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碧空 Blauer Himmel

2022年秋から、タンゴバンドの練習に参加し始めた。月に2、3回、公民館のピアノ(あるいは電子ピアノ)のあるスペースに集まって、みんなで音出し。練習日は早くから伝えられているが、その日にどの曲を練習するかは、練習日まで一週間を切ったあたりに知らされる。ほとんど弾けない曲をいきなり合わせることもあるので、けっこうハラハラする。とりあえず片手だけ弾いてみたりして、なんとかくらいついていくのだが、普段ひとりで練習しているとまずこういうことはないので新鮮だ。そんな状態で合わせても、どんな曲か、合わせるとどんな感じになるのかがわかるので、ひとりでの練習の役に立つし、初見の練習にもなっている気がする。

練習に参加していたら、2023年1月にコンサートをやるべくホールをおさえてある、君も熱心に練習に参加しているのだから数曲だけでものりなさい、と言われた。このグループは、昔からの人たちだけの編成とか新しい人たちだけの編成とか、いくつかの編成が可能で、ピアニストも数名いるので、曲ごとにのるメンバーが変わる。そして私は『リベルタンゴ』と『碧空』で出ることになった。

『碧空』…ヨーロッパで生まれたコンチネンタル・タンゴの代表曲のひとつ。メロディを聞いたことのない人はいないのでは?ヴァイオリンが奏でるメロディが伸びやかで、まさに青い空がどこまでも広がっていくような感じ。主題はマイナーで始まり、9小節めにちょっとだけメジャーになってまたマイナーに戻る感じが、空の青さとともに涼やかさも感じさせる。和音が続く中間部はドラマチックで、そのあとに主題がさらに盛り上がって戻ってくる。

もらった譜面では、ピアノは出だしのキュー出しに始まり、ずっとリズムを刻む伴奏役のようであったが…単調なのに、このリズムがどうもうまく刻めない。譜面どおりだとまず非常に弾きづらく、同じペースで続けていくことが困難。右手と左手がシンコペーションになっていて、弾いてるうちに右と左がずれてきたり、ちゃんと弾けてもなんかモチャモチャしたりする。

最初の1小節はピアノが弾くので、テンポはここで決まってしまう。ひとりで弾く時も、けっこう出だしに課題を感じていたので、これもまた難題だった。

本番前に何度か練習で合わせたが、「速すぎる」と言われたり、「遅すぎる」と言われたり。自分ではテンポを保持できているつもりでも、ヴァイオリンがメロディを歌っているうちにどんどん先にいってしまって取り残されそうに感じたりで、どうにもうまくいかない。

いま思えば、この曲のリズムをとらえきれていなかったのだと思う。そういう時には、同じ曲の録音をいろいろと聞いてみるのがいいのだが、もらっている譜面のアレンジに近い録音が見つからず。名曲なので録音はたくさんあるが、ありすぎて、参考になるものをうまく見つけ出せなかった。

本番当日、自分にとっては初めてのPA付きでの演奏だった。ステージでメンバーと目線を合わせてタイミングをとったりするのも新鮮で、たのしい経験だったし、とりあえず演奏はできたものの、この曲に関しては課題が残った。

これを書くにあたり、久しぶりに楽譜を取り出して弾いてみたが、やっぱり弾きづらくて全然のれないのだった。葛藤は続く。


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