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2015/8/23 7年前、初めて小説を書いた日のわたしへ。

あるいは『この命を響かせたいと思ったのだ/椎乃味醂(Vocal:裏命)』感想を交えた長い自分語り


 はじめましての方ははじめまして。海鮮焼きそばです。趣味物書きをするときは基本的に田面類たづらるいを名乗っています。成人向けのお話を書くときはまた別の名前があり、ややこしい。

わたしの7年間

 初めて物語を書いてweb上に投稿してから7年が経ちました。7年です。作家になりたい!という強い気持ちもなければこういうお話が書きたい!もあまりはっきりしないまま、思い浮かんだネタをただ書き殴る生き方が、なぜか7年も続いている。続けられている。褒めるべきところはちゃんと自分を褒めてあげような。
 初めてお話を書いた日のことはあまり覚えてないんですけど。なぜか小説を書きたくなって、使いかけで放置されていた日本史のノートを創作メモに使ったこと。書きたい欲が爆発した結果、塾の夏期講習の細か~い休み時間にすら書いていたこと。このふたつは、はっきり覚えています。

 構想開始から1話目を書き上げるまで、その日のうちに突っ走ったわたしは。
 
 2015年8月23日。
 初めて小説を書き、web上に投稿しました。


 それから長い時間が経って。

 2022年8月23日。
 初めて、わたしの作品の載った本が本屋さんに並びました。

 こちらです。『空想ヒストリー』というお話が載っています。きらっきらの明るいお話です。

  『鏡音リン・レン 14thバースデーノベルズ』は、VOCALOIDの『鏡音リン・レン』が設定年齢と同じ14周年を迎えるにあたってpixiv上で開催された、『「鏡音リン・レン Happy 14th Birthday」小説コンテスト』の受賞作を収録した公式二次創作アンソロジーです。自作『空想ヒストリー』は小説コンテストで優秀賞をいただきました。

 同時発売のコミックスも合わせて、なにとぞよろしくお願いします!!!

 と、宣伝を挟みまして。
 7年もお話を書き続けていると、ここは成長したな~もなんも変われてねえな……もいっぱいあります。嬉しかったことも、うまくいかなかったことも。

 一度この7年を整理してみたくなりました。だから、お手紙を書きます。

2015/8/23に向けて、お手紙

拝啓 2015年8月23日、まさに筆を執ろうとしているわたしへ

 はじめまして、7年後のわたしです。こちらでいいことがあったので、続けてればいいことがありますよと伝えるために手紙を書きました。
今あなたは、純粋な衝動だけで物書きに手を出そうとしているのでしょう。初めて書くお話が終わったら次はなにを書くかとか、どれくらい物書きを続けられそうかとか、きっと少しも考えていない。
 結論から言いましょう。あなたの衝動は1年半で途切れます。むしろ1年半も衝動だけで書き進められたのはすごいことですが、そのあとは、投稿サイト内の流行ジャンルとの折り合い、承認欲求との付き合い方などでずっと悩み続けることになります。今のわたしだってそうです。
 それから、あなたはものすごく書くのが遅いです。あなたが今から書く初めてのお話こそ5日で2万字強を書き上げますが、そのあとはムラっ気すぎて数ヶ月なにも書かない、書けないこともあるし、そもそも文字を打つのが遅いので。未だに人差し指タイピングしかできませんよ、わたし。あなたが7年間で生み出す物語は、計582,500文字(概算)です。7年もかけて、文庫本5冊に届くかどうかです。この文字数を1年で生み出せる物書きさんが、世の中にはたくさんいらっしゃいます。
 もうひとつあなたが落ち込むことを言いましょう。あなたはこれから4つもの長編(になる予定だった物語)を途中で放り出します。完結させた長編は、現時点でたったひとつです。まともにプロットを作らない。表層だけ流行りものを真似したせいで本当に書きたいテーマと衝突する。だからそうなります。
 まともに連載するための基礎的な執筆体力がないので、今になっても投稿サイト上で跳ねたことはありません。現時点で一番評価されているのは、物書きを始めて2年目に書いた、タイトルとあらすじを流行りに寄せただけで中身ずだぼろなお話です。楽しんでいただいた方には感謝している前提で、今読んでも無駄に残虐なだけでさっぱり面白くないなと思います。

 どうですか?自分に失望しましたか?でも安心してください。下げてから上げるスタイルです。
 7年の時間は、無駄ではありませんでした。

 あなたの文章力(あいまいな概念ですが)は確実に上がっていきます。今のわたしは、キャラクターの年齢や置かれている環境に合わせてセリフの語彙を変える、誤読の起きにくい文章にする、みたいな技術を感覚で身につけつつあります。体系的ではないのは置いておくとして。
 また、あなたはいずれ、「面白いお話を書く」意識を持てるようになります。当たり前じゃん、と思うかもしれませんが、その当たり前ができていなかったから今こうして伝えているのです。最初の3,4年は「メッセージ性やしっかりとしたテーマを持たせなきゃ」だとか「細かいことでも理屈付けしたり時代考証して、読者さんから突っ込まれないようにしなきゃ」だとか考えすぎて面白さへの意識が希薄でした。
 変わるきっかけは、物書き仲間の方からの「お前力自体はつけてきてんだからいい加減『良い小説、正しい小説を書こう』とするのをやめろ。面白い小説を書け」(意訳)という言葉です。余談ですが。あなたはこの物書き仲間の方と数日後に出会います。今に至るまで大変お世話になる方なので覚えておいてください。

 そうやってあなたは書くことをやめず、少しずつ力をつけていった結果、ひとつうれしいことがありました。冒頭で書いたように。
 あなたはこれから7年後に、大好きなVOCALOID絡みの二次創作小説コンテストで受賞し、その作品が公式アンソロジーに収録されて全国流通します。

 だから、めげないでください。あなたはちゃんと頑張っています。

7年後のわたしより


 自分で書きながらう~~~~~……いい感じにしてんじゃねえ……となりましたけど。わたしの7年間はこんな感じでした。自分の本が出たわけでもないのでどこまで喜んでいいのかわからないところはありますが、好きなものと好きなものでひとつの到達点にたどり着けたのはまあ、全力で嬉しがってもいいのかな、とか。まだまだ悩むことばかり抱えて創作に臨んでいますが、これからもお話を書き続けられるように、いい感じにやっていきます。


 終わると思ったか? もう少し続くんじゃ。


『この命を響かせたいと思ったのだ/椎乃味醂(Vocal:裏命)』(2022/8/23投稿)


 わたしのお話が載っている本がはじめて世に出たのと同じ、2022年8月23日の夜。この曲が投稿されました。
 作者は椎乃味醂さん。普段の重く尖った作風と違い青く透き通った音遣いで、歌ものとして気持ちいい一曲です。感情をリズミカルにまくしたてるAメロ(?)~音数を絞ったビルドアップのような溜め~爆発するサビの流れが本当にすき。わたしは緩急によわい。

 なんで急に大好きな曲のレビューを挟んだのか。それは、この曲の歌詞と背景が、創作する人としてのわたしに深く響いたからです。この曲が、わたしのお話がはじめて本屋さんに載った日に投稿されたことに、運命を感じたからです。

 勝手ながら、「この命を~」が投稿される数週間前につぶやかれた作者さん(のサブアカウント)のツイートを引用いたしましたが、ここに書いてあることがおおよそこの曲の核なのかなと、個人的には感じます。

 わたしは椎乃味醂さんが椎乃味醂という名前じゃなかった頃、今は非公開となっている処女作からずっとこの方の曲を聴いていて。
 内容からわかる通り、ツイートの画像にあるコメントもその処女作のものです。wowakaさん(とても有名なボカロP)のリスペクトだ、真似だ、真似でも一曲完成させられてるんだからすごい、いつか自分らしさを手に入れてね、などのコメントがずらり並んでいますね。
  たしかに、曲調も歌詞(の文体)も、wowakaさんの影響を色濃く感じるものでした。『wowakaさんが大好きな13歳(年齢への言及はあまりしたくありませんが、コメントにも書かれているので)』が、今できる全力を込めて創った曲なんだろうな」と、ビシビシ伝わってくる曲でした。わたしは、とてもすきでした。

 翻って、「この命を響かせたいと思ったのだ」や、それ以外の椎乃味醂さんの曲を聴いてみましょう。wowakaさん(など)の影響はどれだけ感じられるでしょうか。リズミカルな早口、句読点を印象的に使った口語的な歌詞。そのあたりはたしかにwowakaさんやその当時(2010~2013頃)のいわゆる「高速ボカロック」とくくられるものの特徴を一部受け継いでいるように、わたしは思います。ですがそれ以外は? この方の色だと、独自の作風だと、そう思います。

 「この命を~」の歌詞は、比較的ストレートに思いが描かれている。そう受け取りたいです。

「好きゆえのあなたの模倣やリスペクトから始まり、試行錯誤を経て少しずつ自分なりの色を見つけ出し、真似に塗り足して、今ようやく『自分らしい曲』で多くの人に気に入ってもらえるようになりました。あなたがくれた創作の種を開花させ、ここで新たな時代のひとつになっていくよ。この場所(おそらく、合成音声楽曲)で自分の歌を響かせていくよ」

 きっと、そういうことでしょう。総決算と決意表明なのだと個人的にはとらえました。

 あの……えっと……

 ま、まぶしすぎる~~~!!

 ネット上での創作活動の一歩目で、多くの指摘やあけすけな感想や応援に囲まれる。「今はまだ、あの人の模倣だな」と言われてしまう。もしもわたしが同じ状況に置かれていたら、と思うとぞっとします。きっと耐えられない。
 そんな始まりから今に至るまで(前名義も含め)椎乃味醂さんの全曲をリアルタイムで聴いてきたわたしは、その過程に思いを馳せ、ただただ感嘆の声をあげることしかできません。
 
 わたしの創作も模倣から始まったのですけれど。椎乃味醂さんとはあまりに違いすぎて。今はまだ、とうてい届きそうにない。

今はまだ、ドッペルもどきなわたしのこと。

 上でもURLを貼ったわたしの処女作、運営の気持ちも考えてあげてください!(今はタイトルが変わっていますが)の話をします。いわゆるVRMMOもの×お仕事コメディみたいなお話で、出来としてはまあ黒歴史だけど愛着はあって……などなど話そうと思えばいくらでも話せますが、そこは今回の話と関係ないので以下略です。
 このお話の文体は、当時特にすきだったライトノベル作家の竹井10日さん(代表作:『彼女がフラグをおられたら』『東京皇帝☆北条恋歌』)の真似です。いや、真似にすらなってないですけど。今読むとダダ滑ってますけど。 メタメタしい文章を書けば竹井さんを真似できるかなと思っていた当時のわたしによるそれは、まさしく『ドッペルもどき』でした。
 
 じゃあ、今のわたしはどうなんでしょう。『ぼくの色』、見つけられているのかどうか。答えはきっとノーです。きっとまだ、ドッペルもどきかなにかのキメラ。
 わたしは7年経っても、自分の作風がどのようなものか掴めてはいません。ジャンルはばらばら。文体もばらばら。こういうのがすき! みたいな要素も、『ちっちゃくて内気そうだけど、実は強い芯のある女の子』『コンプレックスの克服』くらいしか心当たりがない。自分はどんな物語が、ジャンルが、キャラクターがすきなんだ? つらかったり暗かったり悲しかったりよりは、希望があって温かい話のほうがすきだけど。
 今だってそんなのです。わたしにはまだ、自分の色がありません。もう何年も悩んできました。自分が書いたものを俯瞰してみればどこかでつながってはいるんでしょうけど、ね。

 ……でも、まあ、自分の作風なんて書き続けてればそのうち浮かんでくるか。
 
 そう思えるようになったのは本当にここ数ヶ月のことです。悩みと考えをこねてこね続けて、やっと少し楽になれた。好きゆえに真似をするのは悪いことじゃないって思えてきた。
『鏡音リン・レン 14th birthday コンテスト』の受賞とか、『この命を響かせたいと思ったのだ』の影響も大きいです。好きなものへの熱量で作り上げた作品が誰かの目に留まったから。リスペクトから始めてどんどんと大きくなった人の実例を見たから。
 幸い、書くのは楽しいです。続けたいって思います。幸運にも、核になるものがないなりに、面白いネタが降りてくる体質だし。そういうネタはきちんと磨いて送り出してあげたい。
 書き続けさえすれば。試行錯誤をやめなければ。自分の色がなくても、なにか好きなものの真似でも、いつか、自分だけのものが手中に残る。

 だから、8年目のわたしもこうしてお話を書き続けるのです。


余談というか宣伝

 今ちょうど、ここで書いたようなことを小説としても形にしているところです。思いのたけを詰め込んで、やわらかい光とわたしの趣味で彩って。テーマに押しつぶされないように、ちゃんと面白いお話にして。きっといいものになる予感がしています。
 大きなアンソロジー企画への参加作品となります。来月にはお知らせできると思うので。よければ、楽しみにしていただけると嬉しいです!

 宣伝のためのnoteみたいになっちゃったけどそういうことはなく、たまたまです。ほんとに。 
 最後に宣伝らしきものも挟んで。以上、趣味物書き兼ボカロリスナー、海鮮焼きそばでした!

(ヘッダー:とあるアニメイトの棚に並ぶ鏡音アンソロジーの写真)
(撮影:わたし)