夜に駆ける
36にもなったジジイが、流行りの曲に乗ってみたダサいタイトル。
そんなに聞き込んだわけでもないし、歌詞もちゃんと聞いたことないし。でも、なんか若者を中心に刺さっているのはわかる気もする。
夜が好きだ
夜って、なんだかとても好きだ。
東京にいるときは、しょっちゅう新宿に入り浸っていた。
12時過ぎて、終電がどんどんなくなって、帰らない人・帰れない人だけになった街。
若いエネルギーを吐き出そうとする人、日ごろのうっ憤を晴らそうとする人、そんなエネルギーを使わそうとするお店。
そして、帰る場所を失った人たち。(別にホームレスじゃないけども。精神的ホームレスっていうか)
電飾は明るいが、どこか心に影をまとった人たちが集まる街、新宿。
そんな新宿が、なんかとても好きだった。
それでもいけなかった二丁目
それでも、新宿歌舞伎町近辺までしか行けなかったのは、心のどこかでブレーキをかけていたんだろう。
ダーツバーの常連になっていたので、ほぼその店にいて、スタッフや常連と会うことで、なんとか心をつないだ。
でも、やっぱり心は閉ざしていたし、本当の悩みも言えなければ、頼ったこともない。
少し荒れた飲み方はしていたけれど、お店に迷惑かけたことはほぼないはず。そこだけは自分の矜持のようなもので。
昔、テレビに出ていたことがあって、その時に当時のディレクターの一人に二丁目のゲイバーに連れて行ってもらった。
その時の衝撃は忘れられない。
みんな悩みを持ったり、心に傷があったり、取り繕ったものをはがせないでいるんだろう。でもそれを笑いに昇華させるチカラがあった。
自分のセクシャリティーを考えると、「アロマンティック」に近いので、普通の一般生活の中での何気ない恋愛の会話や性愛の会話はストレスで。
そういった世間の「縛り」から離れた世界を提供してくれるゲイバーは、本来は僕の必要な場所だったんだろうと思う。
でも、なかなか踏み込めなかったなぁ・・・
なんか、敷居が高い気がして。常連とかで固まってそうだし。
夜にいる人達のほうが親近感を覚える
二丁目じゃなくても、なんとなく集まってくる人って同じ匂いがする。
夏に、街灯に集まる虫みたいなもので、たぶんなんか引き寄せられるものがあるんだろう。
新宿に限らず、夜もにぎわっている町はみんな同じかもしれない。
時には暴力があったり、詐欺やぼったくりがあったり、決してクリーンな街ではない。
それも含めて、昼間の「常識」の世界ではなじみ切れなかった人間たちの、心の叫びというか、生きる辛さの発散というか、そんなものがあふれている気がするのだ。
夜になって、少しだけ澄み始める空気。
暗さが増して、何が潜んでいるのかドキドキする路地裏。
「欲望」をぎらつかせて、獲物を捕らえようとする性風俗。
酔いつぶれて路上で寝ている人、寝る場所もなくさまようホームレス。
普段、昼間にサラリーマンをしていると̪シカトしているようなものが、浮かび上がってくる。
多分、夜向きなんだろうな
昼間のサラリーマン生活は、何度やってもうまくいかない。
多様性をできるだけ排除して、施しもほとんどないのに会社に忠誠を誓って働き、雀の涙のほどの報酬を得る。
ずっと、何かしらの経験を積んで、「成長」というよくわからないものを追い求め、
それによって収入を上げていくことだけにフォーカスしてきた。
でも、そのたびに精神が蝕まれていくし、体調は悪化する。
たぶん仕事自体は、配達みたいな単純作業のほうがあっている。
でも、それを死ぬまで続けられるかと考えると、体力的にもしんどい気がして、バイトや委託でする以上のところには踏み込んでこなかった。
ずっと続けるのであれば、夜の仕事なのかもしれない。
自律神経の影響もあって、基本は夜は得意だし。
とはいえ、不安のほうが大きい
自分はイケメンでもないし、いい歳だし、飲食経験もないし、めっちゃお酒が強いわけでもないし、務める先なんてあるんだろうか。
自分で店しようと思っても、それなりに初期投資が必要だし、初めはあんまりお客さんも見込めないから赤字続きだろうし。
そもそも、コンセプトとして、普通のバーなのか、ショットバー?ウイスキーバー?ゲイバー?
それとも、居酒屋?パブ?・・・みたいな。
アロマンティックな自分を防御するとしたら、できるお店は限られるなぁーってふと思ったり。
夜は夜で、大変な商売だなあと改めて思う。
ただでさえめんどくさいのに、お酒飲んだらもっとめんどくさいじゃん、たいていの人間って。
願わくば、ビルのちょっと上の方の、ガラス張りの小さなお部屋で、
大通りを走る車のテールランプの赤の列をぼんやりと眺めながら、
静かに悩みや苦しみを吐き出せる場所が作れたらなあ、と思っている。
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