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両親の死(4)

 僕達の両親が亡くなったのは僕が11才の時だ、父と母が苦しまずに一緒に亡くなった事は救いである。両親は仕事中に不慮の事故で亡くなった、両親の死には米軍が関係している。僕は幼くて事故の内容について詳しく理解できなかったのだけれど、親戚のおじさんが言うには、船同士の接触事故で海上に投げ出されて、行方不明になったのである。だから僕は両親の遺体に手を合わしていない、まだ赤ちゃんだった妹は両親の記憶さえないかもしれない。僕は米軍の人を恨んでいない、父に何が起こるか分からない仕事だからと良く言われていたからだ。この事故の事は当時、沖縄だけじゃなくて日本でも議論されたから、周囲の大人に良く声を掛けられた。当時僕の頭の中にあったのは妹の事だった、妹に両親のことを聞かれたら何て説明しようと思っていたのだ、僕が受けた説明では納得できないのは明らかだった。しかし、妹が物心付いても、僕に両親の事を尋ねる事はしなかった。僕も両親の事を妹に話す事はしなかった。別に僕がタブーにしていることではない。両親の遺体はなくても、親戚の方たちは法要をしてくれた。僕はこの事をとても感謝している。兄妹で両親の事を話す事はなくても想いを一つに出来たからだ。

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