悪魔の宝石
彼女は女優である、今年で48才になります。有名なキャリアにブロードウェイのミュージカルを経験した。ドラマで女医を10年間過ごす、この春に国際舞台で活躍する女性を演じる。昨年、デビューからずっとお世話になっている事務所を退所して個人事務所を開いた。スペイン語で挑戦という意味である。
デビューから30年、演じる役柄を通して自分と向き合ってきた、彼女は今スペインに来ている。1人になって背負ってきた荷物を降ろす為だ。このホテルを気に入っている、大西洋が一望出来る。彼女は海が好きである、コロンブスが大陸発見を夢見た様に冒険心をくすぐられる。身体は静養を望んでいるよ。
ホテルのメモとボールペンで出てくる言葉を綴っている。よく派手な女性で物怖じしないと言われるけど本当は他人の視線にいつもびくびくしています。彼女は自由を愛している、直感的に理解できる。彼女は歩く道を選択して来たよ、女優になると決めた日も迷いはなかった。本当に演じる事を愛しています。
彼女はスペインが好きで1ヶ月程ホームステイしました。やりたい事は寝る時間を惜しんで取り組んでも苦にならない。スペイン語の勉強を事務所のスタッフに支えられながら数週間学びました、日常会話を聴いて理解できる所まで直ぐに上達しました。スペインでどんな体験が出来るのかワクワクしているよ。
他人は、女優として演じる役柄と同じく、彼女を観察して色々想う。彼女は静養中、自分がデビューした18才の頃を考えている。初めて出演したドラマで主人公の男性の恋人役でした。彼女は社会の男性は私と付き合ってみたいのだなと感じたので、男性を誘う様に演じた。役柄から求められる事を理解する。
春に新作が配信される、海外で亡くなった方のご遺体を国境を越えてご遺族の元へ送り届け、活躍する送還士の物語です。彼女の役所は口は悪いけど、情に熱い女社長である。第一話では、シリア内戦の巻き添えを喰らった日本人旅行者を政府の依頼を受けて日本に送還する、女社長は日本から情報操作するよ。
彼女が、ブロードウェイミュージカルに出演する為に、舞台稽古をしている最中に背中に激痛が走った、主役の重責と厳しい稽古に身体が悲鳴を上げました。ドクターストップが掛かりましたけど、日本人スタッフの丁寧で細やかな配慮で舞台本番を迎えられました。ブロードウェイに立つ初めての日本人です。
舞台を経験して身体のケアを学び、健康について真剣に考えました。昨年、結婚して身体の調子が子供に影響するので生に関する事に取り組んでいる。スペインを訪れたのも自愛する為です、スペインのパパさん家族を訪れたい。肉料理を食べて酒を飲みチームの仲間と会話をする事が自分を開放する瞬間です。
情報が溢れている今、SNSや情報番組で自分のことを話すのが苦手です、彼女は応援してくれるファンが考えてくれる女優像をとても大切にしていて、仕事を続けて期待に応える作品に出演する。親友や近い人に、彼女はストイックで仕事では他人を直ぐに受け止める人、私生活では人見知りだねと言われる。
ホテルで人生を振り返り、今の彼女に本当に必要なものは何か選択する。主人との生活、親しき中にも礼儀あり、お互いが気持ちよく過ごすのに敬意が必要です。2人で家族を作ります。子供の出産を考えています。出来ない事は出来ない、しんどい事はしんどいと周りに認めて貰う今までの彼女で居たいです。
今日は夕食に誘われています、以前ホームステイしたスペインの家族に逢いに行きます。ピザとワインをご馳走してくれます、実はパパさんと大事な話があります。彼女が相談出来る人生の先輩です、電話で連絡して主人が病気で仕事を辞めなくてはいけないと伝えました。彼女なら使いこなせるかも知れない。
パパさんは悩みが解決するかも知れないと話す、大事な所で誤魔化す人ではないので詳しい話を聴きたい。家では娘家族や親戚の子供がいて彼女の訪問を喜んでくれました。ママさんが窯で自家製のマルゲリータを焼いてくれました。美味しくて3枚も食べました、ソースが全然違うんですね。とても幸せです。
ワインも濃厚な味わいで、パパさんもほろ酔い気分です。皆んなで楽しく歌を唄いました、食事と会話を堪能した後、パパさんが彼女を自分の部屋に呼びました。とても真剣な顔で、彼女に宝石を見せてくれました。この宝石は持ち主の望みを叶えてくれる、でも所有したまま亡くなると業火に焼かれてしまう。
彼女はもう一度確認しました、宝石を所有して願うと夢が叶う、しかし所有したまま亡くなると地獄の炎に焼かれてしまう?パパさんは彼女の悩みも解決できるので宝石を譲り受けて欲しいと話す。彼女は主人の病を治癒して家族を築けるならパパさんの話を信じても良かった、主人を救う事しか考えられない。
彼女が日本に帰国すると、主人はベッドで寝たきりの状態になっています。彼女は黒いドレスを着て、宝石を身につけると三面鏡の前に立ちました。両手で宝石を握ると主人の病が良くなってと祈りました。主人がベッドから起き上がり、数日で以前の様に働ける事が出来ました。2人は再び幸せを掴めました。
暫くして彼女は、子供を授かりました。直ぐにパパさんに報告しました。パパさんは本当に良かった、僕も家族を持ちたくて仕方なかったんだ。その話を彼女にもしなくちゃいけないね。彼女の不安も理解できる、きっと望む未来を手に入れられるはずと話しました。彼女は、宝石と向き合う事を恐れています。
パパさんは幼少の頃、両親を亡くしました。物心をつく時から児童養護施設で暮らしている、多くの友人・先生に囲まれて楽しく過ごします。パパさんが小学生になるとおばあさんの家に養子に出されました、おばあさんは大きな屋敷に1人で暮らしています。お金持ちの家で他の施設からも子供が来ています。
お婆さんは宝石を所有していました。家に代々伝わってきたもので、ご先祖様が事業で成功して、取引先の知り合いから譲って貰いました。それは悪魔の宝石と呼ばれ、所有する人は皆幸せになったけど、人生が終わると地獄の炎に焼かれてしまうと噂されていました。お婆さんは子供に宝石を譲りたいですね。
屋敷にお婆さんと5人の子供達で暮らしています。お婆さんは宝石をリビングの目立つ場所に置いていました。お婆さんは子供達に宝石に触れてはいけないよと伝え、いつも自室の窓際のチェアーに座り、静かに本を読んで過ごしていました。子供達は屋敷に慣れるとかくれんぼや鬼ごっこをして遊んだのです。
パパが小学生の頃、屋敷に住む子供達と遊んでいると不思議な事が起こりました。宝石はとても魅力的に輝いていて、子供心にも特別なものであると分かりました。お婆さんの触れてはいけないという言葉を忘れて、手に取ったり身につけたりして、鏡の前でポーズをとっているとその子が居なくなってしまう。
パパさんは、お婆さんに友達が居なくなったよと伝えると、よくある事よと言い、暫くすると戻ってくるからと話します。パパさんは同じ体験を何度もして、5人いた子供も気がつけば2人になりました。お婆さんも歳をとり身体が衰弱しました。お婆さんは宝石の呪いを伝え、どちらかに譲りたいと話します。
20才になるとお婆さんの世話をしたいと成長した人も居ます、パパさんは新しい自分の家族が持ちたいと願います。パパさんは宝石の力が欲しいと祈り、お婆さんの屋敷を出発して、宝石に導かれる様にスペインにたどり着きます。そして今のママさんと運命的な出逢いをして子供を産み、家族を作るのです。
パパさんも高齢で宝石を誰かに譲りたい、お婆さんが話した宝石の呪いを覚えています。ホームステイで日本から語学の勉強の為に訪れた女優に出逢う、彼女の家族を作りたいと言う望みを聞いて、自分の若い頃を思い出して、彼女の強さなら呪いに負けないと感じました。だから子供の頃の話を伝えたのです。
彼女はパパさんの話を聴いて、呪いの恐怖よりも悪魔を体験してみたいと想います。現実に主人の病いを治癒してくれた宝石の魔力に魅了されてしまったのです。パパさんは宝石の世界に閉じ籠もらず、主人に呪いの事を話したほうが良いとアドバイスしました。彼女は悪魔の宝石を終わらせてみせると話した。
スペインで今までの彼女を振り返り、家族を作る事を選択した。宝石との出逢いがあって子供も産まれた、女優として役を通して自分と向き合うのに悪魔との出逢いは大きく影響する。命や愛を望むのは他人の真実の姿、見方を変えれば呪いの様に見える。彼女の演じる世界が悪魔の宝石になると感じています。
主人と子供には、呪いについて伝えませんでした。そっと自宅の暖炉の床にあるブロックの下に隠しました。彼女の胸に全てをしまい終わらせたのです、彼女は生死について話してきました。命や愛を望み、これからどうやって生きるか考えています。今在る事は奇跡だから、演じる事で貴方の力と笑顔になる。
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