「ロシアは今日も雨」
世界一周4日目(7月2日/火曜日)
梅雨が長引いた今のロシアは一日中霧に包まれ、雨が降ったりやんだりの天候だ。
ホステルに引きこもってても仕方がない。とりあえず、外に出ることにした。
ウラジオストクの街をあてもなく歩いた。
辿り着いたのは海辺の公園と遊園地。
ふりしきる小雨のせいで人はほとんどいなかった。
そういえば街の至る所に同じ売店を見かけた。働いてるおばちゃんも雨具を着て
こんな雨の中でも働かなくちゃいけないなんて大変だ。
ここで売ってるホットドッグ(50ルーブル/¥150)が悲しいほどに不味かった。
ウインナー、ケチャップ、かけ過ぎのマスタード...
はあ...こんなんじゃ滅入っちゃうよ...。
3人家族がケバブを食べてるのを見てつられて僕もケバブを買った。
100ルーブル(¥300)。
ケバブ屋のおっちゃんは「日本の包丁は切れ味が抜群だが、
オーストラリア製と中国製はイマイチだな」とジェスチャーで教えてくれた。
こんなことでも日本のことを褒めてくれると
嬉しいのはなんでだろう?
この旅のために一眼レフを持って来ている。一眼レフと言っても中古の「Cannon kiss X3」という化石みたいなやつだ。
この町に来てからもパシャパシャいろんなものを撮っているのだがー…
カメラのレンズを向けがたい状況があることを知った。
公衆トイレを住居とするホームレスたち。
隠れてクレープにかぶりつく子供。
地下路地の物乞い。
暇そうにしているカフェのお姉さん。などなど…。
旅先で見るもの全てがこざっぱりとした観光客向けの景色というわけではない。そういう人たちを見ていると、この国の生きずらさのようなものを感じる。
この国に生まれた人たちは一体どんな一生を過ごすのだろうか?
そう思わずにはいられない。
日本に生まれ、日本で育った僕は、20歳を過ぎるとなんとなく日本人の走る
『人生のレール』
のようなものの存在に気づいてしまい、それに反発してきたつもりだった。
「こんなんおれの人生じゃない。自分の人生を生きるんだ」と。
なんて高慢な考え方なんだろう。どこの国だってそうだ。与えられたチャンスの中で生きていくしかないんだ。ただ、僕はそのチャンスに最大限に活かしたい。
夢や希望、理想と現実。
自分が自分であるために僕は旅をする。
この日の旅する漫画家シミの執筆場所は
駅カフェのテーブル。ショッピングモール5階のカフェだった。
描きやすさは高さに左右されるんだけど、平らなテーブルと椅子さえあれば僕は漫画を描ける。
今泊まっているホテルにもう一泊することに決めた。
だって駅チカなんだもん。
宿のベッドの上で作業していると上のベッドに日本人がやってきた。内田さんという方だった。
昨日アスカさんとアキコさんと行ったレストランが美味しかったですよ。とおススメすると「奢るので一緒に行きましょう!」とおっしゃってくれた。
最近色んな人からごちそうになり過ぎだなぁと思いつつも、一緒に行く事にした(笑)。
しかし外は鉄砲水が吹き荒れ、大雨に変わっていた。
やむなくホステルに退散することに。
おごってもらおうとするからバチが当たったのかもな。
代わりに一本100ルーブルのビールをホステルでごちそうした。2本目はごちそうされたんだけどね...w
「次に会った人に返してあげて下さい!」
僕の口からそんな言葉が出た。
旅に出てまだ数日しか経っていないが、旅をしているとたくさんの人から親切にしてもらうことが多い。あまりにも受け取りすぎて、誰かに何かを返したい。そんな気持ちが溢れたのだと思う。giveから別のgiveへ。そんなサイクルが続けば僕らの旅はより良いものになっていくはずだ。
ホステルの談話室で中国に関する色んな話をした。
内田さんは中国の日系企業で営業のお仕事をされていたそうだ。今は旅人をしているそうだ。
内田さんと話していて僕はあることを決めた。
野宿用で買ったテントはここに置いていくことにする。
色々理由はあるんだけど、一番の理由は死んだら意味がないから。
今年も野宿した日本人がどこかで殺された話を聞いたそうだ。テント越しにブスッといかれたらしい。
そうだよ。死んだら終わりなんだよ。
世界一周の旅に出る僕を、漫画家になる夢を持った僕をいろんな人が応援してくれた。それに応えなくっちゃだめなんだ。だからテントはここに置いて行きます。
6,800円の安物テントに固執する意味もないしね。
そんな風にして人との出会いが僕を変え、
また別の道へと導いてくれるんだ。