冬の京都で過ごす 1日目 大寒
7時、スマホのアラームで起きる。
音量最大にしていたのですぐに止める。
キッチンに移動してヤカンに火をかける。
お湯が沸くまでの間に、食器を棚にしまったり、ゴミ箱にたまったゴミをまとめたり、洗濯物を洗濯機につっこんだり、と片付けをする。
ヤカンの音に呼ばれてキッチンに戻る。コーヒーバックが入ったカゴからどれにするか選ぶ。今日は岡山にした。
9時、東京駅。よく晴れている。
気温は4°、風速5m、と天気予報アプリでは表示があるが風はない。空気はパリッと冷たい。
京都への旅なら日本橋からスタートがいいのではないか?とかどうでもいいことを考えながらグランスタをさまよう。
浅野屋の看板のおじさんのことを「たぬきが化けてる」と思ってた子がいたのを思い出す。
弁当を買って新幹線ホームに向かう。改札にチケットを入れたが通れない。もう一度改札にチケットを入れたところで「交通系ICをここにタッチしてください」駅員さんに言われる。何度乗っても乗り方が身についていない。
自分の乗る車両がすでにホームにいたので、そのまま乗り込む。チケットの席番号を確認して、3列シートの窓際の席に座る。
後に続くようにフォーマルな服装の男の子が通路側の席に座った、途端にテーブルを出す。
…コツンっいう音に視線を落とすと何か足下に転がってきた。「すみませんすみません」少し腕を伸ばして前席の下から拾って渡す。
テーブルの上にはご祝儀袋。スティックのりを手に持っている。なるほど。
新幹線車内で急いでご祝儀を用意していてスティックのりのキャップを落としてしまったようだ。
彼がおおらかな性格であることが容易に想像できる。
「ありがとうございますありがとうございます」ひとしきりお礼を言われたので視線を戻す。その後、今度は筆ペンを落としていたが、そいつは拾わなかった。
10時、真ん中の席にも女の子が座り、車両が動き出したところで弁当を広げる。
食べ終わってテーブルを戻すと真ん中の席の女の子が待ってきたパンを食べ始めた。自分が食べ終わるのを待ってくれていたのか。
お腹が満たされてしばらく寝てた。起きたら米原を過ぎて間もなく京都。外は雪が積もっている。
13時半、京都駅で近鉄線に乗り換える。初日は奈良で若草山の山焼きを見る予定だ。山が焼かれると鹿はどうなるんだろう。
特急車両の電光掲示板には全席指定の文字。近くの特急券の発券機を見たが行先に「近鉄奈良」がない。これは駅員さんに聞いた方が早そうだ。
「特急は特急券が必要なんです。この橿原神宮前行きが出たら発券機が奈良行きに変わりますんで、そしたら買ってください。少々お待ちください」無事、買えたので電車に乗る。
電車内は静か、時々子供のヒソヒソ声が聞こえるのと、これも時々1人男性がノリノリで空耳らしく歌ってる。
平城京が見えたら奈良はもうすぐ。
近鉄奈良駅に到着。チェックインの時間まで付近をうろつく。
「山焼き行かれるんですか?」「歩きですよね、大仏池が隠れスポットなんですけど。てがいもんから東大に抜けるほっそい道があってそこがスポットなんですよね。こう、視界が開けてる。ちょっと池の名前だけでも調べてみますか。…出てこないですね。でもおすすめです。」
「スッキリ飲みたいなら苦味って書いてないのがいいです。ショコラか人気ですね。」「それは奈良の陶芸作家さんの作品ですね。」
15時半。雪がちらついてきた。すぐにやんだ。
興福寺付近は人が多い。ここ数年で新しいお店が増えたのか。奈良、ずいぶんモダンな場所になってきた。
「今日は一万円が続いてておつりが…すみません、探しますね…あった!」
今日の宿にチェックイン。
「明日のモーニングのお時間何時にしますか?…そんな悩まないでだいたいで大丈夫ですよ」
ご婦人2人とエレベーター相乗り。すぐに降りていく「お先に~」
部屋の窓を開けると銭湯の煙突が見える。銭湯の煙突よりも特筆すべきことがある。外が吹雪いている。荒天中止だっけ?とか、靴は防水だっけ?とかごちゃごちゃ浮かんできたが、見なかったことにして奈良公園に向かうことにした。選択肢はひとつだから悩んでも仕方ない。
外に出て人の流れに乗って進む。歩いてるうちに少しやんできた。
ベスポジと思える場所で待機。まだ人はまばら。
「今日は山しめってるから焼いた後…勝手にやりよる」「すごい、山火事みたいよ」
ブラックペッパーホールくらいの雪の塊が降る。また吹雪いてきた。あと45分の耐久戦。
「トゥルーラブって曲なかったっけ」「ありそう」「尾崎豊みたいな。昭和の人」「ありそう」
「トンボ 長渕剛」「ぼ、ぼ、ボクノート スキマスイッチ」「Chase the Chance 安室奈美恵」「スカーレット スキマスイッチ」「トラブルメーカー 相川七瀬」「奏 スキマスイッチ」「スキマスイッチ好きだねー」
18時15分 花火が打ち上がる。
「シカや」「シカ」「またシカ見たい」
花火が終わったところでここからが本番の山焼き。
寒さの限界でここいらで撤退とする!寒さと空腹の限界です!早歩きで近鉄奈良まで戻る。その足で飯屋に入って夕飯。あったまる。
漬物とお茶のうまさに関西にいることをあらためて実感した。
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