中国を旅して変わる価値観。人の見方。
世界一周41日目(8/8)
日本にいる時には、
『中国人は日本のことが嫌いなんだろうな』
って思ってた。
そりゃあ、あんなにデモだの反日教育だの日経企業襲撃だの、食品偽装問題だのニュースで伝えられたらネガティヴなイメージを持つだろう。
いつだったかたまたま清水家に遊びに来ていた弟のバイト先の中国人留学生に訊いてみたことがある。
「ねえ、やぱっり
中国人は日本のこと嫌いなのかな?」と。
彼の答えはこうだった。
「いや、全然そんなことないよ。
デモとかの発信源は
やっぱりやめておいた方がいいけど、
他は全然そんなことないよ」
当時はそんな答えにイマイチ実感が持てなかった。日本に住む俺らが過剰にネガティヴなイメージをもってしまっているだけなんだって。
だけど実際にここに来て彼の言ってたことが理解できた。
「旅する漫画家」を名乗って、僕は中国を旅してきたわけだけれど、
みんな僕の漫画製作風景に興味を示し、気軽に声をかけてきてくれた。
「ニホンジン!」
西安(シーアン)のユースホステルで会ったウェブデザイナーとスポーツのコーチの資格を持つ彼は、特に用もないのに僕には声をかけてきてくれた。
「オハヨウゴザイマス♪」
重慶のホステルのスタッフは自ら「日本が好き」と僕には言ってくれて、とても親しみが持てた。
お金を浮かすために乗った寝台のない、1列5人がけの「硬座」では必ず誰かが僕に声をかけてきてくれた。
自己紹介も兼ねて自分が漫画家志望であることと世界を旅していることを伝えるとみんな興味をしめして僕のiPhoneの画像を見てくれた。
同じ飲食店に2回、3回と食べに行くとお店のおっちゃん、おばちゃんは親しみの目で僕に笑いかけてくれた。
楽器屋のおっちゃんはギターの弦を交換してくれた後、僕の歌を聴いてタバコを一本くれた。懐かしい味をゆっくり味わった。
(交換してもらった弦はたった一日で切れたけど笑)
重慶で話したホステルのスタッフは僕の漫画家としての生き方を聞いて
「nothing lost. nothing gain」
と言う言葉をくれた。リスクを冒すことを恐れるなかれ。やらなきゃなにも始まらない。
靴下を探してたまたま入った「Jack Jones」と言うお店で、接客してくれたおねえさんは僕にはノートを渡して何か絵を描いて欲しいと言った。
「ねえ、彼の分も描いてくれる?」
「もちろん!」
僕の拙い絵をニコニコした顔で喜んでくれる。
たぶん、僕が旅に出なかったらこんなシチュエーションにも恵まれなかっただろう。
自分からコミュニケーションをとることは得意ではない。特に英語で話しかける場合。いつも頭に浮かぶのは
『会話が途切れちゃうんじゃないかな?』
『おれのボキャブラリーで
言いたいことを言えるかな?』
『もしかして
ウザったく思われてないかな?』
ということ。
「漫画」という媒体は作者と読者を繋げるだけではなくコミュニケーションのツールとして新しいドアを僕に対して開いてくれていた。
全く話したことのない人とも繋がれるんだ。
「反日教育」なるものが中国にはあると言う。
中には日本を悪役にした「抗日ドラマ」というものも存在するらしい。
数々のネガティヴな情報たち。
僕は一度立ち止まって考える。
これは僕たちの方が中国を嫌うような情報を与えられているんじゃないか?
伝えられてることは全くの誤りというわけでもないのだろう。どこに国にもレイシズムに走る人たちがいて、政治的にそれらの感情が利用されてきた。
でも、スポットの当たる所が偏り過ぎてるんじゃないか?
一人の人間としての付き合いはもっとシンプルなのではないだろうか?
重慶から広州までの22時間の旅。「硬座」の列車の中で熟睡できない頭を抱えてそんなことを考えた。
向かいの席のおばちゃんが果物をくれた。
そうさ。
人の優しさはどこの国でも同じだ。