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世界にただ一緒にいる彼(6)

銭湯と同じ敷地の中に、豆腐屋さんがある。立花はさっきコンビニで冷やし中華と唐揚げくんを食べたばかりだというのに、揚げ出し豆腐に麺つゆとワサビを乗せた、惣菜を購入した。風呂上がりに飲むビールのツマミにするのだと言う。まさみは入り口で入場券を購入すると、ロビーの受付でシャンプーを購入、600円の入場券と300円の整髪料金を支払う。待合室にはゴザが敷いてあり、27時間テレビでおにごっこが放送されていた。私は昨日から鬼ごっこが気になっていたので直ぐには入浴せずに、座布団に腰掛けると、無料のお茶を飲みながらTVを観た。TVを視聴中、湯船から出てくる家族連れが多く、まさみはここの銭湯を初めて利用したのだけど随分賑わっているものだなと思った。立花は直ぐに豆腐屋に行き、その時に別れたので、帰りは歩きになるなと思った。急にまさみも風呂上がりのビールが恋しくなったが、隣では小学生の女の子がコーナー牛乳をごくごくと飲み干していた。


まさみが入浴中、他人と同じ湯船に入るのは、高校の修学旅行以来だったので、少し気持ちが悪くて苦手だなと思った。他人を見るとしっかり汚れも落としていないのに、湯船に浸かる者もいたからだ。耐震工事、今月一杯かかると言っていたよなと気分もあまり優れなかった。30分程で入浴を済まして、待合室を覗くと立花がビールを飲みながら、さっき購入した揚げ豆腐を食べていた。TV放送は野球中継に変わっていた。まさみも売店でツマミとお酒を購入すると、立花に明日も仕事なのと尋ねた。立花は新築の案件が残っていて、人手も足りなくて大忙しなんだ。俺もいつもは休みなんだけどかり出されるわけなんだと話した。暫く沈黙が続いた後、立花が周りに人が居ないのを確認して、もしまさみが俺のこと少しでも気になるなら付き合ってみないかと話した。まさみは少しほろ酔い加減の立花を見ながら、年はいくつ位なんだろう。まだ知り合ったばかりだし、急に付き合おうと言われてもと思い直していたが、5分後には立花を気にかける週間を思い出し、たぶん大丈夫だろうと立花に付き合ってもいいよと柔軟な対応を見せていた。まさみが今まで付き合ってきた男の中で立花はまともな方だった。高校の頃、航が気のある様な振りをしていたが、実際に付き合ったのは婚活アプリで知り合った、暴力系のヤクザだった。当然カタギのまさみとはうまく行くこともなくて、男の間を右往左往した。働かない男からはアプリの課金やら生活費を騙し取られて、警察沙汰になった事もあるのだ。まさみの黒歴史は高校の時から続いているのである。

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