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ニューノーマルな観光を模索するーハワイ州観光局×観光復興ガイド【POOLOゼミレポート】

こんにちは!TABIPPOイベントライターのあいとです。

今回はTABIPPOが運営する「POOLO(ポーロ)」で開催されたゼミ「ニューノーマルな観光を模索するーハワイ州観光局×観光復興ガイド」についてレポートしていきます。

今回はPOOLOの1期生と2期生のメンバーが合流して、行われました。

はじめに:チェックイン

講義の本題に入る前にアイスブレイクとして行われるチェックイン。「週末何をするか」をテーマに話しました。

今年は例年にないほど暖かい日が続いていることもあって、桜が開花している地域が多数あり、春の訪れを早く感じられます。そのこともあり、「週末は花見を楽しむ」といった声が多数ありました。


本日の講師①:田貝雅和さん

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「Disruption」から生まれた《観光復興ガイド》

TBWA \ HAKUHODOの田貝雅和さんからお話を伺いました。

はじめに、本講義のテーマである「ニューノーマルな観光を模索する」ために、TBWAが提唱している「Disruption(ディスラプション)」という考え方についてご説明されました。

この「Disruption」とは従来の概念を破壊し、理想的な新しい姿を創ることを意味します。

次に、ニューノーマルな観光を模索するための3つステップについてお話しされました。

ステップ1 Convention(コンベンション)
これは破壊すべき既成の概念が何であるかを明らかにすることを示します。新たなニューノーマルを模索することよりも先に、これまでの概念がどのようなものであったかを考える方が大切ではないでしょうか。
ステップ2 Vision(ビジョン)
次にあるべき理想の姿を明確にします。新しいものであれば何でもよいというわけではありません。理想の姿を描く大切さを田貝さんは主張されていました。
ステップ3 Disruption(ディスラプション)
上の2つのステップをこなしてようやく既成概念を破壊し、理想の姿を実現させるためのアイデアを考えていきます。

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TBWA \ HAKUHODOでは、これらの考え方をツールとして用いて、企業のディスラプションや自治体のニューノーマルな戦略を一緒に考えるといった活動をされています。

そのような取り組みの中の一つとして、観光復興ガイドが生まれました。TBWA \ HAKUHODOのコンサルタントチームと共同して作られ、約2000万件ほどのSNS投稿を調査。その中から「人々が旅行に対して何を求めているか」を分析したものです。

その分析内容をもとに、どのようにアクションを起こしていくのかを考えていきます。

観光復興ガイドが作られた背景には、新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の移動が大幅に制限され、旅行になかなか行けず、全国の観光地や観光業界が窮地に立たされていることがあります。そのような困難に立ち向かうため、何かサポートができればという思いが出発点だったそうです。

分析内容

ここでSNS投稿の分析内容をいくつかご紹介します。

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分析1:人々の旅行に対する考え方

SNSで交わされている投稿から、内容や量、投稿をした意図・内なる思いを分析し、その思いに応えるに「どのようなアイデアが考えられるか」を調査します。この手法を「ソーシャル・リスニング」といいます。

分析の結果、旅行に対するネガティブな投稿がコロナ前と比べ大幅に増加していることがわかりました。

ネガティブな投稿の大半は「旅行に対する不安」。要素としては、、感染予防対策、自粛圧力、特別な配慮、感染者数などが挙げられました。

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分析2:旅行意欲を高める兆し

ネガティブな投稿が増えた一方、旅行に対するポジティブな投稿も見られました。例えば以下のような「兆し」です。

▷応援
コロナによって、観光地や観光業界が大打撃を受けていますが「再開や復興のための支援やサポートをできる限りしたい」と声をあげている旅行者もいました。

▷写真好き
現地に行って、新たに写真を撮る機会がなくなった今、過去に撮った写真をSNSやネット上にアップする方が増えています。

▷バーチャル旅行の登場
現地に行けない今、zoomなどのオンラインミーティングやVRを用いた新たな旅行スタイルが確立されようとしています。まだ試行錯誤を重ねている状態ではありますが、今後ますます発展していくことでしょう。

▷ワーケーション
コロナをきっかけに急速に広がっている新たなライフスタイルで、「ワーク」と「バケーション」を組み合わせたもの。リモートワークが普及しつつある今、特定の場所で仕事をする必要性が薄らいできているため、観光地で仕事をしようとする人も増えてきています。


旅行者向け企画の考え方

旅行や観光に対する見方やニーズが変わりつつある今、観光地や観光業界は旅行者が求めているニーズにきちんと応える必要があります。そういった観光客のニーズに応えるための企画の考え方について、お話ししていただきました。

田貝さんによれば、その考え方は3つのステップからなるといいます。

ステップ1:兆し
観光業界の今後の兆候を把握すること。
ステップ2:資産 
自社で何ができるか、何を提供できるかを考えること。
ステップ3:企画
上の2つのステップを掛け合わせて、自社がやるべきことを考える。

この3つのステップは「観光復興ガイドについて」のところで取り上げたDisruptionという考え方が背景にあり、世の中の動きを正確に把握することが大切です。

その上で、自分たちが観光地として見せたいもの、その「らしさ」やオリジナルの強みを活かす必要がある、と田貝さんは主張されていました。


本日の講師②:ミツエ・ヴァーレイさん

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次に、ハワイ州観光局日本支局長のミツエ・ヴァーレイさんにハワイの現状と今後のビジョンについてお話していただきました。

多くの観光客を魅了し続け、日本人にも大人気の観光地であるハワイですが、コロナの打撃を大いに受けています。コロナによる移動制限が原因で、来客数がなんと99%も減少しているそう。

ハワイの現状について

ハワイにおけるコロナの状況についてですが、日本と大きく異なるのは、PCR検査を非常に多く徹底している点です。

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上の表の通り、PCRの検査数は東京と比べておよそ10倍ほどです。少しでも異常があれば、まずPCR検査をしてから、病院に行くことを徹底しているそうです。その成果で、現在はかなり状況が落ち着いてきているとのことです。

ワクチン接種状況についてもお話がありました。

集団感染率を下げ、免疫をつけることが、従来の観光を取り戻す上で最も大切とされていますが、ハワイでは昨年の12月15日からワクチンの接種が行われています。

現在、医療従事者、エッセンシャルワーカー、シニアの方、持病や疾患を持たれている方は全員ワクチン接種を終えています(1回以上接種した方は全体の25%です)。4月にはさらに多くの人がワクチン摂取を受ける予定です。

今後の取り組み

コロナによって旅行業界が窮地に立たされていますが、現状の困難から一刻も早く抜け出し、観光を再開できるようにするには、今後のブランディングが大きなカギとなります。

ミツエさんは、コロナ禍でポジティブなことについて次のように述べておられました。

もちろんハワイの大自然が戻ってきたことはよいことですが、それ以上に「ハワイのリブランディング(rebranding)/ブランド再構築をする上で最高のタイミング」であることです。

観光を再開するための取り組みを、短期戦略と長期戦略に分けて考えておられます。

短期戦略は、とにかく観光ビジネスを取り戻し、業界をサポートすること。特に直近の3ヶ月は「感染者が少ない」かつ「ワクチン接種率が半分を超えている」地域から、順次観光を再開していく動きが見られるようです。

しかし、日本の感染者数やワクチン接種率も考慮しながらなので、日本とハワイの両方が落ち着かないと観光が再開できません。その点は柔軟に対応する必要があるとのことです。

長期戦略については、持続可能なツーリズムの土台を考える必要があります。つまり、ハワイ州民の観光への満足度を高い水準に保つことが欠かせません。

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近年、世界規模で見るとハワイ訪問者数は増加しているものの、州民の満足度が少しずつ下がってきていることが問題視されており、ハワイ州は2019年に「5年観光戦略」を掲げました。

ミツエさんによれば、特筆すべきことは島ごとに観光の戦略が異なること。ハワイといってもさまざまな島があり、島によって島民の生活スタイルや特産物、観光スポットなどは大きく違います。

各島のよさを観光客に提供するために、また、州民や島民が安心した生活を送るために、どのようなアクションプランを立てるとよいのか。各島の企業や自治体の代表者などが集まって、ハワイ州全体を盛り上げていくための会議や話し合いが活発に行われているそうです。

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講義後、田貝さん、ミツエさん、ファシリテーターを務めたTABIPPO社長の清水直哉さんによるトークセッションが行われました。

【お知らせ】POOLO NEXT 開講します

先日、2030年の観光業界を担う次世代リーダー養成スクール「POOLO NEXT」をリリースさせて頂きました。

プログラムの詳細はこちらの公式サイトをご覧下さい。
公式サイト:https://poolo.tabippo.net/next/1st/

▼ゲスト講師一覧
篠塚 孝哉(令和トラベル 代表取締役社長)
太田 英基(スクールウィズ 代表取締役)
加藤 遼(パソナJOB HUB ソーシャルイノベーション部長)
鮫島 卓(駒沢女子大学 観光文化学類 准教授 帝京大学 経済学部 兼任講師)
江藤 誠晃(BUZZPORT 代表取締役)
中尾 有希(JTB総合研究所 企画調査部)
本間 貴裕(SANU Founder / Brand DirectorSANU)
大瀬 良亮(KabuK Style 共同代表)
加藤 史子(WAmazing 代表取締役/CEO)
春山 佳久(atta 代表取締役社長)
高井 典子(神奈川大学国際日本学部・教授)
ミツエ・ヴァーレイ(ハワイ州観光局 日本支局長)
梶原 文生(UDS チーフアドバイザー / ファウンダー)
加藤 貴弘(徳島県 政策創造部 地方創生局とくしま回帰推進課 副課長)
田邉泰之(Airbnb Japan 代表取締役 )
青木 優(MATCHA 代表取締役)
龍崎 翔子(L&G GLOBAL BUSINESS, Inc.代表 CHILLNN, Inc.代表 ホテルプロデューサー)
新 拓也(SAGOJO 代表取締役)
小池 克典(LIFULL 地方創生推進部 LivingAnywhere Commons事業責任者 LIFULL ArchiTech 代表取締役社長)
清水 直哉(TABIPPO 代表取締役)


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取材・文:あいと

旅が大好きな大学院生。フランスに10ヶ月ほど留学したのをきっかけにヨーロッパの旅にハマり、これまで20か国を周遊。目標はヨーロッパ全国制覇。また、時間や場所にとらわれない働き方に憧れ、複数の仕事を本業とするスラッシュワーカーとして活動中。

編集:五月女菜穂
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