仲邑さんと巡る前川建築ツアー想起
4月30日(日)、
弘前の前川建築に都合35年関わった仲邑さんを東京よりお迎えし、18人の参加者の皆さんと前川建築を巡ってきました。
「大学は建築学科を目指しています。地元を離れる前に弘前にある建築をしっかり見ておきたい。」という高校3年生2人を含め、大変熱量のある皆さんが集まってツアーはスタート。
市役所から始まり、市民会館、市立博物館、緑の相談所、中央高校、旧木村産業研究所(現こぎん研究所)、そして最後に斎場。3時間を超えるツアーでしたが、仲邑さんは疲れも見せず、それどころかツアーが進むうちにどんどん興に乗って、お話が止まらない止まらない(^^)
さくらまつり期間中ということで屋上に登れました。食堂を作ろうとしていたあたり。脇の小窓は採光のためではあるけれどコルビジェを意識している部分。
続いて市民会館。管理棟には「はつり」壁が複数。はつり方もそれぞれの場所によってその大きさを変えていて壁の表情が違います。「はつり」といえば博物館と斎場だと思っていたので新たな発見でした。寒い外から中に入ったときの暖かさに繋がる天井の灯り。
野外音楽堂のイメージを持っていた壁を抜けて、隣の市立博物館へ。
市立博物館も、このくらいのスケールが好きだと前川さんはおっしゃっていたそう。ヒューマンスケール※という言葉がよくお話に出てきます。
※ ヒューマンスケール=人間の尺度を基準として、人間が安心して快適に感じられる適切な空間の規模やものの大きさを示すもの
博物館のあとは、弘前公園を抜けて緑の相談所へ。遅咲きの桜も楽しめました。
緑の相談所は、勾配のある屋根が桜を迎え入れ、公園に来た市民が桜や緑を楽しめるように2階に上がると外へ抜けるように設計され、ベランダからより近くに花を楽しめる構想。正面から入ったときにガラス越しに目に入る大きな桜は、最初咲かなくなっていたんだけれど、工事中にケアをしたら翌年からまた咲き出したんだよ(^^)とニコニコ話される仲邑さん。長年使わている中で生じている残念ポイントも紹介。
「緑の相談所は今まで何回も見ていたことがあり、暗いところというイメージがあったが昔は明るく素敵な場所だったということがわかった。今よりも昔の方が良いのは珍しいことだなと思った」と、高校生の1人が後で感想を寄せてくれました。皆さんいろいろな想いを胸に公園周りの最後、中央高校へ。
中央高校は日曜でも部活等で生徒さん達が活動しているため部外者は立ち入り禁止。なので後ろ姿を眺めながら写真での紹介。
仲邑さんは中に入れない中央高校のためにたくさん写真を準備してくださっていました。前川さんは屋根の下は色がないと寂しくなるからと橙系の色を入れ、正面の大きな扉には力のない子でも(当時の中央高校は女子校)よりスムーズに開閉できる仕掛けを準備、子供たちにこそ本物に触れてほしいと、音にも妥協のない講堂。
いつか中を見学できる日が来るといいなぁと、後ろ髪を引かれる思いで木村産業研究所へ。
この日はなんと 参加者の中にこぎん研究所の社長さんがいらしたので、普段見せていただけないバックヤードまで拝見出来ました!
社長さんからも、普段前川建築と共に暮らして感じることや苦労など、お話していただきました。成田社長ありがとうございました(^^)
前川國男がコルビジェの下で学んだ全てを注ぎ込んだ帰国後初めての建築。
最後は斎場。斎場に行く前から、大将が空間4メートルのところに浮かんで待ってるよ(^^)とお茶目に話す仲邑さん。
弘前の斎場は、斎場としては世界一美しく、慈愛に満ちた空間なのではと感じます。利用するときにはなかなか建築家まで想いが及ばないですが、でも事前にこうして前川さんや仲邑さんがどのような想いを建物に載せているのかをゆっくり感じていただけていたら、送る際に、故人と向き合う時間を豊かに過ごせるのではないでしょうか。
と、今回も仲邑さんの思いが伝わる前川建築ツアーでした。
参加者の感想
設計に携わった方のお話が聞けて楽しかった。
イヤホンがよかった。話がよく聞けた。
仲邑さんの情熱を感じられました。
設計の時にどんなことを考えていたのか、どんな目的で設計したのかを細かく知れる機会、参加できてとてもよかった。
今回お申し込みが大変多かったので、参加していただけなかった方のために、晩秋にまた企画する予定です。参加希望の方は、ご希望があれば事前にお知らせ致します。
私事ですが今回ツアーに先立ち、前川さんにご挨拶に行ってきました。
3月の東京。千駄ヶ谷の仙壽院に眠る前川さんのお墓の前には桜が満開の花をつけていました。とても日当たりがよく、春には桜を眺められるなんて、素敵なところにおいでの前川さん。弘前にたくさんの素敵な建築をありがとうございました。
旅する弘前
前田優子
maedaita@gmail.com