多拠点生活覚書#7 ADDressを使ってみて
今日は多拠点生活中に利用していたADDressについて。
ADDressとは
ADDressは、日本各地にあるADDressの拠点に定額で住めるサービスだ。
拠点は空き家をリノベーションしたものやゲストハウスなどがあり、会員になるとサービスサイト上で月の宿泊日数や移動回数の上限なしに予約ができる。
(※ただし、一度に予約をおさえられる日数は14日まで。また、同じ個室を連続で予約したい場合、一度におさえておけるのは7日まで。8日以降は空き状況に応じて14日まで延長可能。)
各拠点には「家守(やもり)」と呼ばれるコミュニティマネージャーさんがおり、家の管理や会員同士・会員と地域との交流をサポートしてくれる。
私は約半年の多拠点生活のうち、4ヶ月近くをほとんどADDressの家で過ごしていた。
ADDressを使おうと思った理由
多拠点を定額もしくはコストを抑えて利用できるサービスはADDress以外にも色々ある。
その中で私がADDressを選んだ理由としては
・空き家を活用するというコンセプトに共感した
・リーズナブルに個室を利用できる
という2点が大きかった。
空き家を活用するというコンセプトに共感した
現在、地方には空き家が増えており、2033年には3件に1件が空き家になると言われている。
田舎で高齢化が進み、空き家も増えている地域出身の私にとって、この問題は身近な問題で、「何かできることはないかな...」とぼんやりと思っていた。
ただ、東京に住んで10年以上が経過し、仕事も東京でしているとなると地元のそうした問題解決に取り組むのはやる気や勇気がいる。
問題を解決しきるにはある程度滞在しながらでないと厳しいし、「良いところですよ」と伝えるにも説得力がない。
しかし、仕事の拠点が東京にあり、連絡をとる友人も東京に住んでいる人がほとんどとなると、東京まで2時間とはいえ地元にしばらくいるのは難しい。
そんな時、知り合いが利用していたADDressを知った。
ADDressは基本的に全国の空き家を拠点としてリニューアルし、活用している。
※ADDresサービスサイト「ADDressの想い」より引用
上記の通り、なんとなくではあるが空き家問題に関心があった私は、純粋に「このコンセプト良いなあ」と思った。
また、すぐに地元の空き家率の低下につながるわけではないが、「サービスが広まって、いつか地元にも拠点ができたらいいな」とも思い、「まずは自分で使ってみよう」と思った。
リーズナブルに個室が利用できる
多拠点生活をする上で自分が重要視していたことの一つが「必要な時に個室を利用できること」だった。
以前も書いたが、私はずっと人といるのが苦手だ。
しかし、ずっとホテルやホステルの個室で暮らそうとすると月8万円くらいはかかる。
当時5.5万円のシェアハウスに住んでいたため、また訪れた土地の雰囲気を味わいたくて、外食や気になるお店の商品の購入にお金を使いたいかったため、「もう少し宿泊費をおさえたいな...」と考えていた。
そんな中、ADDressは月4.4万円で全拠点を利用できることを知った。
ADDressの拠点は基本的に個室があり、追加料金や予約があいていれば上限なく利用することができる。
月8万円以上したり、個室を利用できる回数に制限があったりとなかなか自分のにあう多拠点居住系のサービスを見つけれずにいた中、「これなら続けられそう」と思い利用を決めた。
ADDressの良いところ
上記の料金の安さ、個室の利用しやすさ以外にも、実際に使ってみて、良いなと気づいたところがいくつかある。具体的には以下の3つ。
・拠点にいる人に話しかけやすい
・色んな地域・建物を体験できる
・居心地よく多拠点生活できる
拠点にいる人に話かけやすい
ADDressの拠点(ゲストハウス拠点を除く)にいる人は、家守さんかADDressの会員さんだけだ。
そのため、「同じサービスを利用している人だ」とはっきり分かり、「この拠点何回目なんですか?」「どうしてADDressを使おうと思ったんですか?」など話題を見つけやすく、初めてでも話しかけやすい。
また、家守さんが会話に入れるよう自然に手助けしてくれるため、既に会話が盛り上がっている状態でもすっと会話に混ざれる。
ゲストハウスだと他のサービスで予約している人もおり、「なんて話しかけよう」と迷ってしまったり、既に仲良くなっている人たちの輪に入りにくかったりするため、これはとてもありがたかった。
(ゲストハウスでも会話に誘ってくれようとする人ももちろんいるのだが、規模の大きいところだと入りたがっているのを察知しづらかったり、自分自身もアピールするのに勇気がいるので人数の規模的にもちょうどよかった。)
色んな地域・建物を体験できる
ADDressは全国に拠点があって、さまざまな地域での「生活」を体験できる。
その中には、レジャースポットやオフィス街があるわけではない「ADDressの拠点がなければ行かなかったであろう地域」も多い。
「遊びに行ったり仕事をしに通ったりする地域」と「住みたいと思う地域」では求めるものが違う人も多いと思うのだが、遊びや仕事の予定もない地域を訪れる機会って、なかなかないのではないだろうか。
(みんな「家を建てよう」と思った時どうやって場所を決めているのだろう......)
私はADDressでの生活中、東京近郊の拠点を中心にまわっていたのだが、同じ都県内でも、街ごとに雰囲気が全然違った。
使いやすいスーパーがあるとかバスや電車の本数は十分にあるとか、夜も静かな場所だとかは、数日間その町で「生活」をしたからこそ分かったのだと思う。
実際、初めて行って「え、ここすごく住みやすいな」と思った地域は何か所もあった。
「絶対この街がいい!」という街にこそ出合わないかもしれないが様々な街で生活して分かる「住む街選びのポイント」を見つけるのに大いに役立ったと思う。
また、ADDressは元々ある空き家をそのまま活用しているため、各拠点で間取りやお風呂・キッチンなどの設備が異なる。
純粋に色んな家が見られるのが楽しいのに加えて、実家や一人暮らしで住む数件のアパート・マンションでは見ないような間取りや設備に出合えるので、特に今後家を建てたい人には「理想の家づくりのヒント」をもらえるという点でおすすめしたい。
引っ越しや戸建ての家に訪問する機会というのは回数が限られてくるので、色んな家を見て実際に使ってみたい人には良いサービスだと思う。
ADDressを使っていて困ったこと
4ヶ月のADDress生活の中で困ったこともあった。
自分が出合った困りごとは以下の2つ。
・行きたい拠点の予約がなかなかとれない
・家の中にずっと誰かがいる
行きたい拠点の予約がなかなかとれない
私は都内に通勤しないといけない時があり、その週は基本的に都内の拠点を予約していた。
ただ、都内の個室の拠点は結構予約が埋まっていて、人気のところだと連続してとれるのが数週間先ということもあった。
そういう場合は都内でも空いている場合が多いドミトリーを予約していたのだが、仕事の都合や自分の休みたさの具合でどうしても個室がいい時もある。
私の場合、どうしても個室に泊まりたい時は東京近郊の個室で予約、もしくは割り切ってホテルを予約していた。
ADDressだけを使ってずっと個室に泊まりたいと考えている人は、追加料金で拠点の一部の個室を自分専用の個室として使えるプランを検討したり、都外で生活でも問題ないような生活スタイルを検討したりすると良いかもしれない。
※ただ、最近拠点もどんどん増えてきているので、現在はもっと予約がとりやすくなっているかも。
家の中にずっと誰かがいる
これはサービスの内容上当たり前といえば当たり前なのだが、基本的に家の中にずっと誰かがいる。
私の場合、一切会話したくないモードの時が定期的にあって、いかに他の人に会わずに生活するか苦心することがあった。
また、トイレやお風呂などもみんなで共同で使うかたちになるので、忙しくて「この時間でないと困る!」みたいな時に他の人とかぶってしまうとちょっと焦るかもしれない。
(これに関しては、事前に「~時に使いたいです!」「急いでてちょっとだけ使わせてもらってもいいですか」とコミュニケーションをとればよいだけだよな......と書きながら思っている。ただ、私にはそれが難しいのだ.......他の人から言われたら全然「いいですよ~」ってなるのだが.......)
実家暮らしやシェアハウス暮らしをしている人にとってはこうした点は特に気にならないかもしれないが、一人暮らし生活が長い人にとっては私のようにストレスになる場合もあるのではないかと思う。
それでもやっぱりまた使いたいと思っている
上記のような困りごともありはしたが、普通の賃貸に住むようになってからも「ADDess再開したいなぁ」とずっと思っている。
多拠点生活やADDressでの生活で発生する困りごとを「絶対避けたい!そんなの無理!」と思っている人ももろんいるだろうから、人にもよるのだと思うが、自分の場合は良かったことの方がずっと多かった。
色んな景色や家を見るのが好きな人、色んな人に会ってみたい人、いつもと違う街でも生活してみたい人は同じように楽しめる部分も多いのではないかと思う。
また、移住前にその地域で生活するのがどんな感じなのか知りたい人にもぜひ使ってみてほしい。
実際に生活してみることで、その地域のよいところ、不便なところを身をもって知られる。
滞在している期間だけで分からない部分があったら、また行ってもいいし、家守さんやその拠点をよく利用している会員さんに聞いてみてほしい。期間が短くて知らなかったことだけではなく、他の人の視点だからこそ気づけることもある。
不便なところをすっかりなくすのは難しいかもしれないが、事前に知っておければ対応するための工夫や心の準備ができるので、その地域での生活をより気持ちよくスタートできるはずだ。
「1度は使ってみなよ!」と誰彼構わずおすすめするつもりはないが、ここまで書いてきた経験を楽しめそうな人やその経験が今後に役立ちそうな人に出会ったら、選択肢の一つとして伝えていきたいと思う。