【パース vol.2】私が恋に落ちた日
オーストラリアは青い。
海も空も驚くほど青い。
青、蒼、碧。
いろんなアオがあった。
初めてオーストラリアを訪れた時はその色と多さに驚いた。
でもパースは青いだけじゃなくて、同じくらい緑だった。
空の青と草木の緑と、そこに少しの雲の白。
作られたものではない、ナチュラルな色は美しい。
そう感じたのはキングスパークのメモリアルに着いた瞬間、そして恋に落ちた瞬間だった。
この日私はのんびり歩こうと決めていた。
旅先の移動にタクシーや電車を使うのもありだけど、私はひたすら知らない街を歩く事が好きだ。
その街の空気を感じながら、徒歩じゃなければ見落としてしまうようなお店や美味しそうなレストランを見つけたり。
そんな時間に何より旅の楽しさを感じたりする。
が、1月末のオーストラリア、季節は夏。
ちょうど私が滞在していた週は、オーストラリアでニュースになる程の猛暑日だった。
朝イチからファーマーズマーケットに行き、そこからキングスパークまでかれこれ炎天下の中歩く事、なんと3時間。
うん、正直言うと少し、いや結構後悔をしていた。笑
あまりの暑さに用意していた500mlの水はすぐになくなった。
途中スムージーを手に入れて、あと少し、あと少しともはや半分は意地、あと半分はなぜかここでバスに乗ったら負けた気がするという意味不明な自分との戦いで歩き続けた。
キングスパークにさえ入ってしまえば木陰に隠れられる、そして終わりも近い、そう思っていた。
そしてそんな安易な考えをした自分を呪ったのはキングスパークに入って遊歩道をかれこれ20分は歩いた頃だったろうか。
キングスパークは思っている以上に広かった。
約4㎢、ディズニーランド5個分だ。
5分、10分でメモリアルに到着も出来る訳もなく、いつの間にかお昼になっていた。
そして太陽はほぼ真上にあった。
そんな時間に木陰が出来るわけもなく、容赦なく日差しは照りつける。
遊歩道に入ってしまった事でバスに乗る事も出来ない、結局前に進むしかこの炎天下から逃れる方法がないのだから、もうほんとに泣くしかなかった。
そしてこんな炎天下の中歩いてるのは私くらいで、遊歩道なのに誰一人すれ違う人なんていない。
私、もしここで熱中症で倒れても、きっと誰にも見つけてもらえず死ぬんだ。
本気でそう思った。
人生で初めて熱中症で死を感じたし、水を飲みきった自分にも激しく後悔。
もはや最後は一点を見つめてただ足を前に進めるだけの生きる屍状態だったのだと思う。
メモリアルに近づくにつれてちらほら現れた人々に「Are you ok?」とよく声を掛けられた。
でもね、メモリアルにやっとの思いで着いて、ぐるっとパースの街を見下ろした時、暑さとか渇きとか今までの死にそうな出来事全部忘れて、その景色に言葉を失っていた。
なんて綺麗なんだろう。
青が、緑が、全ての色が美しくて、絵画のようで。
「世界一美しい街」だ。
この瞬間、私はこの街に恋をした。
人には中々惚れないくせに、私は街にはよく恋をする。
世界で何回目かの恋にパースで落ちたんだ。
芝生の上で寝転がるカップル。
裸足で遊んでいる子ども達。
あそこではティーンエイジャー達がガールズトークに花を咲かせている。
真っ青な空とスワンリバー、そして芝生や木々の緑。そんな美しい色彩の中で各々過ごす人々。
世界一美しい街でシンプルに生きる。
なんて贅沢なんだろう。
喉が渇いた。
自分の体がカラカラに渇いている事を思い出して、近くのカフェでLIFT(オーストラリアのレモンソーダ)を買った。
330mlを$5で買ったのに、隣の売店では600mlが$4.5だった。
なんでー!笑
納得のいかない値段設定に疑問を持ちながら、蓋を開ける。
普段あんまり飲まない炭酸がしゅわしゅわと喉を爽快に通っていく。
上から下に、じわじわっと水分が染み渡っていくのがよくわかった。
LIFTってこんなに美味しかったっけ?
なんだか値段設定よくわからないけど、うん、これは十分$5の価値はあるからいいや。
やっとこさ見つける事が出来たひさしぶりの木陰の下は天国かと思った。
そのままぼーっとする。
ベンチに座って時間を忘れてぼーっとする。
こんな時間の使い方が出来るようになったのはオーストラリアに来てからだ。
何もしない事を楽しめる。
日本にいる時、どこかいつも何かに追われて、せかせかと生き急いでいた、と思う。
「やる事がない=何かしなきゃ」という公式があって、何もしない時間をもつ事がなんとなくもったいない気がしていた。
そんな私にオーストラリアはそんな時間は実はすごく大切なんだよ、という事を教えてくれた。
オーストラリア最期の街で、私がオーストラリアで学んだ一番大切な事をしている事がすごくくすぐったかった。
私、少しオージーっぽくない?笑
来月にはオーストラリアを離れるけれど、日本に帰ってもこのオーストリアのDNAは私の中に残る、死ぬまで。
ありきたりの言葉だけど、オーストラリアに来て良かった。
もしここでの生活がなければ私は突き進むことしか知らない人間になっていたから。
それが悪いとは思わない。
けれど、たまに自分の歩いてきた道を振り返ったり、ふっと力を抜いて自然の一部になったり、自分と向き合ったり、そんな時間は私と私の大切なものを見失わないようにしてくれるはず。
パース。
世界一美しい街はもうめちゃくちゃ暑くて、だけど青と緑が鮮やかで、そしてたまにはゆっくりしようよと自分と向き合う時間をくれる街。
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