東大雪に眠る国鉄の遺構を訪ねて 秋の北海道旅行記#2
前回に続き,日高,東大雪の旅行記をお届けする。
日高
襟裳岬
大樹からは海沿いを南下して,襟裳岬を目指す。
途中,広尾の市街地を過ぎた先の道路脇には,フンベの滝がある。冬は美しい氷柱が見られるそうだが,まだ凍っていないこの時期は立派とは言い難い滝であった。とはいえ,道路脇の岩壁にいくつかの滝が流れる姿は面白げがある。落氷注意の標識があるのも面白い。
広尾からさらに南下した先が襟裳岬である。北海道の中心から下に出っ張っているところの端であるから,北海道最南端かのようにも思えるが,実際には最南端ではない。
襟裳岬は日高山脈の影響を受けて風が強く吹いている場所だそうだが,この時は風は落ち着いていた。
襟裳岬からは西側を北上してゆく。その先には,アポイ岳と呼ばれる山がある。アポイ岳の標高は 810 m と日高山脈の中では低いが,標高 350 m 付近から高山植物が現れるそうで,周辺はジオパークにも指定されている。
アポイ岳であれば登山初心者でも登られそうだが,今回は時間がないため,登山口横にあるビジターセンターにだけ立ち寄った。
日高本線廃線跡
アポイ岳の少し北西にある街,様似は,2021年に廃止となった日高本線の始発駅があった場所である。現在その駅は観光案内所となっているため,帯広へ戻る前に立ち寄った。
東大雪
国鉄士幌線の遺構を訪ねる
翌日は帯広の北側,東大雪へと向かった。その目的は,国鉄士幌線の廃線跡を訪ねることである。
国鉄士幌線は,民営化直前に廃止となった,帯広から十勝三股を結ぶ路線であり,現在は東大雪エリアに橋梁などの遺構が残っている。
特に,糠平湖内にあるタウシュベツ川橋梁は,ダムの貯水状況によって見えたり見えなかったりすることや,通常の10倍のペースで劣化が進むことなどの珍しさもあり,鉄道ファン以外にも人気のスポットになっている。
そんなタウシュベツ川橋梁に近付くには,鍵のかかった林道を通る必要があり,その鍵は1日15組限定で事前予約できるほか,ツアーでも行くことができる。
今回は,私は初めてのタウシュベツ川橋梁であったので,ツアーに参加することとした。
タウシュベツ川橋梁では50分の時間が設けられたが,対岸まで行くと時間は足りないぐらいであった。
国鉄士幌線には糠平ダムができる前の旧線と,ダムができたあとの新線があり,タウシュベツ川橋梁は旧線の遺構である。タウシュベツ川橋梁が本来は水に弱いコンクリート橋なのは,元々はアーチの足の間だけをタウシュベツ川が流れていたからだそう。
現在はタウシュベツ川橋梁は糠平ダムの貯水量に応じて完全に水没したり橋の足まで完全に出たりするようで,この日は橋の半分弱が水没していたそう。そして冬の間は橋が凍結することから,ふつうのコンクリート橋の10倍の速度で劣化し,年々崩壊が進んでいる。そのため,橋が繋がっている姿を見られるのもあと少しだと言われている。
実際,タウシュベツ川橋梁以外の国鉄士幌線の橋はあまり劣化が見られず,登録有形文化財に指定されている。登録有形文化財となった橋はもとの形を残さないといけないため,1年で10年分の崩壊が進むタウシュベツ川橋梁は登録有形文化財には指定されていない。なお,タウシュベツ川橋梁以外の橋もアーチの足の間で川をまたぐアーチ橋である。
タウシュベツ川橋梁の次は幌加駅跡へと向かった。国鉄士幌線の終点である十勝三股駅のひとつ手前の幌加駅は,当時は林業にとって重要な駅であり,駅周辺は賑わっていたそうであるが,今やその賑わいは消え,線路とプラットホームが残るだけになっている。
幌加駅跡の散策を終えると集合場所へ戻りツアーは終了であったが,この周辺にはタウシュベツ川橋梁と幌加駅跡以外にも国鉄士幌線の遺構が残っているということで,ひがし大雪自然館に立ち寄って大雪山国立公園の一画である東大雪の自然を学んでから,その遺構を巡ることとした。
然別湖
国鉄士幌線の遺構巡りを終えたら,然別湖に立ち寄ってから帯広へ戻った。ダム湖である糠平湖と異なり自然湖である然別湖は,北海道内にある湖の中で最も標高が高い。
この然別湖には,船を陸にあげるためのレールが湖の中まで繋がっている湖底線路があり,映えスポットとして人気がある。
この日は生憎の天気で湖面が反射していたため,湖の中まで繋がるレールはきれいには見えなかったのが残念である。
ちなみに,湖の中にレールを繋げれば映えるならと糠平湖でも真似しようとしたものの,自然湖である然別湖と違って糠平湖はダム湖であるため,泥が被ってしまいできなかったそう。
そして帯広空港から帰路についた。
今回の北海道旅行では,以前から気になっていた釧路川カヌーをしたり,まだ行けていなかった襟裳岬とタウシュベツ川橋梁に行ったりと,新たな北海道の魅力を見つけることができたと思う。