【パース vol.9】ピンクレイクの色、空の色、雲の色、そしてその下に眠る泥の色、自然の色って美しい。そしてきっと人も同じだ。
ピンクレイク。
ピンク色をした湖の写真を見た時のあの衝撃波今でも覚えている。
Instagramのタイムラインに映し出される鮮やかなピンクの湖。
これは一体何?リタッチ加工?
いや、それよりも、私はいつかここに行けるのだろうか?自分の目で観れるのだろうか?
そんなあの時の“いつか”が今、目の前にあった。
西オーストラリアには2つのピンクレイクがあるが、私が訪れたのはパースから北に車で6時間強のハットリバー・ラグーン。
西オーストラリア州北部の大きな町、ジェラルトンを拠点にすると1時間強のドライブだ。
ピンクレイクは午前中、それも10時くらいまでが1番鮮やかだ、という情報があったので早起きを頑張る(早起きって本当に苦手!)。
連日の長時間ドライブの疲れは着実に溜まっていたけれど、目覚ましに従ってなんとかベッドから這い上がる。
眠くて仕方ない。
簡単に食事と化粧をして8時過ぎに宿を出発する。
途中ガソリンスタンドに寄って給油と目覚めのコーヒー(オーストラリアのコーヒーは$1コーヒーでもクオリティが高い)。
コーヒーをホルダーに差し込み、さぁ出発!
とりあえず1号線を北上し、ノーサンプトンでポートグレゴリー・ロードを左折、ルートは簡単だ。
相変わらずたまに出会ってしまうカンガルーの可哀想な姿に心が痛む。
羊たちが木陰で休んでいる。
可愛いなぁと車を止めたら驚いて逃げていった。
なんか邪魔してごめん...と今度は罪悪感。笑
そんなのんびりとしたのどかな道。
初めに気付いたのは雲の色だった。
真っ白だった雲があるポイントをすぎた瞬間桜色に変わった。
そしてその少し後に鮮やかなピンクの湖が目の前に現れたのだ。
グレゴリーという小さな町に続くレイクサイドロード。
その途中にこのピンクレイクのルックポイントがある。
そこで車を止めて湖畔まで下りた。
こんなに綺麗な湖なのに、私ともう一組のオージーカップルのみしか湖畔にいない。
そんなオージーカップルもすぐに湖を後にしたので、ほぼほぼこの絶景を私が独り占め。
何だ、この贅沢な時間と空間。
ハットリバー・ピンクレイクの色素の原因は塩だ。
なので湖岸の所々に塩の結晶が固まっている。
北海道の青い池の時もそうだったけれど、自然の色とは思えないような鮮やかな色を目の前にすると、私は少し恐怖を感じる。
RPGによくあった毒の池のような、そんな何とも言えない禍々しさを感じるのだ。
だか、私はピンクの水に足を浸けれず、なんとか水に触れないように恐る恐る足を進める。
そうやって慎重に足を進めていたはずなのにちょっとした油断でズボッと足が泥にはまった。
うわーっ、やってしまった。
泥から足を抜くと見事にグレーの泥がこびりついていた。
そんな足を見て「なんだ、ピンクじゃないんだ」と的外れな事を思った。
持っていた除菌用のウェットティッシュで拭いてみるけれど、こびりついた泥は綺麗には取れず乾いていく。
片方の足だけなんとも言えないグレーのグラデーションだ。
固まる前のコンクリートのような泥。
綺麗なピンク色のとは正反対のこの泥よ、一体どこに眠っていたんだ...涙。
それは、黒だと思っていたものが白だった、なんて単純なことではなく、たった一色だと思っていたものがよく見るとじつにいろんな色を秘めていた、という感じに近いかもしれない。
そんな時、ふとこの言葉が頭に浮かんだ。
これは私の大好きな本の一つ、森絵都さんの「カラフル」の一節だ。
人間は1色じゃなくいろんな色を持っているんだ
持っていいんだ。きれいな色も汚い色も。
この小説は前世で大きな過ちを犯した魂が、その過ちに気付くまである少年の体にホームステイをするというファンタジー。
この少年の周りには一見どうしようもない人間ばかりどけど、ふと違うサイドから見てみるとみんなそれぞれ色んな想いを持っていると気付く時の言葉だ。
自分で自分が嫌いになりそうな時、人とどうしても分かり合えない時、私はいつもこの言葉を思い出す。
人間が色んな面を持っているように、自然も同じようにいろんな面を持っているのだ、と思った。
当たり前だけど綺麗な花は見えないところで大きく土を絡ませながら根を張っているし、変な話だけど、どんなに透明で綺麗な川でもそこに住む生物の糞がまじっているものだ。
でもそれは全て必然で、そういうものがその美しさを支えていたりする。
たまに自分が嫌いになってしまうような出来事もあるけれど、それももしかしたら私を作り出す要素だったりするのかもしれない。
そんな考えが頭の中で駆け巡る。
目の前には鮮やかなピンク色をした湖が、太陽を浴びてキラキラと輝いている。
泥を拭き取る事をやめた。
この泥もピンクレイクの美しさを出す要素の一つだと思うと不思議と汚いと思わなくなってくる。
今度、自己嫌悪に陥った時、私はこの言葉と一緒にこの景色を思い出すと思う。
そうすれば私はきっと自分のそんな嫌な部分も受け入れてあげられる、嫌いにならないであげられる。
自然の色の美しさを前にして私はそんな事を思ったんだ。
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