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多拠点生活してみたら、世界が広がった

昨年末から約半年の間、私は家を持たずに拠点を点々とする「多拠点生活」をしてきた。

来月から仕事の都合で一時休止することになり区切りがよいので、これまでの多拠点生活を振り返ってみようと思う。

多拠点生活を始めたきっかけ

まず、どうして多拠点生活を始めようと思ったのか。
私が「多拠点生活をしよう」と思ったきっかけは、

・オンラインイベントで多拠点生活サービスとその利用者に出会い、「私もやってみたいな」と思ったから
・シェアハウス住まいで持ち物が少なく動きやすかったから
・前の家で更新が必要になったから

という3つ。

そもそも、去年の4月くらいまで、私は「多拠点生活」や「アドレスホッパー」という言葉さえ知らなかった。

そうした言葉に出合ったのは、たまたまTwitterで見かけて参加した「REMOTE TRAVEL」というイベント。

緊急事態宣言下で厳しい状況におかれている全国のゲストハウスを少しでも助けようと、各地のゲストハウスを紹介していたこのイベントで、ゲストハウスを渡り歩いたことのあるアドレスホッパーの方やADDressやHafH、Hostel Lifeなどの他拠点生活ができるサービスを知った。

元々旅行が好きだったこともあり、「色んな土地で生活するって楽しそうだな」と感じ、「近いうち自分もやってみよう」と思い始めた。

そして、そうこうしているうちに前の家の更新確認のメールが届いた。

前の家から職場へは片道1時間近くかかるため、更新せずに出ていくことは決めていた。

問題は、出て行って「どこに行くか」である。

職場の近くに住むのも考えたが、都内で立地のよい賃貸は控えめに言ってもものすごく高い。しかも毎日出社が必要な訳ではなく、情勢によってはフルリモートでよい期間もあるので、高いお金を払ってずっとそこにいる必要はない。

また、前の家はシェアハウスで、家電・家具などはほとんど持っていなかったため、もし一人暮らしをするならそれらを買い揃えなければならず、お金がかかる。

どうしたものかと悩んでいるうち、「今こそ多拠点生活すればよいのでは?」という考えに至った。

多拠点生活であれば、出社が必要な日の前後だけ会社の近くに行けばいいし、ホテルやゲストハウスならば家電・家具なども揃っている。

悩みはすべて解決でき、しかも「色んな街を見てみたい」「色んな人と話してみたい」という自分のやりたいことも実現できる。

始めない理由はなかった。

「とりあえず始めてみて、しんどかったら辞めればいいや」

くらいの想いで、私は多拠点生活を始めた。

どうやって多拠点生活していたか

一口に多拠点生活と言っても、やり方はたくさんある。

ホテルを点々としたり、ゲストハウスやシェアハウスを渡り歩いたり、多拠点生活向けのサービスで提供される拠点を周ったりと、人によって様々だ。

私の場合は、これらの方法をいくつか組み合わせて他拠点生活をしていた。

一番使用頻度が多かったのは多拠点生活向けサービスのADDress、続いてHafH、nowroomだった。
それぞれのサービス詳細についてはまた別のnoteにまとめようと思うが、ざっくり言うとADDress、Hafhは定額で全国各地のホテル・ゲストハウスや独自拠点に宿泊ができるサービス、nowroomはほぼ初期費用なしで賃貸物件やゲストハウス、シェアハウスに長期滞在できるサービスだ。

定額サービスのよいところは、滞在費を気にせずに泊まる場所を選べるところである。

「次はどこで過ごそうか」と宿を探すのは多拠点生活の楽しみの一つではあるが、一般的な予約サービスを通じて予約する場合は「どこに泊まってみたいか」だけでなく(少なくとも私の経済力では)「予算内におさまる料金か」も気にしなければならない。

忙しい時だと膨大な量の宿の中から「自分が最低限満たしたい条件にあう予算内の宿」を探すのは結構疲れる。

expediaやagodaなどのホテル予約アプリを使えばうまく探せそうなものだが、自分の指定したい条件が絞り込み条件にない時は一苦労だ。(私の場合、「浴槽があるか」だった。ちなみにこの条件はBooking.comのアプリだと指定できる。ありがとうBooking.com。)

一方ADDressやHafHなどの定額サービスの場合、どの拠点でも金額は変わらないので、予算内で指定の拠点の中から場所や内観の好みなどだけで決めることができる。
※細かな条件での絞り込み検索は(現時点では)できないが、「水回りや共用スペースなどに最低限これはある」みたいなのがサービスごとに大体決まっているので、価格と条件が見合いそうかをいちいち考えずに済む。

ゲストハウスだと「定額でなくとも『探せば』お金は安く抑えられるから変わらないかも」と考えていたので、これは実際定額サービスを使い始めるまで気づかなかったよいところだった。

多拠点生活していて困ったこと

ただ、そうしたサービスにもデメリットはある。何点かあるが、私にとって特に大きかったのは、「設備や生活用品はみんなと共有」、「常に人がいる」点だった。

こうしたサービスの対象となっている場所はホステルや複数人で使用する独自拠点がほとんどであるため、お風呂やキッチンなどの共用部は他の人も利用する。

みんなで使う場所があるというのは自然と交流が生まれるきっかけにもなるので、楽しい点でもある(というか私はこれが好きで多拠点生活を辞めたくなかったくらいな)のだが、めちゃくちゃ忙しくてすぐお風呂に入って寝たい時だったり、時々ある「一人でいたい時」だったりするとストレスになる。(そんなに余裕がなくなるほど仕事を詰め込むなという話ではあるのだが…。)

だから、「どうしても全部専用がいい時」「とにかく放っておいてほしい時」はホテルに泊まるようにしていた。

私の場合、忙しい時期や一人になりたい時期は一時的だ。基本的に使用していたADDressは月4万円(!)なので、時々(1ヶ月当たり1週間くらいだったと思う)ホテルに滞在しても、東京に一人暮らしするよりずっと安い。

「よくその性格で多拠点生活やシェアハウス生活してるな」と言われる(し自分でも思う)くらい一人の時間がないと死にそうになる私でも、そうやって複数の過ごし方を組み合わせることで、バランスを崩さずに多拠点生活を続けることができた。

多拠点生活をしていて良かったこと

他拠点生活の良いところはたくさんあるし、各サービスの良いこともそれぞれ異なる。

なのでここでは私が一番良いところだと感じているし、みんなにも知ってもらいたい「家と会社の行き来では出会えないような人と会える」ところについて書こうと思う。

1か所に定住して仕事をしていると、ほとんどの日が「家と職場の行き来」で終わる。外出自粛が続く現在は、休みの日にどこかに出かけるという機会も減るので、尚更家の外に出る機会はこの往来くらいしかしなくなると思う。

そうなると自然と、関わる人、見る景色、耳にする話題や口にする言葉は限定的になる。

限定的な環境での生活は、ある種快適だ。予想していなかった出来事に出合って疲弊する機会も少ないし、「いつもある」ものは安心感を与えてくれる。

ただ一方で、そうした環境には逃げ場や新しいものとの出合いが少ない。

私は仕事で疲れている時、職場から一人暮らしの家に帰るだけの暮らしだとついずっと仕事のことを考えてしまう。

別のことを考えてみようにも自分だけでいると仕事のことで頭がいっぱいになってしまい、逃げ場がないように感じてしまう。

でも、他の人、しかも普段の私の仕事について知らない人との交流の場があると自然とこの状態から抜け出せる。

しかも、そこにいる人たちは、私と全然違う仕事、中にはこれまで出合ったことのない仕事をしている人もたくさんいた。

営業している会社員さんもいれば、サッカーチームの運営をしている人や俳優の演技指導をしている人もいた。

仕事だけではない。暮らし方や経験も、十人十色だった。

リモートワークをしながら全国をひっきりなしに移動している人、行った先々で仕事が変わる人、1度も会社に勤めたことがない人など、「一般的な」会社員として会社との往来の中では出会うことのない、新しい暮らし方や生き方をしている人がたくさんいた。

こうした人々との出会いは、刺激的で楽しく、色んな生活の仕方があるのだということ、そして世界は広いのだということを教えてくれた。

限定的な環境の中で生活していると閉じ込められてしまいがちな、その環境での「常識」からも解放してくれた。

限定的な環境にいる時、そこでの「常識」が自分に心地良いものの場合は良いのだが、疑問を感じていたりなんとなく合わないと感じている場合は窮屈に感じる人もいるのではだろうか。

そういう人は、ぜひ自分と異なる常識やルールを持っている人と会って話してみてほしい。全然違う環境や生き方があるのだと知ることで、今のところで上手くいかなくても、自分に合う他の居場所を探せばよいのだと思うことができ、気持ちが楽になると思う。


また、生きづらさを感じていない人にも、多拠点生活はおすすめしたい。

普段会わない環境の人と話すと、思いもよらなかった仕事のアイデアが生まれたりなかなか気づけない「自分にできること」にも気づけるという良い点があるからだ。

私はSEの仕事もしているので、ある程度PCの操作に慣れているのだが、ある時滞在先でインターネットに接続できず困っていた人の設定を手伝ったら、「ありがとう!ほんとに助かったわ!!」と満面の笑みでお礼を言ってくれた。

職場の同僚ならみんな当たり前のようにできる作業なので、本当に嬉しそうにお礼を言われて少し驚くと共に、「役に立てて良かった」と自分も嬉しくなった。

都会やSNSの中だと、いわゆる「成功している人」が目立つし、「大きなこと」をしなければ役に立つとは言えないかのように感じられてしまう。

でも、実際そんなことはないのだ。仕事や趣味でちょっと料理が上手だったり、機械の扱いに慣れていたり、アニメに詳しかったりするだけでも誰かの役に立てるし、「ありがとう」の種になる。

目の前の人にとってはどんな大きなサービスよりも嬉しいことかもしれない。

多拠点生活はいろんな人に出会うことで、こうしたちょっとした「ありがとう」に出合う機会をよりたくさん与えてくれると思う。

さいごに

「誰が読むんだよ!」というくらい長いnoteになってしまったが、これでもまだ、伝えたいけど伝えられていないことはたくさんある。

noteでなのかTwitterでなのか未定だが、残りのたくさんのことも少しずつ発信していけたらと思う。(更新頻度も未定だが...)

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