「重慶の街」
世界一周39日目(8/7)
『ここはどこだ⁈』
メトロから見える外の景色に驚いた。
街は港町の様に坂道だらけで立ち並ぶビルはまるで木々の様だった。
メトロが川を渡った時、この街がまるでSFかコミックの世界の様に思えた。
日本人の漫画家の何人かが
中国の街並みに影響を受けた理由が
分かった気がした。
この日僕が泊まった宿の名前は「Yangtze RiverInternational Youth Hostel」。
大きな橋の下にある建物の3階にホステルはあり、外からは内装が分からなかったが中に入って度肝を抜かれた。
エアコンの効いた室内。
くつろげるテーブル。
川が臨める窓。
バーカウンター。
心地よい音楽。
猫。
トイレのお香の匂い。
中はまるでカフェのような空間になっていた。
そして何よりスタッフの人当たりの良に驚いた。
「日本人デスカー?
わたし、日本人好キデース♪」
ここは親日国かなんかか?
コーヒーを煎れる機械の上にルフィとフランキーがいた。
ホステルのチェックインは12時からだったのでバックパックを置いて町歩きをした。
ユースホステルは山の下に位置していた。僕はそこから歩いていって橋を渡って向こう岸まで行こうと思っていた。だが、どこまで歩いても橋どころか、上に行くことができなかった。
重慶の街は周りを川に囲まれた山の街と言ってもいい。起伏が激しい街だ。船か車、もしくはメトロにでも乗らない限り徒歩で向こう岸に渡るのは難しいことが分かった。
僕が歩いた場所には長距離トラックの事務所があったり、車の修理工場があったり、町中至る所にある売店があり、地元の人が行く安いメシ屋があった。
バブリーな中国とは関係のなさそうな人たちの生活が垣間見れた。
そして、そこから森を連想させる建物を見るとそれは何かの階層を表しているんじゃないかと思ったくらいだ。
そこに住む人たちは文字通り
簡単には上に行くことができない。
行こうとしていた対岸には金色に光るビルが一際目を引いた。
貧乏だとか節約だとか言ってる割には食費がかさむ。
暑さのために何本もペットボトルを空け、アイスの誘惑に勝てずひっきりなしに駄菓子屋へ行く。
ガンガン照りつける日差しにぶっ倒れそうになりながら一眼レフのシャッターを切り続ける。
「もぐもぐ。ごくごく。パシャ!」
この漫画の様な世界を忘れない様に残しておかなくてはならないという思いと純粋な好奇心。
どんなに写真を撮ったところで、今こうして重慶の街で感じているこの感覚は今が一番鮮明なんだろうな。
これと言った頂上はなかったがある程度上まで登ると街が一望できた。
上に行ったからといってハイエラキーがあるわけでもなかった。
中国の日常生活が上まで続いているだけだった。
街の中心地は大型のデパートやブランド店が立ち並び中国の発展ぶりが伝わってきたが、その中にいても変わらない人々の暮らしぶりもなんとなく伝わってきた。
ヤマザキショップのような売店が乱立し、
(中国は人口が多いから利益の食い合いとかないのだろうか?両隣が同じタイプの売店だってことはざらにある)
中心地へ行くほどケンタッキーの様なチェーン店がある一方で、
ちょっとそこから外れれば安くご飯が食べられる飲食店がある。
中年のおっちゃんたちはヤンキーの座りをして休憩し、荷運びに備えている。
ホームレスらしき薄汚れた服を着た初老のおっちゃんがごみ箱から資源ごみを漁る。
バスやタクシーは何台も行き来し、ひっきりなしにクラクションを鳴らす。
斜め前の男性が痰を吐く。
(これは中国の文化なのか?)
38℃の気温の中、女の子たちはショートパンツやミニスカート、涼しそうなワンピースを着てヒールの高い靴を履いてる。
それが僕の目を通して見た重慶の街だった。
街にはエネルギーがあり、あまり変わらないものもある。
それは人も同じだ。
「みんなで
ナイトマーケットに
何か食べに行かないか?」
とユースホステルのスタッフに誘われた。
面白そうなので「of course!」と返事を返した。
それまでの間、漫画を描いていたのだがショータと名乗る大学生が僕の描く漫画に興味を示してきた。彼は父親が香港、母親が沖縄出身で中国人っぽくない顔立ちをしていた。
彼は英語やロシア語、ちょっとのフランス語を話す代わりにネイティブな中国語が時々聞き取れない21歳だった。
24:00を周り、みんなでタクシーをシェアしてナイトマーケットに向かった。
ホステルに泊まっている中国の若者たちと日本の旅人一人。
彼らが適当に注文したものは全て辛かった。
「僕、辛いの苦手なんだよね」とショータが言う。
そりゃダンスの踊れないアフリカ人もいるさ。
確か松本大洋もそんなこと書いてた。
この集まりはたまたまYangtzeユースホステルに泊まりにきている若者が声をかけ合い集まったものだと言う。てっきりみんな知り合いなのだと思ったら全然そんことなかった。
こういうその場限りだが温かみのあるの付き合いができる彼らに僕は感心した。
日本で同じことが起こりうるだろうか?
今日の食事会を企画して僕たちに声をかけてきてくれたあんちゃんは正規のスタッフではなくアルバイトだった。
一年間ここのホステルで働き、明日、正規スタッフ面接だと言う。
「Good Luck!!」
僕は言った。
「?
…ああ。グゥダラックね!」
彼の地元訛りの英語のに僕たちみんなが笑った。