冬の京都で過ごす 19日目 立春
6時、目が覚める。ぼんやりと仕事のことを思う。正確にいうと、仕事で関わってる人たちのことを思っていた。
窓からゴオオオオという悪魔みたいな轟音が聞こえるので、備え付けの時計を見る。6:28。
そのままアラームをOFFにする。
ここ数日で分かったことだが窓を少し開けると轟音は消える。
今朝は、建仁寺両足院の座禅体験を予約していた。3年前にも一度体験したがあらためて行ってみようと思い、そうすることにした。コーヒーを淹れて、ヨガ10分。
部屋に清掃が入る日なので出ているものを片付ける。
7時半、あらかた片付いたところで窓を閉める。また轟音が鳴り出す。
傘を持って廊下に出る。ドアサインを「清掃してください」に貼り変える。
外に出ると雪が降っている。建物にも薄く積もっている。雪を払っていない車は雪煙を上げながら走っていく。
錦天満宮
「雪ですねぇ」「見事ですねぇ」
「さむい!」
八坂神社前のSHIZUYAで朝ご飯を食べる。
花見小路を抜けて急いで建仁寺に向かう。雪が強くなってきた。
建仁寺には予約時間に着いた。
もうすでに説法は始まっている。空いている座布団がひとつ。その席を勧められる。
お坊さんは3年前と同じお坊さん。自己紹介の記憶を引っ張り出す。
座禅の形の説明。足の組み方、姿勢、手の組み方、目をつぶるかは流派による、そのあとは実際にやってみる。
まずは音に耳をすます。音だけに集中する。ストーブのスイッチが切られる。次に、ゆっくりとら鼻から吸って口から吐くという呼吸法でさきほどの3倍の時間。
座禅は、観察で、とことん考えることだとお坊さんはいう。観察して理解することで自分の思考をコントロールできるようになるらしい。これは3年前にも言っていたのを覚えている。
心が大きく動かされたときに、怒りや悲しみのネガティブさに対する使い方ができるとのこと。
質疑応答タイムで、いつ座禅をしているのか?という問いから派生して、ポジティブな使い方として、座禅は、感動をより深く味わうために有効だという。思考をコントロールすることで雑音を排して、純度100%の感動を味わうことも可能とのこと。
これは初耳。前者の体験談として「テトラポットが…」といっていたが京都とテトラポット(海にあるイメージ)がうまく繋がらずしばらく考えた。
そして、これも3年前にはなかったが、あの棒で叩くのも望めばやってもらえるようになっていた。「仕切り直しが必要なときに叩きます。目の前に私が来たら手を合わせてください。頭を下げて両手(で自分)を抱えて体を丸めて、肩甲骨を打たれないような姿勢をとってください」
開始10秒で打ってもらっている人がいて衝撃だった。響く音を聞いて絶対に打たれたくないと思った。
ゆっくりと歩くお坊さんの裸足が目の前に来たところで「コツンッ」と音がした。梁にあの棒をぶつけた。そのあとは梁の下を通るときは棒がぶつからないように避けていた。梁の下を通るたびに気になってずっと見てしまった。
終了したので建仁寺を出る。気づいていなかったが足先が凍りそうなほど冷たくなっている。
急いでホテルに戻る。
13時、昼飯に出る。寒いのでカレーにする。よく晴れているので部屋から持ち出した傘はホテルの傘立てに一旦置かせてもらう。
支払いを済ませて外に出る。青空からはらはら雪が降っている。こういう事象になにか名前があったような、と思い、数歩歩いたところで「風花」と思い出した。
ちょっと寄り道。
19時、夕飯に出る。昼のカレーがまだ腹にいるが仕事はまだ片付かないので気分転換に外に出る。スーパーで「とようけ屋山本」の豆腐を買う。
23時、PCを閉じて寝る支度をする。窓からは朝と同じゴオオオオという轟音が聞こえる。窓を開ければ収まるのだが、この寒さでは開けるわけにはいかない。仕方ないのでとことん味わうことにした。
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