやは、いやは、いやはは」ってコーラスが入ってもっとアガります。2番まで流すしかなかった。この曲に限らず、その曲の中でも特に好きなパート、聴いてほしいパートは極力流すようにしました。
5.敵意の坩堝/やなが みゆき feat.初音ミク BPM120
トロピカルハウスです。ところどころ混じるノイズと、温かみのある音。この曲はできれば最後まで流したかったんですけど、尺の都合で無理でした……溜めと爆発、そして象徴的なフレーズを一番印象的なところで持ってくる気持ちよさが味わえます。歌詞も好き。さみしさに寄り添ってくれる唄。
序盤、ミックスの際に曲を切る(音量を0にする)のに苦戦して、前の曲がやたら残りがちになってました。たぶんこの曲から次に切り替えるときも。フェーダー(音量調整するやつ)2種類ともちゃんと落としたはずなのになぜかまだうっすら聞こえる現象が起きて。落としきれてなかっただけなんでしょうがわかんないです。かなり慌ててました。
6.リセットゲーム/あらぴょん feat.初音ミク BPM128
大好きな曲ばかりを集めた今回の中でも、ひときわ聴いてほしかった曲です。よろしくお願いします。
VOCALOIDと歌ってみたで爽やかなフューチャーハウス。突き抜けるポップさ。郷愁と未来。そんな曲です。もうすぐ1000再生とはいえまだ3桁、なんで……?と思っています。だからあの場で布教をしました。
どうしても流したかったから作曲者様に使用許可をいただけないかメールしたところ、とても喜んでいただけて、CD規格の高音質な音源を提供してくださいました。この場をお借りして、改めて感謝の意を表します。
この曲あたりまでは、ずっと顔がこわばっていたように思います。でも、この曲は特にフロアの皆さんに届けたかったので、前を向きました。お客さんをあおる……とこまではたぶんいけなかったんですが、身体を動かすように意識しました。好きが伝わっていたらいいなあ。
正直に言って、お客さんの中でこの曲を知っていた方は多くないと思います。でも、たくさんの方が楽しそうにされていました。ステップを踏んでいる方も多くいました。
DJ始めてよかったなあと、心の底から思いました。
7.ルナ/ねこめP feat.初音ミク,IA BPM128
好きな曲流すのたのし~!語感と掛け合いがめっさ気持ちいい、軽やかに跳ねるハウスです。この曲も作曲者様に使用許可をいただきました。誠に感謝いたします。
この曲あたりで手拍子が起きた気がする。たぶんお客さんの中から自然発生した感じで、自分はそれに便乗するみたいになってしまったと思うんですけど、なんだかとても嬉しかったです。こういうの自分からあおれたらカッコいいだろうなあ。照れくささが勝っちゃう。
8.スーパーヒーロー/Guiano feat.IA BPM132
イントロから強い、アクセントにアコギの音が効いたトロピカルハウス(?)。ぴょんぴょんしたくなりますね。ここは常夏。
この辺ではもうだいぶ楽しくなってきて緊張が抜けてきたので、リズムに乗って妙な動きをしていたと思います。お客さんを楽しむためにも、まず自分が楽しんでいるところを出さないと……というのもありましたが、単純に気分が乗っただけですね。えへへ。
9.最後の晩餐/MISUMi feat.flower BPM132
エレクトロスウィングが大好きなのでやりました。さっきも書きましたが、おしゃれでカッコよくて踊れる曲がお気に入りになりやすい傾向があります。この曲はピアノが強めで洒脱な雰囲気です。おしゃれピアノはいいぞ。エレピとオルガンもいいぞ。
緊張が和らいできてたんですが、この曲につなぐときに盛大にやらかして頭の中が半分パニックでした。たしか操作間違えてスーパーヒーローがイントロに戻ってしまったような記憶があります。この2曲キーもBPMも同じなのでつなぎやすいし、練習の時は失敗してなかったので余計に。そういう顔を見せたくはなかったので死ぬ気で落ち着きました。なんだこの表現。
10.プロトディスコ/ぬゆり feat.flower BPM140
おしゃれでカッコよくて踊れる曲です。書いてる途中で力尽きてきたのもありますが、好きすぎて語れないみたいなところがある。ひとつだけ言うと、間奏がとっても好きです。特に「らったらら~」のとこの後半でドラムとかがイントロのそれになるところ。
イントロ1音目から"デェン!!"って感じなのでカットイン(一気に曲を切り替えること)で入れて最初からクライマックスしようと思いました。10曲目ですけど。この曲のときに「おまえめっちゃ攻めるじゃん」ってつぶやいている方が複数おられて「そうなんだー」ってなりました。どうも無自覚系DJです。ただただ好きな曲を繋いだだけの。
11.インターネッツ・ディスコ/buzzG feat.初音ミク,音街ウナ BPM138
ディスコつなぎです。ディスコではない。そちらはほくしか(@hoxy_9)さんがかけておられましたね。シガレットほんと好き。世の中と自分自身を見下している、皮肉っぽい曲つなぎでもあります。
この曲はAメロが特に好き。早口だけどリズミカルなのが好みぶっ刺さりって感じです(上述のルナとかもそう)。あと歪んだギターがぎゅいんぎゅいんしてるのはやっぱりめっさカッコいいんですよ。馬鹿になって踊りましょう。
DJのほうでは、これがやりたかった。どういうことかは、再現mixを聴いていただければ一発で分かると思います。これがやりたかっただけということは当然ないですが、プロトディスコ→インターネッツ・ディスコは、DJコントローラーを手にする前からやってみたいと思っていた渾身の繋ぎです。大ネタです。どっちのコーラスも好きなので両方活かしたくてこうなりました。特にこの曲。ボーカロイドと人間が一緒にコーラスしてるの、いいですよね。
12.怪盗黒猫シャノアール/yukkedoluce feat.GUMI BPM152
がっつりロックな地帯です。この方の曲では割と異色なほうかなとも思いますが、最高にスタイリッシュな物語音楽。曲も映像もストーリーにばっちりあってていいなあってなります。そもそも単純に曲が好き。
尺の都合上、イントロの後は2番に飛ぶか迷いましたが、物語音楽なのでぶつ切りにするのはなあということでイントロから2番後の間奏まで切らずに流しました。間奏の無音、曲切り替えるのに使いやすいんですけどやっぱり最後まで流したかったね。
このあたり、というか全体的にお客さんの反応がどんな感じだったかあまり覚えてない……本当にすみません。いっぱいいっぱいでした。
13.夜顔の告白/samayuzame×ぴぼ feat.暗鳴ニュイ BPM156
この曲もおしゃれロックですがシリアス度が強め。ニュイちゃんこういう曲合うなあ。イントロのころころ(?)したピアノいいよね。Bメロ後半のサビに向けて準備運動するみたいなストリングスとかも好き。私のたとえ、半分くらい伝わってないと思いますがご容赦を。
この曲知らなかったんだけどすごく気になったからあとで聴くね!とDJ後におっしゃってくれた方がいて、DJって布教活動でもあるな、たのしいなと思いました。私の「好き」が誰かに刺さって、その人の「好き」に新しく加われるなら、こんなうれしいことはないです。
14.センチメンタルハートボーイ/PSYQUI feat.such(アルバム「innocent」収録曲、リンクは発売レーベルのオンラインストアです) BPM160
唐突に人間の曲です。最近PSYQUIさんの曲に出会ってマイブームなのでかけました。この方の曲、音だけでなく歌メロもしっかりキャッチーで自分好み。この曲はギターがファンキーなロックですが、サビでエレクトロみたいなキックと派手かわいいシンセサイザーが入ってクラブミュージックっぽくなります。それに唐突感がまったくなくて自然に盛り上がるのがとっても好き。今回の私のDJみたいですね、その2つを往復するの。
今までずっとボカロだったところに急に人間の曲が入ってもさらっと受け入れていただけたように、私からは見えました。うれしいなあとなっています。
15.恋とポップカルチャー/ぽて feat.鏡音リン BPM163
フューチャーベースっぽいピコピコポップスです。いろんな種類のSEが入っててにぎやかで好き。ぽてさんの曲、曲調や雰囲気は違ってもいつも平和な可愛さがある気がします。癒されて前向きになれる。
この曲のとき、ちょっとテンションが高かった気がします。曲がめっさいいしサビは跳ねたくなります。ぴょんぴょんしてました。
16.Fancy girl/Tekalu feat.重音テト BPM180
kawaii future bass × テクノポップな感じの1曲。高揚感がすさまじい。テトさんかわいい。この曲でフューチャーベースというジャンルに出会って好きになった、思い出の曲だったりします。
17.ウィスパーミント/椎谷ユウ feat.初音ミク BPM180
最近の推し曲です。フューチャーベースっぽい音が少し入った爽やかロック。曲の軽やかポップさとは裏腹に歌詞は反骨精神たっぷりでカッコいいんですよね。もちろん曲もめっさカッコいい。
際限なんて知らない
境界はいらない
天才だって転ぶもんです
(piaproより歌詞引用)
ここ本当に好き。めっさ気風がよくて強いこと言った後の「天才だって転ぶもんです」のギャップ。
この曲、8月頭にKARENTからミクさん12周年記念で配信されました。そのとき絶賛セットリスト考えてる最中で、大好きなこの曲の音源が出たと聞いて、即購入してフラボカで流すことに決めました。ありがとうKARENT。
18.アクイラ/ケダルイ feat.IA BPM180
さっきのウィスパーミントもそうですが、爽やかなギターロックがとっても好きです。夏っぽいのも、青春っぽいのも、それ以外のも、全部。特にこの曲みたいな、ほぼロックバンド編成(ギター・ベース・ドラム)のみで奏でられる曲が好みで。シンプルなバンドサウンドからここまでの爽やかさが出るの、すごいなあと思って聴いています。あとこの曲、歌詞もめっさまっすぐでいいんですよね。
勢いあるギターソロとそれに乗るIAさんのコーラスが好きなので、2番までかけました。
19.蒼い蝶/蒼月エリ(作詞作曲:周防パトラ) BPM182
蒼月エリというVtuberがいました。いましたということで、もう引退してしまったんですけどね。
Vtuber沼に浸かり始めた本当に最初のころ、去年の10月頭に知ったのが、エリさんがいたHoneyStrap(略称:ハニスト)というVtuberグループです。ただ、私はハニストの中でも堰代ミコちゃんを主に見ていて、エリさんのことはハニストの全員コラボなどでたまに見る程度でした。歌が上手いというのは知っていましたけど。
(単純に曲がめっさいいので聴いて……)
サムネ一番左の子が蒼月エリさんです。この曲が投稿されて、彼女の歌に惹かれました。てらいのないまっすぐな圧と綺麗さを備えた声。確かな歌唱力。彼女を少しずつ追うようになりました。ちょくちょくやっていたアコギ弾き語り枠、好きだったなあ。
(エリさんはリンちゃんパート)
声や歌い方の幅も広いんですよね……彼女のチャンネルの動画は全て削除されているため、フル尺でしっかり聴ける音源をほぼ紹介できないのがもどかしいですが、これをお聴きいただくと片鱗が見えるのではないでしょうか。姐さんです。
そんな彼女のソロ曲が、蒼い蝶です。作詞作曲は同じハニストの実質的リーダー格、周防パトラ(彼女はASMR配信が特に評判で、フォロワーさんにも愛好家がけっこうおられます)。パトラはフューチャーベースの影響を受けたポップでかわいい曲をつくることが多い印象だったので、昨年末に行われたcount0というVRライブでこの曲が初披露されたときはびっくりしました。この曲はトランペット(かなあ、とにかく管楽器)が印象的なロックなんです。
それが、蒼月エリという歌姫にとっても合っていた。彼女の歌声が持つ、力強さと透明感と自然な色気。すべてが活かされていました。
蒼い羽根を揺らして
この声で浮かんでいる
1番サビ頭のここが、歌詞も歌い方もメロディも全部好き。中でも揺らし『て』のロングトーンの力強さ。
ガラスの額縁で守られた大事に守られたここから、飛び出したい。そういう歌です。歌い方からもその思いの強さが伝わってくるようで。そして今年の5月、彼女は本当に飛び立ちました。Vtuberというステージから。
音楽を好きで聴いていれば、何かの形でまた彼女と出会えるんじゃないかな。そういう不確かな予感が、心のすみっこで息をしています。
……個別記事でやれ(正気に戻った)
蒼月エリさんを推しているフォロワーさんがフラボカにいらしていて。この曲をかけたとき最前に出てこられたのを見て、なぜだかとても満ち足りた気分になったんです。心から嬉しそうな顔をされていたのは、ブース越しでもはっきりと見えました。
20.ひとりぼっちのユーエフオー/ピノキオP feat.初音ミク BPM183
(このときはまだピノキオ『ピー』名義ではなかったのでこっち表記です)
聴くと高確率で泣きそうになるんですよね。イントロから強すぎる。奔流って感じの曲です。心の深めなところを感情で殴ってくるような。
忘れたくないですね、何もかも。そういう意図でこの曲を持ってきたわけではないのですが、偶然つながってしまいました。
これまたフォロワーさんにこの曲が大好きな方がいて。そのことは知っていたけど、狙い撃ちしようとしたわけではない。同じく偶然です。今回そういうケースが多いです。自分の大好きを詰め込んだら、たまたまそこにいる誰かの大好きだったっていう。
あるいは、これを機に大好きになってもらえるかもしれない、というパターンもあります。「これ全然知らないけどいい曲だな!」というつぶやきを、私のターン中に多く見かけました。本当にありがたいことです。
21.共感覚おばけ/ねこぼーろ feat.初音ミク BPM184
自然に身体が動き出す大好きなジャンル、ドラムンベースで締めたかったのでこういう方向に行きました。ノイズっぽい音が入った、これまたエモさとメロディや音の強さで押し流すような一曲です。(エモいという言葉、便利でつい頼ってしまいそうになるので意識してあまり使わないようにしていますが)
一番歓声が上がったの、この曲なのかな。やっぱりなかなか前を見れなかったけれど、ここからドラムンベースステップというステップを踏む人がたくさんいてびっくりしました。名古屋のボカクラはステップを踏む人が多いそうで、というか自分が何回か行ったときもそうでした。壮観でした。それも、踏まなきゃいけない雰囲気だからとかじゃなくて、自分が踏みたいから。かかっている音が好きだ、このリズムに乗りたいと思った、そういう感情を昇華する手段のひとつとしてやっている。そういう人が多いように感じました。私もそうです。そして、踏むという手段を取ってはいない方も、各々の方法で楽しんでいただいている。
それが、自分のDJでも起こるなんて。単純にこの曲とドラムンベースが好きだからかけたのでびっくりするとともに、ちょっと泣きかけました。自分も一緒にステップしたかったです。この曲のとき少しやろうとしましたが、DJブースって狭いものなので無理でしたね。でもそうしたくなるくらい楽しくて、気分が乗っていて。本当の意味で目が開きました。
22.カルデネ(Jun Kuroda Remix)/はるまきごはん feat.初音ミク(Remix:Jun Kuroda) BPM185
Remixとは既存の楽曲をアレンジし、再構成すること。大きく印象やジャンルを変えて新鮮に楽しむものもあれば、原曲の雰囲気や要素を残しなどた上でリミキサーさんなりの色を加えるものもあり。いずれにしても大変よいものです。そしてこのRemixは、両方です。激しいも儚いオルタナティブロックを、きらきらと宇宙的でおしゃれなドラムンベースに。はるまきごはんさんの原曲から大きく変えつつも、胸を締め付けるような壮大さと、どこか感じる優しさは受け継いでいる。少し大げさでありふれた表現を使うなら、奇跡みたいだ。ボカロ曲のRemixの中でも、トップクラスに好きな曲です。
この曲の途中、静かになるところでMCのようなものを入れました。
「次で最後の曲です。よろしくお願いします」
これだけなのでMCと呼んでいいかもわかりませんが、期待させたかった。この流れで、このいい曲から、どういうフィナーレにするのか。そう思っていただけたらいいなあと思って。できるだけ曲を邪魔しないようにひとことだけ。
だって〆に、それだけ大好きな曲を用意したんだから。
23.夢のまにまに/椎名もた(ぽわぽわP) feat.初音ミク BPM190
(書きたいことはあるから、久しぶりにブログ更新しなきゃ……)
椎名もたさんが亡くなってからその魅力に気づいたことが、かなり負い目になっている。そういう話を、以前書きました。今もそういう気持ちはちょっとだけあります。でも、もうだいぶ肩の荷が下りました。
私は、椎名もたさんの曲が好きです。
今回流した『夢のまにまに』。上のブログ内で名前を出させていただいた茄箱(@nabanaba47)さんの大事にされている曲で、この方から知りました。もたさんの曲の中でも一二を争うくらいのお気に入りで、大事な曲です。
また好きすぎて語れないパターンですが、がんばって好きなところ言います。まずはイントロ。最初、主旋律奏でてる楽器、なんなんでしょうね。とにかく、その楽器とリズム刻んでるパーカッションが柔らかな朝を演出します。そしてPVで蝶(か蛾)が止まると同時に、曲も映像も一気に広がって鮮やかになる。その感覚がとっても好きです。そしてドラムンベースになり、メインのリフ(繰り返されるフレーズ)が始まる。
ねえ、きっと彼は罪を犯した。
はっとなる歌詞で始まるAメロ。フィルターのかかった音がするBメロで少しずつ盛り上がり、ドラムパターンも一瞬変わったりします。そしてサビ前に少しのタメがあって、一瞬世界が止まったような気になって。
それがサビで解放されます。全体的にとても気持ちいい曲で、キャッチーで。繰り返し広がっていく『きみは』の波に揺られている。
間奏→Cメロときます。Cメロ後半で二回歌われる「君が見ていた夢は」まではリバーブが強めで浸透していくようだけど、最後の「君が見ていた夢は」だけリバーブが取り払われてストレートに届いてくるところがとっても好き。そのあとBメロに行って、急き立てる激しい音のあと、ふっと息を吸って。すべての音が消えて。
爆発するように、ラスサビに入ります。こういうカタルシスがとっても美しい。最後は「ずっと」を繰り返しながら、だんだんと音が減っていって、最後はバツっとノイズ音で終わる。
張り詰めた雰囲気でありながら、美しさとどこか感じる人懐っこさ、または暖かみ。起伏のしっかりした曲調。締めつけてくる歌詞。色彩とモノクロの使い分けが印象的で、常世と幽世のすき間のような映像。どれをとっても、大好きです。
カルデネ(Jun Kuroda remix)の、落ち着いた夜空の中にきらめく星々のような落ちサビ+間奏に、イントロを合わせて。一番長く、じっくりとミックスしました。どちらにも浸ってほしくて、慎重に。届いていたならいいなあ。繋いだあとは、最後の曲かつフルで流したので特にコントローラーなどをいじる必要がなくて。全力で、お客さんと一緒に楽しみました。ラスサビとその前とか、特に。やりきったと思います。
初めてのDJは、あっという間に終わりを迎えました。
■あの40分間を終えて
ここでは詳細を書きませんが、ミスは多々あって。また、主に機材や出ている音の調整については、他の出演者の方々にたくさん助けていただきました。自分ではうまくいかないときには、今後もほかの方の手をお借りすることがあると思います。でもやっぱり、自分自身もちゃんと成長していきたい。その必要を感じるデビュー戦ではありました。
でも、それ以上に満足しています。あの場所で、あの人たち(出演者さんもお客さんも)と、大好きで仕方ない数々の曲で、あのようなDJができたこと。
「これが私の大好きな曲たちで、これが私だ。よろしくお願いします!」
そんなDJができましたし、これからも許される範囲でそういう風にありたいと思っています。初めてのDJというのは、当然一度きりしかありません。その貴重な舞台でやりたかったことを、全力でやりきりました。
改めてセトリを振り返ると、ロックと歌ものクラブミュージックの間を永遠に反復横跳びしています。詰め込みの極みです。そしてずっと最高火力。
自分の大好きを詰め込むこと以外、今回はすべて放棄しました。やりたい放題です。でも環境と周りの方々が、それを許してくれました(最低限の流れだけは整えたつもりでいますが)。
曲紹介の中でもしばしば触れましたが、プレイ前からの不安や緊張は少しずつ解けていきました。私のDJでお客さんが楽しんでくださっていることが分かったから。twitterのハッシュタグに集まったつぶやき。大音量の中聴こえてくる声。お客さんの動きと表情……は必死すぎてあまり見れなかったんですけど、それでもふと目に映るそれらは、私の心を落ち着かせて、いきいきとさせるには十二分でした。
DJは楽しい。改めてそれを実感して、満たされました。他の出演者の方も、本当にいいDJやVJをされていて、お客さんも心から楽しんでいる。素敵な音に包まれた、夢のようなひとときでした。
反面、DJとしては満足できなくなったというか。今回やりたいことは全部出し尽くしましたが、ほかにもやってみたいことと大好きな曲はいっぱいあって。やる気もあふれてきて。こんなに楽しくて、みんなを楽しませられること。たった一度で終わらせたくない。気力のある限り続けたい。そう思いました。
それ以外にも、今回名古屋に遠征する中で、DJを続けるんだと心に誓った出来事があって。続けるために、いっそう努力します。出てみたいと思ったイベントの公募に出したり、定期的に趣味でDJmixを録って上げたり。練習や勉強もいっぱいします。
これからに、繋げたいから。
またどこかのイベントで見かける機会がありましたら、その時はなにとぞよろしくお願いいたします。自分でも精一杯楽しみつつ、100%で向き合いますので。
最後に『FLASH VOCALOID』主催の灯辻さん、副主催のあしたの(@ashitano)さん、今回共演させていただいたDJ・VJの皆様、来てくださったお客様、そして、このnoteを読んでくださったすべての方に、心よりの御礼を申し上げます。