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今もなお、思い込みの最中にいる【レポート/山中大介さん】

みなさん、こんにちは!TABIPPOライターの西嶋です。

今回は自分と世界の豊かさをつくるニューノーマルトラベラーが育つ学校「POOLO」で行われた講義の様子をレポートします。

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さて、今回の講義は4月30日にオンラインで行われた 「ヤマガタデザインと地方創生」。登壇者は、ヤマガタデザイン 代表取締役の山中大介さんです。

登壇者:山中大介さん

ヤマガタデザイン株式会社 代表取締役
課題を解決する事業をデザインすることで、地方都市の凡ゆる課題は未来への希望に変えることができる。2014年ヤマガタデザイン株式会社を設立。地域と全国から資本調達(34億円)し、山形庄内から全国にも展開可能な課題解決のモデルづくりに挑む。田んぼに浮かぶ木造ホテル「SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」、天性重視個性伸長の教育施設「KIDS DOME SORAI(キッズドームソライ)」、人材紹介ポータルメディア「ショウナイズカン」、有機農業プラットフォーム「SHONAI ROOTS(ショウナイ ルーツ)」、農業経営者育成学校「SEADS(シーズ)」、農業ロボット開発「有機米デザイン」などの街づくり事業を手掛ける。

4つのアプローチで街づくりに挑む

僕が経営するヤマガタデザインは「街づくり」の会社です。拠点は、日本で5番目に人口減少が進む山形県の中でも、年に1.2ポイントほど人口が減っている「庄内」。

僕たちの「街づくり」の定義は「地域の課題を解決するビジネスをデザインすること」。「地域課題を解決する事業をデザインし、子どもたちが生きる未来に自らも希望を持てる社会を実現する」をミッションとしています。

プロジェクト領域は「観光」「教育」「人材」「農業」の4つ。どの地方都市においても課題である一方、大きな可能性を秘めている領域です。それぞれの取り組みについて説明していきましょう。

ヤマガタデザインの事業(1)観光

「観光」の柱となっているのが、建築家の坂 茂さんと一緒に建てた木造のホテル「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(スイデンテラス)」。雑誌『Casa BRUTUS』の表紙を飾るなど、多くの方に注目していただいています。

実はホテルをつくる前、マーケット調査会社にレポートを依頼したところ「この場所でホテル事業は成立しない」という結論でした。
庄内は知名度がない、アクセスがよくない、良いスタッフが集まらない、海や山がない――。うまくいかないと言われる理由はたくさんありましたが、僕には「いけるんじゃないか」という直感があったのです。

スイデンテラス

今や宿泊者数は5万5000人、利用者数は7万人以上にのぼり、売り上げが1億円を超える月もあるほど。事業として大成功だと言っていいでしょう。
それでも僕たちは、ホテル運営会社を目指すわけではありません。この地域を徹底してプロデュースして、どうやってここを目的地化するか。いかにしてこの地域の経済を活性化させるか。地域の事業者さんと連携して、地域にお金が落ちる体験型コンテンツをどれだけつくれるか――。そうした実験を続けていきます。

ヤマガタデザインの事業(2)教育

続いて「教育」。僕たちは、20年後に教育の会社になろうと考えています。理由は、街づくりにおいて教育は非常に重要なものだと思っているから。そして、教育には、正解がわからないというロックなおもしろさがあるからです。
日本は経済先進国38か国のうち、GDPに対する教育費(公的支出)の割合が37位と、たいへん低い数字にとどまっています。日本はとにかく教育に投資しない国で、各家庭が高い教育費を負担しているのです。

その結果、保護者や地域の経済格差が教育格差に直結し、その格差はまた、その子どもが親になっても引き継がれていきます。このような事態を是正して、より質の高い教育を平等に提供する方法を、みんなで考えていかなければなりません。

そのような信念のもと、教育事業において最初に手がけたのは児童館「KIDS DOME SORAI」。3Dプリンターやレーザーカッターを備えたものづくりのための空間があったり、100人の子どもたちを預かる学童保育があったりと、夢中体験を通して子どもの個性を育むことをコンセプトにしています。

そのほかにも、フリースクール事業や、地方在住のママ向けのオンラインITスクール事業なども間もなくスタートする予定です。

ヤマガタデザインの事業(3)人材

「人材」については、「ショウナイズカン」という、地域版リクナビのようなシステムを運営。仕事のやりがいと生活の充実を両立させたい全国のUIターン潜在層と、地元地域の企業さんのマッチングに取り組んでいます。

特徴は3つ、未来志向のすばらしい企業だけを掲載していること、企業と求職者のコミュニケーションを最大化する仕組みを有していること、そして移住後の生活をイメージできるような情報を発信していることです。
いま「ショウナイズカン」には70社が登録されており、求職者登録は1000人を突破しました。この仕組みをほかの地域にも展開し、今年は栃木や広島などといった、10ほどの地域の「チイキズカン」を立ち上げる予定です。

ヤマガタデザインの事業(4)農業

最後に「農業」。「SHONAI ROOTS」というブランドでの農業の生産、農業技術・経営を学べる学校「SEADS」の企画運営、自動抑草ロボット「アイガモロボ」の開発という3つの事業があります。
3つの部門の共通のミッションは「山形庄内から、日本農業を持続可能にする」。特に僕たちが重視しているのが有機農業です。

お米の価格が下がる中、有機農業の農作物であれば、適正価格で販売できます。農作物の販売価格が倍になれば、後継者不足は解消され、日本の農業は一気に活性化すると考えているのです。

また東京農工大学などと共同開発した自動抑草ロボット「アイガモロボ」は、2022年、全国33都道府県で実証実験予定。ヤマガタデザインは、テクノロジーの力で農業を変えていきます。

ヤマガタデザインのモチベーション

これからは、経済成長だけをめざすのではなく、人間性・経済性・環境性のバランスを取りながら成長していく時代になっていくのではないでしょうか。

そんな中、ヤマガタデザインのモチベーションは、自分たちが価値を生み、社会をよりよくしたいということ。そして、自分たちがつくる未来にわくわくすることです。

そうした未来を実現するために、庄内という、物理的には有限なエリアにおいて、街づくりという無限の資産を使い、もっとスケーラブルに、もっとスピード感あるチャレンジを続けていきます。

次からは、みなさんの質問に答えていきましょう。

Q. 常にチャレンジをつづける山中さん。そのパワーの源泉はどこにあるのでしょうか?

生まれたからには最大限の価値を生んで死んでいきたい――。そんな「思い込み」があるからだと思います。

僕は、社会に出るまでスポーツしかやってきませんでした。社会に出て、自分の人生の可能性を真面目に考えるようになり、「どうせ死んだら終わりだし、思い切りやったほうがいいんじゃないか」というシンプルな結論に達しました。それは組織をつくることであり、資金を調達することであり、事業として結果を出すことでしょう。

とにかく「最大限でチャレンジし続けよう」と思い込むことが重要で、自分はいまもなお、その思い込みの最中にいるのだと思います。

Q. よそ者が地域を盛り上げるのは難しいことだろうと想像します。そのあたりはどのようにクリアしていったのですか。

重要なのは、やり抜く人だと信じてもらうことと、地域の人に応援してもらうことです。
いくら頑張っても、最初から全員の共感を得るのは難しいもの。まずは3%の人から共感してもらえるようになりましょう。
そのためには、立ち上がり、行動をして、どんどん改善し続けること。やがて、地域からの信頼や応援、共感につながっていくはずです。

山中さん、ありがとうございました!
山中さんのパッションが伝わってくる、熱いお話でした。受講したみなさんも、自分のミッションについてあらためて考える機会になったのではないでしょうか。


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