冬の京都で過ごす 16日目 立春
6時半、備え付けの目覚ましのアラームを止める。すぐに寝起きの頭が今日はポンポン山にハイキングだということを思い出す。
いつもの3倍速でテキパキと動く。コーヒーを飲んで、ヨガ15分、今日は部屋に清掃に入る日なので出ているものを片付ける。
テレビの天気予報は、今日の気温が16°であること、京都では春の訪れは梅、春の終わりは山吹が告げることを伝えている。
7時半、スマホのアラームが鳴ったので止める。
8時、ドアサインを「清掃は不要です」から「清掃してください」に貼り替えて外に出る。
歩きながら昨日立てた今日の予定をスマホで確認する。
完璧な計画に満足しながら京都河原町まで向かっている途中、登山靴の中の小石に気がついた。
08:13、赤茶の阪急電車がホームに入ってくる。乗り込むと濃い抹茶色のシートが3人・2人・3人ごとに肘置きで区切られている。
「昨日眠れましたー?」「ぐっすり」
08:40、高槻市駅で改札近くのパン屋でパンを3つ買う。サンドイッチにすべきかハードなパンにすべきか迷って、結局好きな方を買う。
バス発車まで10分。ここからバス停まで11分。飲み屋街をまっすぐ走る。店の入口に一瞬映った自分の走る姿を見て「ちゃんと足上がってる」と思う。
08:53、JR高槻駅に到着し、乗るバスを探す。発車時刻になっても見つからない。軽装な登山者がいたので、ここやここやと近づいて、バスの案内板を見たら「美しの丘」の文字がある。ここやここやと思ったところで、案内板の「南バス」の文字を見て、北口ではなく南口にいることに気がつく。ここじゃない。
駅を通って南口に移動。こちらの方がバスの案内が細かい。早々に乗るバスの発着するバス停を見つけた。発車1分前、来ているバスに飛び乗る。09:11。
予定のバスに乗れなかったので今日の予定時間をひとつずつ後ろに頭の中でずらしていく。
…朝起きれた、ヨガもした、服のチョイスはちょうどいい、財布は持ってる、部屋もきれいになってる、バスに乗れた、パンと水を買えた、走るフォームは良かった、天気は晴れてる、今のところできなかったことよりできたことの方が多い。
バスを下車。巡礼の傘を被った黒いスエットの女の子とすれ違う。田んぼを見回している。
害獣防止の金網を開けて中に入る。後ろから来た人に声をかける。「開けといて大丈夫ですか?」「あ、大丈夫ですよー」
うっそうとした道で薄黄緑で背中から尾にかけて青い小鳥を見る。写真を取ろうと追いかけてるうちに拓けた車道に出た。
09:48、神峰山寺
「まぁ、このへんも、そろそろ、なんか芽がでてきますよね」「そうそう」
「ゆっくり歩いてね」
あまり途絶えずに人を見かけるので人気のお山であることがよく分かる。
本山寺・ポンポン山の看板のあたりから勾配が高くなる。振り返る。景色に「すごい」というと、後ろの人も振り返って「すごい」と言った。
しばらく人がいないなと思ったら赤いバールのようなもので倒木の皮を剥いでいるおじいさんがいる。離れてすれ違う。
ぶいぶいと鳴きながら散歩するフレンチブルとすれ違う。鼻炎だろうか。今日は晴れてるが花粉は少ないと朝のテレビでいっていた。
トレラン勢とすれ違う。さっきはのぼり、今は降り。多い。
本山寺
クマ注意の張り紙にびびって前を歩く2人に距離を取って同行する。2人が休憩に立ち止まったところで別のグループがくる。
熊鈴がリュックに入っていることを思い出す。今のところ、スニーカーではなく登山靴で来たこと、熊鈴を持ってきたことも加点されている。
辺りからひと気がなくなりまたクマが頭をちらつき始めたのでリュックから熊鈴を出す。
ぴ ぴ ぴ チチチチ と鳥の鳴く声とさわさわとした葉の揺れる音だけが聞こえる。
うっそうとした道、熊鈴の留め金を外す。10秒もないうちに人が見えたので止める。鳥の声も止まっていた。
ばふっと鼻息が聞こえたのでクマかと思ったらオジサンだった。もっともバカげてるのは日差しが照り返す木の幹を「シロクマ…」とびびったことだ。
山頂の看板がある。
11:47、ポンポン山山頂に到着!オンスケです!
「証拠写真こっち入ってー」「見合い写真」アハハ
「はーい、ぽんぽーん」「はーい、ぽんぽーん」「はい、チーズ!」
「逆光になるから」「逆光やね」「はいっチーズ」「いい顔してる」
「あれが愛宕山」「あれがー」「大変だったねぇ、」「私、登ってませんアハハ」
「鉄塔が見えたら生駒山」「あれが金剛山」
12:30、持ってきたパンも食べたので下山開始。
「こんにちわ」「こんちわ」「いい天気ですぇ」「気持ちいいねぇ」
「こんにちわー」「こんにちわ」「(シャツの)ボタン空いてますよ」「いや、暑いから、開けてんのよ」
「おなかいっぱいやわー」「食いすぎたー」「こんにちわー」「こんにちわー」
「いっちにっ、いっちにっ、」赤ちゃんをしょった若いお母さんが後ろからやってきたので追い抜いてもらった。
沢が流れる。水がきれい。
13:10、善峰寺に到着。
山門から出てバス停に向かうがバス停がみつからない。バス駐車場にはバス停はないのか。
早々に諦めて歩き出す。「長岡天満宮道」の標石を見てスマホで距離を確認する。5kmないくらいなので歩いて行ってみることにした。
道沿いのお店に入っておやつをする。桜湯と抹茶餅を注文。
壁にはられたメニューの横に、額縁に入った「一期一会」
「今日晴れてますね、暑いですね」「きっつかったやろーようきはりましたな」「すぐ3分くらいのとこにあります。毎時29分です」「おおきにおおきに」
長岡天満宮
「お祭りやるんやって」「え?おまつり?おまつりいきたーい」
京都河原町に戻り、夕飯はぜいたくしてキムラですき焼き。
おわり良ければ、すべて良し!